南スウェーデン便り

ときどき南スウェーデンの真ん中のイナカから、ときどき街からお便りします。

インフルエンサー

2023-10-07 07:52:50 | 街便り

以前にも書いたようにスウェーデンは「コーランを燃やすパフォーマンスを行うパルダンという人物に「言論の自由」という根拠で許可を与えるとんでもない国」としてイスラム諸国から非難されるようになったのだが、

 

パルダンよりもさらにとんでもない人が登場してしまった。

Salwan Momika håller en håller i en allmän sammankomst i Malmö.

それがこの人Saluwan Momika

彼はPaludanよりも精力的にスウェーデン各地に出没してはコーランを燃やして国内外のムスリムを激怒させている。

風貌も名前もスウェーデン人離れしているけど移民なんだろうか?と思ったら、何と難民申請中のイラク人であるという。ムスリムではなく(あたりまえか)キリスト教徒らしい。彼のおかげで出身のキリスト教徒の村がおおいに迷惑を受けているという報道も読んだ。

彼は自分を「アクティビスト」と名乗っているらしいのだが、どちらかというと日々TikTok等でそのコーラン燃やしやイスラムヘイト発言をライブ配信する「インフルエンサー」と呼んだ方が合っている。動画を視聴する人が多くてつい最近アカウントを閉鎖されるまでは相当稼いでいたらしい。こういうことで金儲けができるとはこの世の中どうなっているのだろう?? Paludanがスウェーデン人に向けた政治的行動としてコーランを燃やしていたのに対して、このひとはスウェーデンのメディアには出てこようとしないし、ソーシャルメディアはアラビア語で発信している。

そして、彼自身ももちろんだが彼のそのようなふるまいを容認しているスウェーデン政府にもイスラム圏では非難の声が高まる一方だ。それでも彼はまるでスターのように全国ツアーを行い、つい最近はここマルメにもやってきて、今週10月3日にイスラムの移民の多い地区数か所で「パフォーマンス」を行った。それを阻止しようとしたムスリムと警備にあたった警官の間で乱闘騒ぎが起こり、大きく報道された。

「こんな迷惑な人、国外退去にすればいい。イラクでもどこでも帰ってよ」と一瞬思ったけれど、すぐそれができないことに気が付く。送還されて自国で迫害されるおそれのある難民申請者を国外退去させることは原則としてできない。彼が派手にイスラムを挑発するような内容な発言をアラビア語で行っているのはそれが狙いなのだ。

-スウェーデンの言論の自由を利用して反イスラムパフォーマンスを行い、ソーシャルメディアで有名人(お尋ね者)になり、迫害されている難民申請者としてスウェーデンに居座る。その上スウェーデンの社会まで荒らしてどこ吹く風って、この人一体なんなのだろう?? そうでなくてもマルメの移民の多い地区は治安が悪いと言われているのに、この人のせいで余計な問題が増えてしまった…

私まで彼に対する殺意がこみあげてきたところで今日テレビを見ていたら、また彼がマルメでコーラン燃やしを行ったというニュースを報道していた。

…が、今回は乱闘は起きなかった。

マルメのローレンスボリ広場にSaluwan Momikaが登場し、これを阻止しようとした人々が寄ってきて警官たちがその前に立とうとしたときに、なぜかつめよろうとしていた人々がその場からばらばらと立ち去っていって彼はぽつんと広場に残された。

テレビの解説によると、そこにマルメのイスラム協会の会長そのほかが現れて「みんなであの男を無視しよう」と呼びかけたのだそうだ。

Saluwanは10分ぐらい反イスラム演説をしていたが、反応がなかったのでその場を去っていったという。ブラボー!

彼の動画配信はあったのだろうか?

