キ上の空論

小説もどきや日常などの雑文・覚え書きです。

今更気がついた

2006年11月30日 | みるいら
 なんでわかるの?
 ぼくは<アカネちゃん>がどうして疑問に思わないかが疑問だった。
 アカネちゃんが兄さんと顔を合わせたことがあるのは、彼女が幼児だった頃のはずだ。面影はあるにしても、一目でわかるのはおかしくないかな。
「久しぶりって、何年ぶりなの?」
 怖々聞くと、二人は顔を見合わせる。
「八年くらいかな」
「うん、そのくらい」
 だから、それはおかしいんじゃないかな。
「何でわかるの?」
 思い切った。やっぱり、聞いてみないと解決しないだろう。
 二人はもう一度顔を見合わせた。
「どうみてもアカネちゃんの顔なんだけど」
 兄さんは怪訝そうな顔をするぼくの方を不思議がる。
「八年前と、だいぶ顔が違わない?」
 もう一歩、踏み込んでみる。
 兄さんはあっさり頷く。
「それはそうだよ。同じ顔をしてたら、それはそれで面白いけど」
「面白くないよ」
 アカネちゃんが兄さんを肘で軽く突いた。
 そう? と機嫌良さそうに、アカネちゃんの方に少し向き直ったあと、
「実鳥だって、十年以上もあいてただろう」
 あ。
「結構、わかるもんだよ」
 ……いや、そんなことはない。
 どう考えてもそれは特殊能力だ。
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犬の首輪抜け・脱走と帰還、その反省点

2006年11月26日 | 日常
犬が散歩中に首輪抜けして、そのまま脱走したのが二週間前。
日曜日だったので、警察と保健所への連絡は翌十三日に行いました。
捜索用ポスターを作ったのが十八日、配布が十八~二十日くらい。
保健所へポスターを持って行ったのが二十四日。そこで、保護されている犬の中でうちの犬に該当していそうな子を絞り込みしてもらい、「うちの子っぽいかも?」という話を聞いて、保護されているという動物病院へ出かけたら「あたり」でした。
脱走当日に、見失った地点からえらく離れたところで保護されていたそうです。
問い合わせたときに「それっぽい犬は見つかっていない」という返答だったのは、情報が電話越しだったからという部分が大きかったのではないかと。

まず、首輪抜けがマイナス五十点。名札や鑑札つけてても一息に台無しです。
保健所に連絡するときは、なるべく電話越しでないほうが良いようです。雑種だと特に、写真がないと犬の体格が伝わりにくいです。
ポスターを作るのが遅れたのも良くなかったかなと思います。
十二日間、(既に保護されていたので)見つかりようのない犬を、見当違いの地域でさがしてました。
見つかったのは、僥倖だったと思います。一生分のラッキーを使ってしまったんじゃなかろうかと思うくらいです。

これまでは、犬が一匹で歩いていても「あら、一人でお散歩?」なんてのんきに眺めてましたが、その子は誰かがさがしているわんこかもしれないと思うようになりました。

基本的に保健所も警察も親切でした。ありがたかったです。
それからポスターの掲示に協力してくださった方々にも感謝してます。
手がかりも何もなくて困り果ててるときに、何かで助けてくれる人がいるというのは嬉しいものです。

犬はうちから遠いところを首輪なし、草の種だらけの状態で歩いていたのを保護していただいたそうです。そのまま動物病院に預けられ。「ひっつき虫だらけだったので」身体を洗ってもらい。快適な屋内で食事を与えられ。
夢のような話ですが、こんな状態でした。当分の間、我が家では北枕が推奨されます。

心労で調子を崩しかけましたが(そしてまだ復調したとは言い切れませんが)、飼い主が倒れちゃったら犬をさがす人がないので、それはそれで駄目な話です。気を楽にするのは無理ですが(ここは言い切りたい)、体調管理も大事です。

以上、今件のあらまし、反省点でした。
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雨が降ったあと

2006年11月26日 | みるいら
 手紙に書かれた住所は合併で変わっていた。
 調べて何度か行こうと思ったけど、十五年前の住所にまだ住んでいるとは思えなかったので、眺めるだけにしておいた。

