一月ほど前、黒髪山に登った折、この山の固有種クロカミランの存在を知った。
ただでさえ希少種なのに、度重なる盗採により、ほぼ絶滅状態なのだという。
そんな訳で、SNS上でこの花の記事を見かけても、それがどの辺りで撮影された物かは、どれこれも伏せてあるのだ。
こうなったら、当てずっぽうで探すしかない。
出会える可能性は限りなく低いが、ひとまず登ってみる事にした。
龍門登山口から出発だ。
黒髪山は修験の山である。
山頂まで、何か所も祠や石仏が続く。
かじかばし。
その名の通り、沢からは、カジカの鳴く声が聞こえてくる。
喧しい程のカジカの声に見送られ、黒髪山頂上を目指す。
ハナミョウガ
見返り峠まであと少しの所で、峠方向から下って来る、私と同年配の紳士に出会う。
「クロカミラン?いや、私も見つけられませんでした。雌岩や植栽地では去年見かけたんですけど・・・」
当てにしていた全ての場所でも発見できず、虚しく下山していたとの事。
最早、人が近寄れない崖上か、藪漕ぎした先の未踏の場所にしか残っていないだろうとの事。
「もう一遍、引き返して探してみようかな。ご一緒しましょうか。何ヶ所かは案内出来ますよ。」(オジサン)
お願いします!!
見返り峠にはこんな看板が。
下の方の『しかし…』から続く一文を読んで欲しい。
貴重なクロカミランを保護する為に植栽したものすら、悉く盗採されるとは。
・・・全滅。
全く持って、情けない話である。
「その盗採された物が、2000~3000円で売られてます。腹立ちますよ。」(オジサン)
途中で見知らぬおばさんから、
「クロカミランですか?ありました?」
「いや、残念ながら。」
「この山で見つけた人から、画像は見せて貰った事があるバッテン、絶対に場所は教えらっしゃれんですもんね。」
今や、この花に関しては、同好の士の間でさえ、疑心暗鬼が広がっているようだ。
オジサンが登っている集塊岩の、谷を挟んで奥の巨岩が雌岩。
あの集塊岩の一番先まで登って、雌岩の断崖を見ると、去年は5~6株咲いてたらしい。
うへえ!
下っ腹がムズムズするような高度感だよ。
恐怖感を必死で我慢して覗き込むも、
「ね、咲いて無いでしょ。」(オジサン)
あのねえ。
それ、さっき言ってたじゃないすか。
もしやと思って覗き込んだのに。
怖い思いする必要あった?
「どうぞ、奥さんも。」
へっぴり腰で岩にしがみつく家内。
「ひょえーーー」
予想通りの悲鳴を上げるのだった。
雌岩覗きって、、、、儀式か!!
何のかんので山頂付近まで来た。
黒髪神社。
何の神事だろうか。
祝詞が上がっていた。
天童岩。
黒髪山の山頂は巨大な一つの岩で形成されている。
ここから頂上までは、鎖場や梯子場が続く。
足を滑らせたら、タンコブぐらいじゃ済まないぞ。
慎重に。
ヤマツツジに彩られた細尾根の先が山頂だ。
つい先ほど、雌岩対面の岩であれだけビビってたくせに、
何を思ったか、天童岩の天辺に立つ私。
5秒で降りたのは、言うまでもない。
先程来の道案内してくれた親切なオジサンから、
「私はお先に失礼します。例の件・・・内緒にしときましょう。」
と念を押された。
何の事かって?
フッフッフ
俺たちも、ぼちぼち降りようか。
途中、
「うひょー、タイリンアオイ見っけ!!あ、花が咲いとる。」
寒葵狂の家内。
スマホを手に持ったまま、身じろぎもしない。
根元の焦げ茶色の塊が花だ。
「地味!!とっとと行くぞ。」(私)
枯草を落としてもよって来る鮠達。
この沢まで降りて来ると、登山口はもうすぐだ。
おまけ。。。。。。
ある場所で、家内が偶然見つけたのが、
これだ。
惜しむらくは、どの画像もピンボケである。
こんな大事な時に、全く持って残念だ。
まだまだ幼株で、二房しか花はついていないが、
「間違いなくそうです。奥さん凄い!!よく見つけましたね。」(オジサン)
オジサンとの約束だ。
どの辺りで見つけたかは、申し上げられないが、
奇跡と言っていい偶然により、この目にする事が出来た。
来たかいがあったよ。