彼の写真だけではつまらないので、イナカの庭に生えたキノコとキノコスパゲッティーの写真を。

 

 

 


ビーチ

2023-08-21 19:29:05 | 街便り
引っ越しの片付け難航中…
 
「これ一体何だっけ」というような段ボール箱が沢山ある。スウェーデンに引っ越してきて一度か二度しか開けていなかったもの、いや一度も開けていなかったものもある。あけると大昔のがらくたや親が結婚式の引き出物としてもらってきた見覚えのない物とかが入っている。
 
終活を兼ねて、これはまたとないチャンス!と言えないこともない。
 
かばん一つで引っ越してきた人もいるというのに、どうして私はこんなに大昔のものをスウェーデンに置いているのだろう??と思ったけれど、考えてみると理由がある。こちらに引っ越した時は私も身軽だったのだが、その後東京の実家を改修するために私のものをあらかた引き上げる必要が生じたのだった。整理のために一時帰国したものの、私の滞在期間の都合であまり時間がなくてろくに仕分けもせずコンテナで送ってしまったのだ…。船便の最低料金で八万円ぐらいかかった。
 
でも段ボールを開けるたびに「うわー懐かしい」といちいち見ているので作業が全然進まない。
 
その中にやたらと重い箱があった。開けるとビニール袋に貝殻がぎっしり入っている。ココナッツの殻やサンゴのカケラも混じっている。
これ、マレーシアに住んでいた時に彼と東海岸の島で拾った貝殻だ!
 
ここに写っているのは数十分の一ぐらい
 
真っ白い砂と椰子の木、エメラルド色の海が目の前に浮かんだ。
ああ…
この島に行ったとき、私はもうスウェーデンに引っ越すことをほぼ決めていて、でも実は東南アジアを離れるのはものすごくつらかった。集めた貝殻をどうしても捨てることができなくて、スウェーデン行きの段ボールの中に入れたのだった。
 
そしてその箱は開けられることがないまま20年!
 
こんなところまで連れて来て、しかも箱に閉じ込めっぱなしでごめんなさい…
 
もう持ち続ける物理的な余裕はないけれど、ゴミとして捨てることはできない。
特に思い出深いものを数個選んで、それ以外は海に還すことにする。
 
一度にどさっとばらまいてもいいけれど、ビーチに行くたびに少しずつ…
 
ということで、まずマルメの南、デンマークとの橋が見渡せるSibbarpのビーチへ!
 
いいお天気で近くのマリーナが賑わっていた。
スウェーデン人は船遊びそのものも好きだけれど停泊しているヨットやボートでお酒を飲んだりお茶をしたりするのも好き。
 
これがデンマークとスウェーデンを結ぶÖresund橋
 
貝殻たち
 
 
 
ちょっと海水の温度が違うけど、海はつながっているから許して!
 
 

おひとり様老後

2023-08-08 08:50:39 | 街便り

今年は例年と違ってちょっとせわしない夏。

…というのも、私は秋になるまでに引っ越して一人暮らしを始めることになったからだ。

新しいアパートはもう買ってしまった。

約20年ぶりの引っ越し。

今住んでいる家はわりと大きいので、収納のことを考えずにいろいろなモノをため込んできたが、これらを手放さなければならない。

それに、スウェーデンではアパートを購入しても、毎月管理費を払わなければいけないから生活ひきしめを覚悟しなければいけない。

この歳になって、本当にだいじょうぶか、私?

日本の同年配の方はどうやって生活しているんだろうと思い、六十過ぎの一人暮らしの女性のブログを検索したところ、ある動画にたどり着いた。

その方はおそらくご家族の介護をずっとされていて、今は一人暮らしだけれど受給している国民年金は五万円だという。

でも、彼女はアルバイトをしたり、プチプラブラのだンドの服をとてもカッコよく着こなしたりして、しごく楽しそうに生活している。

おしゃれだし、ユーモアのセンスがたっぷりで見ていて楽しい動画にひとしきり感心しながら何本か見たところ、その日から同じような年齢の女性(しかも年金が低い)の作った動画が次々と「お知らせ」として私のパソコンに流れて来た。よく見るとみんなすごい閲覧数をほこっているし、本を出版したり、テレビで取材された方もいるらしい。

「こんなかっこいいおばさまがたくさんいるのか!」と最初はおもしろがって見ていたが、だんだん妙な気分になって来た。

…こんなに前向きで素敵で、センスが良い動画が作れるような人たちがどうして年金5万円しかもらえないのだろう?

そもそもこの年齢の日本女性たちがまともな年金がもらえるフルタイムの仕事につけなかったのはどうして? 日本の制度がそうなっているからじゃないの?? 今はどれぐらいましになったの??