 暗い雲がそのまま落ちてきそうな色合いだった。
 傘を持って、石飛が時々いる喫茶店を覗いた。
 石飛は来ていなかった。中を覗くだけなのは気が引けたので、コーヒーを注文した。
 飲みきる前に、雨が降り出した。
 手紙のことを石飛に相談してみたかったけど、この雨じゃ来ないだろうなと思った。
 カップを置いて、会計をすませ、外へ出ようとしたとき、傘立てにほうりこんだはずの傘がないことに気がついた。

 まあいいや。
 雨の中を歩いていくことにした。

 ぼんやり歩いていて気がつくと、手紙の住所の場所まで来ていた。
 あの部屋にはもういないだろうなと思いながら眺めた部屋。
 半ばやけになったついでに、インターフォンを押してみることにした。
 きっといないだろうけど、何か聞けるかもしれない。
 何も聞けないかもしれないけど、何か聞かせてくれそうなひとを教えてくれるかもしれない。
 変な人が来たと警察を呼ばれるかもしれないけど、話を聞いてくれる警察官がいるかもしれない。
 とにかく、押してみた。
 爆弾のスイッチを押すような気持ちって、こんな感じなんだろうか。
「はーい」
 ドア越しのくぐもった返事のあと、チェーンをはずす音がし、鍵を開ける音がして、ドアが開いた。
 その人はずぶぬれのぼくを見て呆気にとられているようだった。
「……実鳥?」
 けれど、一目でぼくの名を呼んだ。
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犬がみつかりました!

2006年11月24日 | 日常
迷子当日からちゃっかり動物病院で保護されてました。
あああ、ありがとうございました。
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この手紙が届くかなんて

2006年11月23日 | みるいら
 記念品だけもらって(じゃないとちゃんと出席しなかったことがばれるので)さっさと帰ろうと思っていたら、声をかけられた。
 誰だろう、思い出せない。
「こないだ家の中大掃除したんだけど、そのとき出てきたんだ。一応、渡した方がいいかな、と思ってさ」
 と、古そうな封筒を差し出す。
 宛名は「ふゆさかみどり」。
 確かにぼく宛だ。ひらがなだけど、知る限りで他に「ふゆさかみどり」はいない。
「たぶん、幼稚園の時だかに渡してくれって頼まれて、そのまま忘れてたんじゃないかと思うんだ。ごめん」
 封筒の古さに納得。十五年近く前だ。
 気にしないように言うと、安心したように離れていった。
 あれは誰だっけ。
 幼稚園の時にと言ったんだから、同じ幼稚園に行ってたはずだ。
 卒園アルバムでも見たら思い出すかもしれないが、どこへやったか忘れた。
 封筒を裏返し、差出人の名前を見る。
「……ふゆさかとうま」
 身に覚えのない名前だった。
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何となく気まずくなる

2006年11月22日 | みるいら
 石飛から借りた『エースをねらえ!』を読んでボロ泣きしていたら、珍しく定時で仕事を終えた兄さんが帰ってきた。
「ただいま」
 ぼくは平静を装って、ティッシュで顔を拭く。
「おかえり」
 兄さんは普段通りに、洗面所へ行く。うがいと手洗いを欠かさないのは、昔からじゃなかったと思う。仕事柄かな、と自分で首をかしげていた。

 油断してた。
 ここのところ、帰ってくるのは次の日になってからが多かった。
 とはいえ、兄さんの職場にも一応定時ってものがあった。ついさっき思い出したところだけども。

「何読んでたの?」
 定時で帰っても普通より遅い夕食の支度をしつつ、こっちを見ないで問う。
「漫画」
「タイトル」
「……『エースをねらえ!』だけど」
「ふうん。実鳥、晩ごはんは?」
「食べた」
「了解」
 兄さんの晩ごはんの残りが、ぼくの明日の朝ごはん。
「そういえば」
「何?」
「ドストエフスキー」
「ドストエフスキー?」
「本棚に一冊だけあった」
「ああ」
 あれね、と小声が返る。
「高校のときの課題図書」
「そのまま持ってきたの?」
「他のと一緒くたになってたんだと思う」
「ふうん」
 今度はぼくがうなずく。
「あれで感想文書いたの?」
「覚えてないけど、多分」
「面白かった?」
「憎々しかった」
 笑っているような口調で、さらりと。
「さっきの漫画、どんな話?」
「昔の漫画だよ。テニスの」
「面白い?」
「うん。それなりに」
 石飛が貸してくれる漫画は、今のところはずれがない。そして、七割が少女漫画だ。本屋さんで手に取りにくい身としては、大変ありがたい。
「そっか」
 同じ口調だけど、今度は毒がない。
「読んでみる?」
「借り物だろ?」
「うん。来週まで大丈夫だから」
「じゃあ、土日にでも」

