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Tシャツとサンダルの候

遠い日の嘘


四王寺山から久留米へ帰る道すがら。

昼飯はあそこでと決めている。



KIRINYA   

SINCE 1954


私が生まれる前から、この場所にあったハンバーグの店だ。



国道3号沿いにある。

家族で遊びに行く時など、昔から店の前を通る機会も多かった。


遠い日、


幼い江島少年は、まだ見ぬハンバーグなる物に、夢と憧れを持った。

運転する父親に向かい、


「あの店の、ハンバーグちゅうとば食べたかぁ。」


と、ねだるのは、ごく自然な成り行きだろう。

父親から帰ってきた答えは、


「ハンバーグやら、高いだけ!全然美味くなか。ラーメンがよか。」









・・・親父。

嘘も大概にしろよ。






この店は、大きなキリンの看板でも有名だった。

何時の頃かそれは撤去され、今はもう無い。


かつてのシンボルだったキリンのデザインは、今はこんな所に残されていた。




ハンバーグランチ。

ほぼ9割の客は、これを注文する。

付いてくる汁物が、味噌汁ってのがいいじゃないか。

何の衒いもない昔ながらのハンバーグが、熱い鉄板の上で、ジュウジュウと音を立ててやってきた。



では、




ハンバーグのソースを、ライスの上にちょんちょんとつけるのが私の流儀だ。

食べ進むうちに、次第にライスが茶色く染まってくる。

これが大事なのだ。



二口目からは、目玉焼きを潰し、黄身を肉に纏わせて、


パクリ


追いかけるように、ライスを頬張り、味噌汁をズズッと啜る。

何たる美しき三角食べであろう。


ご馳走様でした。


ゲフ



お冷を足しにやって来た店員に、何げなく声をかけてみた。


「この店、古かよね。俺が物心ついた時には既にあったもん。」

「そうですね。60年以上ですから。でも、今の新しい建物になってからは、まだ40年ですけどね。」




・・・まだ40年。


中々言える言葉じゃないよ。

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