マスコミに紹介されるのはいいけれど、まさか、それ「この人を見ろ。年金5万円でもこんなに楽しそうに暮らしているだろ。年金低くても文句言うな。」という政府のプロパガンダなんじゃないだろうね?と疑ってしまう。もと首相の言ったという「まず自助」という言葉を思い出す。

でも…この方たちは幸せそうだけどもっと高い年金貰っていたって病気やら何やらで生活が苦しい人はたくさんいるはずだ。

いろいろ考えてしまった。

写真はマルメのクリスマスマーケットをのぞくのマダム。犬もクリスマス仕様できめている。

 

 

 

 

 

 


芝生と生物多様性

2023-06-29 07:05:22 | 街便り
この春はデンマークのドキュメンタリーシリーズ「Giv os naturen tilbage 私たちに自然を返せ」というシリーズにはまって毎週見ていた。これは3年前に放映されたものの続編なのだが、「デンマークは生物多様性ランキングにおいてヨーロッパ諸国の中で最低から4番目で、三分の一の種が死滅しつつある」というショッキングな報告から始まった。「環境への意識が高いデンマークが?」と驚いたが、どうもその数字は正しいようだ。生物多様性が損なわれる原因は大気や水質の汚染だけではなくて気候変動によるものや農業のスタイルなど多岐にわたるということが言われている。
 
この番組は昆虫学者らがプロジェクトチームを組んでデンマーク在来の昆虫たちをこれ以上死滅させないために地方自治体や工場の経営者、学校、個人に働きかける、というもので、その対策というのは具体的には主に「芝生の代わりに昆虫の好きな草花を生やす」というものだった。高速道路わきやロータリー、工場や学校や公営施設の敷地内にある芝生を、そして個人の庭の芝生を掘り返してしまう…というこのプロジェクトに対して近隣の住民や工場の顧客たちの戸惑いと反発は大きかった。芝生を美しく刈ることに生きがいを感じているデンマーク人(スウェーデン人も)がどれだけいるかということを考えると全く不思議はない。でも、これらの虫たちは芝生を食べて生きてはいけないのだ。
 
しかも、在来種の昆虫が好む花と言うのはいわゆる雑草であって、花壇にあるような美しい花ではないことが多い。「芝生を掘り返すなんてとんでもない!近くにきれいなチューリップが生えているんだからそれでいいだろう。」という人を昆虫学者が「チューリップなんて外来種の花ではダメだ。デンマークの虫はデンマークの花じゃないとだめなんだ。」と切り捨てるのを見て、「えっチューリップは外来種だったの??」とびっくりした。
 
街の美しいチューリップの花壇。
 
美しい庭の手入れが好きなガーデナーたちにとって、そんな雑草を自分の敷地にはびこらせるというのは最悪の光景だ。「お宅の庭どうしちゃったの?手入れしてないじゃない。」と言われてしまうことも間違いないだろう。昆虫の花粉媒介者としての重要性(食糧危機!)とか、生物の多様性の価値などの理屈はわかるけれど、この美しい芝生をトラクターで破壊するなんて、受け入れられない!!という人々の気持ちもわかる。
 
それでも住民たちの同意をとりつけて、芝生は掘り返され、「雑草」の種がまかれた。生えてきたものはやはりデンマークおなじみの雑草で、敷地やロータリーはやっぱり見栄えが悪くなり、手入れが今一つのように見えて一部の住民からは非難が沸き起こった。が、花が咲くと様子を見にきた昆虫学者が泣きそうになるほどいろいろな種類の蝶や蜂や虻が集まっていた。
 
この番組では何度もプロジェクトを推進する側(時には市長さんや工場長などのえらい人)と「普通の人たち」が話し合う場面がたくさん出てきて、合意に至らないことも妥協することもあり、「民主主義って大変だな」と考えさせられた。相手がコミューンのえらい人や有名人や学者でも嫌なものは嫌なのだ!
 
