選挙の結果が出てからずいぶん経ってからやっと新しい政権がスタートした。
時間がかかったのは新しい連立政権のブロックの中で例のスウェーデン民主党をめぐって揉めたため。いろいろと調整した結果、けっきょくこの党には新政権の影響力のあるポストはまわってきたが大臣に就任することにはならなかった。
同時に地方選も行われたのだが同じ問題のために新体制が定まっていない地方自治体もある。旧野党のなかでもまさかスウェーデン民主党がそこまで票を集めるとは思っていなかったのかもしれない。
で、始まった新しい国会で、さっそくスウェーデン民主党の議員エルサ・ウェディングが発言。
– 「スウェーデンが気候危機に陥るというのは科学的根拠に欠ける考えです。」
…これは「危機」という語句を強調した発言とも受け取られるので、「え、でも気候変動の問題があることはわかっているんだよね?」と願いながら続きを聞いていると、
– 「スウェーデンが温室効果ガスの排出をゼロにしたところで地球規模では気温は0.0027度しか下がらないんです。」
…あの~、一国だけで解決できる問題ではないということはとっくにわかっているのでは??
– 「スウェーデンにできることは最貧国の石炭火力発電を財政的に支援して貧困から救うことです。」
…は??
彼女の発言には「よくぞ言ってくれた」みたいなコメントがぞくぞくと寄せられている。こういう政党がいまの与党側で一番票を集めたこの国の今後はどうなるのだろう。
そして、今週は南スウェーデンに新しい原子力発電所を建設する計画があることが発表された。これは新政権の悲願みたいなものなので「ほらやっぱり出た」と思った人が多いと思う。ロシアによるウクライナ侵攻でエネルギー問題が深刻化して以来、今政権についている旧野党は旧政権に対して「原発を閉じたせいで今の電気不足の問題が起こったのだ」と強い批判を繰り返していた。(電気料金は上がっているのは確かだがそれはEUの市場の影響なので正確に言うと「電気不足」があるわけではないらしい。原発を建設することによっていかほどの経済的にメリットがあるのか私にはまったくわからない。)
これまで各地で盛んにおこなわれてきた風力発電所の建設に対する反対運動も原発推進派つまり現政権との関係が深いのではないかと言われている。風力発電建設反対運動の唱える牧畜への悪影響や美しい景観を損なう云々の主張はアメリカの反風力発電所運動のものとよく似ているが、アメリカの運動は天然ガス業界と推進派の政治家たちがばっちり後押ししたものだ。
イナカの風車。
だから、原発建設の計画が発表と聞いても驚かなかったのだが、予定されている場所が廃炉プロセスがすすんでいるバルシェベック原発(バーセベックと書かれることもある)の近くという話を聞いてええーっと驚く。
バルシェベックはここ南スウェーデンにあり、マルモの海岸からでも発電所が遠くに見える距離だし、対岸はデンマークだ。スウェーデンが1980年に国民投票を行って原子炉の廃炉にむけて方針を転換したのはアメリカの原発事故の影響もあるが、バルシェベック対岸のデンマーク人が強い反対運動をしたことも大きい要因になっている。
原子力発電を選択してこなかったデンマークにとってもウクライナ侵攻~エネルギー危機による打撃は大きいと思うけれど、それでも対岸に原子力発電所が建設されると聞いたらまた反対運動が起こるのは必至だろう。
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