 ぼくらは、気まずくなるとその分会話が増える。


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『エースをねらえ!』集英社公式サイトはこちら
※FLASHから始まりますのでご注意ください
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名作がいつも書店にあるとは限らない

2006年11月22日 | みるいら
 本棚の半分は、ぼくの漫画だ。
 残りの半分のうち、三分の一が大学の先生が印税収入のために生徒に買わせた本で、三分の一が新書本(ぼくは自分では買わないだろうなあ、と言うラインナップ。小難しそう)、あとは児童書だ。
 児童書と言っても絵本はあまりなく、だいたいが新書と同じサイズの「文庫本」と、文庫本だ。
 よく見ると、児童文学でないかもしれない文庫本もいくつか。背表紙の色が変わっているのもある。

 とくに古そうなのを手に取ると、ドストエフスキーだった。
 用事はないように思えて、棚に戻した。

 大きな本棚の、半分が漫画。
 本棚は人柄を写すと言う人がいるけど、これで人柄をはかられたら、どんな人になるんだろう?
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正解は円柱形

2006年11月21日 | みるいら
 機嫌良く掃除機をかけながら、兄さんが歌っている。
 ぼくは、邪魔にならないように避けながら、何を歌っているやらと聞き耳をたてる。

 日曜日の午前中は、だいたいが掃除だ。
 手伝うと困った顔をされるので(こだわりがあるらしい)、その間は出かけていてもいいような気がするけど、出かけたい場所もない。
 そういうわけで。

 掃除機の音に紛れて断片的に聞こえてくる歌詞が、何だか変だ。

 兄さん、エンチュー系って、何?

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 ちなみに、歌っていたのはこの曲。
『生きものは円柱形』作詞/作曲 本川達雄

 名曲です。友人の薦めで聴いたのですが、聴いていると何だか楽しくなってきます。
 この曲が収録されたCDは、以前調べたら廃盤になっていたのですが、今はオンデマンドで(R盤というのだそうです)買えるそうです。

本川先生についてはこちら↓
東京工業大学 生命理工学部 本川研究室
http://www.motokawa.bio.titech.ac.jp/
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本当のことを言えば。

2006年11月20日 | みるいら
 何でこの部屋に居ついたのか、自分でもわからない。
 気がつけば、本棚の半分をぼくの漫画が埋めている。
 夜遅くならないと帰ってこないことを除けば、この部屋の住人は、まっとうな人の部類に入るはずだ。
 こんな風にぼんやりと毎日、その帰りを待つことになるとは思ってもみなかった。
 今でも、実感が薄い。

 時々、不安になる。自分は邪魔ではないのか、と。突然押しかけてきて、結局負担にしかなっていないのではないか、と。

 ただ一度、会って話がしたかった。それだけだったはずなのに。
 ただ今は、帰りを待っている。それが当たり前という顔をしてくれる人の。

 あと何時間かの、静寂と。
 暗くなってゆく部屋と。
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ブログ開設の目的

2006年11月20日 | 日常
うちの犬が散歩中に首輪抜けしてから、はや一週間が過ぎました。
ネットでも探してます。メールやら掲示板やら、チェックしてはため息ついてます。
普段はパソコンを立ち上げるのですら億劫なのに、犬一匹のおかげで大騒ぎです。
パソを立ち上げといて何もしないでいると、(余計なことを)ついいろいろと考えてしまうので、ブログでもやってみようかと思い立ちました。
飽きっぽいので、すぐやめるかもですが。
犬が帰ってきたら、更新もえらく頻度が落ちそうです。
無事に帰ってくるとよいのですが。願掛けも込めて、「普段はやらないこと」に挑戦してみます。
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