今年の番組では麦畑を林に変えようという地主と、その麦畑のすぐ目の前の家に引っ越したばかりの夫婦が対峙する様子が描かれていた。夫婦は「この麦畑がひろがる景色が好きでここに引っ越してきたのに、掘り返して木を植える??そんな馬鹿な」と猛反対した。その気持ちはすごくよくわかる。私の住んでいるイナカの家も敷地の二辺は麦や菜の花の畑で、もしここに木が植えられたら視界はぐっとさえぎられてしまう。
 
うちのイナカの眺め
 
 
結局、地主側が林の位置を夫婦の家から少し遠ざけるという妥協案を出し、耕地は掘り返され、植林が実行された。夫婦は「麦畑だったところに変な雑草が生えてくるだろう。」と言って憮然とした表情を隠せずにいた。
 
そして半年後、奇跡が起こった。
 
麦畑だった場所一面にびっしりと真紅のケシの花が風に揺れていたのだ。もしかしてプロジェクトチームの人が二人をかわいそうに思ってケシの種をまいたのだろうかと思ったがそうではなく、掘り起こし作業の時に地下にずっと眠っていたケシの種が地上近くに掘り起こされて発芽したのだろうという話だった。二人の顔にも笑みが戻っていた。ああ、よかった…!
 
そして何と首相官邸の庭園(一部だけだが)が「雑草の原っぱ」のようになる…というところで最終回が終わった。メッテ・フレデリクソン首相、よくやった。
 
そういうわけで、私もスウェーデンの昆虫たちの好きな花をさかせる雑草類を家に置いている。(いえ、手入れしてないだけ)
 
スウェーデンで代表的な雑草hundkäx(日本名はシャク杓と言うらしいが、シャクのほうは根がいい香りがして美味しいと書いてあるのでちょっと種類が違うような気がする。hundkäxについてはたいてい「非常用の食糧にはなるが不味い」と書かれている。)とイラクサ。(右側。となりの白い花はワイルドガーリックの花)。どちらも在来種の昆虫のお気に入りだ。
 
 

ライラックの季節

2023-05-30 09:13:05 | 街便り

今はライラックが満開で、町中に香りが漂っている。

 

「ライラック」という言葉は昔から聞き覚えがあるけれど、私は20歳すぎるまで見る機会がなかった。

生まれて初めてライラックの花を見たのはソウルに住んでいた時。

梨花女子大の構内を散歩していた時に薄紫色の花が見事に咲いているのを見て、新潟から来た友だちが「ライラックだ!懐かしい!」と喜んでいた。北海道の人も懐かしいと言っていたので南限があるのかもしれない。

花は藤色、赤紫など白から紫系統のバリエーションがたくさんあり、コーン状の花が穂のように風に揺れる姿が美しい。

これは白い花。

公園の風車の横に茂みがある。

 

前回書いたプラスチック税の話の続きを…

今日は「530」で「ゴミゼロ」の日なのだそうで、無駄なゴミが出ないように自分のタンブラーを持ち歩きましょう!というような呼びかけをソーシャルメディアでちらほらと見かける。

どうしてスウェーデン民主党がビニール袋税廃止のために一生懸命になっているんだろう…とちょっと不思議に感じていたのだけれど、あの後ネットで日本のニュース番組を見ていたらそのてがかりになりそうなものを見つけた。もうその番組は時間が経ってネットには残っていないようなのでちょっとうろ覚えになるけれど、以下のような内容。

それは、少子化対策大臣に大学生が政府の少子化対策案に関して今の若い世代の苦しい経済状態を具体的に揚げ、「これでは対策にならない」と指摘して大臣を返答につまらせた、という話題をとりあげていたもので、それ自体はプラごみとは関係ないのだが、それに関連してその番組が「ゴミ袋を買うお金もないのに! SDGsとかいってレジ袋を有料化ってどういうことなんだろう」という声をとりあげていた。「SDGsには一生懸命で、私たちの生活のことは誰も興味がないの?」という疎外感というべきか。

それはスウェーデンにもきれいに当てはまる。「私たちの生活がどんどん苦しくなっている時にどうしてバイオ燃料を混ぜた高いガソリンを買わなければいけないのか/どうして高いレジ袋を買わなければいけないのか/どうして難民を受け入れるのか/」…という庶民の声に反応しているのがスウェーデン民主党なのだ。本当に人々の生活のことを考えて実行するか(できるか)というのはまた全く別な話だが、そういうふくれあがった不満や不安をとりこんで成長してきたのが彼らなのだと思う。

みんなが生活の不安なく暮らせることと、地球の健康を保つことは結局は重なった課題であるはずなのに…?