「ユニクロ」の新コラボ「ユニクロ アンド ルメール」は売れるのか?
ZUU Online
2015年10月2日 10時03分 (2015年10月2日 12時13分 更新)
「ユニクロ」の新コラボ「ユニクロ アンド ルメール」は売れるのか?
(写真=Thinkstock/Getty Images) (ZUU online)
[拡大写真]
ファーストリテイリング <9983> 傘下のユニクロが
10月2日から2015年秋冬シーズンコレクション
「UNIQLO AND LEMAIRE(ユニクロ アンド ルメール)」を発売する。
クリストフ・ルメールは、かつてラコステやエルメスでも
アーティスティック・ディレクターを務めた世界的なデザイナー。
パリのブランドらしい、着心地を大切にする洗練された服作りに評価が高い。
「ユニクロ アンド ルメール」の価格帯を見るとシャツで2,990円~3,990円。
ニットで2990円~1万2990円。
アウターで1万2,900円~1万7,900円。
パンツで2,990円~6,990円。
全体的に低価格帯でありつつも、
一方でアウターの上位価格は1万7,900円。
ともすれば、ファストファッション全般に慣れている消費者の目には、
低価格帯の洋服には映りづらい。
むしろ、他のブランドとの比較検討の範囲に入る価格設定と言える。
■ユニクロの海外ブランド服は高いのか?安いのか?
これまでも、ユニクロは有名デザイナーであるジル・サンダーと「+J」を展開するなど、
外部ブランドの付加価値を積極的に取り入れてきた。
「+J」でも、例えば定番の白シャツが3,990 円、
ジャケットは1万7,900円の商品がある。
今回の「ユニクロ アンド ルメール」の価格設定も同じ線にある。
そこで知りたくなるのは、ユニクロの海外ブランド路線で販売される服は、
はたして高いのか、それとも安いのか、ということだろう。
いつものユニクロ、GUの感覚からすると、
少々高いと言える。しかし、
百貨店で販売しているブランド服と比べると、
安いような感覚を覚えるのも確かである。
もう少し紐解くと、ユニクロの事業モデルである
企画・製造・販売を一手に行なう
製造型小売(SPA)の完成度の高さによる安定価格と、
ファッション界の価値の一つであるデザインに付帯する値段のバランスを、
今の時代の一般的な消費者がどう評価していくのだろうか、
と言い換えることができる。
そこで、国内外の衣料品業界に詳しい経営コンサルタントの河合拓さんに、
今回の「ユニクロ アンド ルメール」について見解を伺った。
■海外ブランド服を「適正価格」で売る挑戦
「ファーストリテイリングの高級路線と言われていますが、
そもそも、柳井正氏はユニクロを安い価格の服と定義していないのです。
服を誠実に真面目に作ると、これくらいの価格になるということ。…
海外ブランドとのコラボでは、周りは普段よりも高くなった、
という評価をします。しかし、
価値と価格のバランスが最も良い服がユニクロであり、
それが適正価格である、というのが柳井氏の考え方。
ですから、海外ブランドとのコラボでも、
高級路線の服を販売するという気持ちではないのでしょう」
ユニクロは流通コストと、そして販売における固定費において、
いわゆる百貨店型アパレルの事業モデルに比べて優位性を保っている。
まず、百貨店型のアパレルほどに商社や問屋を介するコストが積み上がることがない。
そして、大型の直営店で販売するので家賃をはじめとする
固定費が安く収まる。そのために、
同じ素材で服を作ったとしても、
百貨店の売り場での上代より、
大幅に低い値段を付けることができる。
「海外ブランドとのコラボについても、
百貨店の売り場と同じ価値を持つ服を、
流通と販売の2大コストの優位性により、
相対的に安価な適正価格で売っていると言えるでしょう」
■ユニクロの価値を消費者に伝える努力が必要
一方で、消費者としては、
値段の上下という心理的な評価が出てくることもあるだろう。
「今の時代、服1点に1万円以上の支払いをしない消費者が多いのは確かです。
ユニクロは、そういう買物志向の顧客のために
低価格帯の服が揃うGUを用意しています。
海外ブランドとのコラボで、
もっとユニクロとGUの差を出していきたい、
という狙いがあるのではないでしょうか」
「つまり、高級路線化というよりも、ブランドへの欲求、
の方があるのではないかと思います。
日用品であるベーシックの服では、
ユニクロは成功しました。そのロジックは、
デザインとファッションの領域では、
まだ検証されていません。ここでも、
誠実に真面目に服を作り、ユニクロが考える適正価格で
ブランド服の販売に打って出るということでしょう」
ユニクロが覇権を握った背景には、従来型の
アパレル会社のマーケティング手法に、
消費者が辟易していた面があったのではないか、
と河合氏は指摘する。作り手の意向でデザイン性や
装飾性が増えると、それは売価が上がることを意味する。
そのようななか、生活のイメージを訴えて
顧客を獲得したのが無印良品だった。
ユニクロは商品自体、つまりSPAという
ビジネスモデルを売って顧客を獲得した。
同じように、かつては低価格帯の服は郊外で売る、
というマーケティング論が主流であったが、
ユニクロは銀座をはじめ一等地に出店して結果を出している。…
河合氏によると、都心店舗の売上が好調で、顧客も、
実は可処分所得に余裕がある層が多いという。
そうすると、この度の「ユニクロ アンド ルメール」で
ブランド化を推し進めるのは、
ごく自然な流れであるように見える。
「しかし、ここで難しいところがあります。
デザイン性やファッション性を持つ海外ブランド服が、
はたして同じ売り場で売れるのか、という疑問が出てきます。
ブランド服は、例えば三越で包んでもらいたい、
と思う人は多いでしょう。ユニクロの海外ブランド化路線が提案する、
洗練されたデザインと買いやすい価格は、
一定の顧客には認知されると思いますが、
それが例えば伊勢丹が培っているブランド販売の
スキームをくつがえすことができるかは、極めて疑問です」
「それはつまり、ユニクロの論理が消費者にしっかりと伝わっているのか、
という話になるでしょう。柳井氏のロジックは正しい。
次は、そのロジックを持って売り場で消費者と
コミュニケーションができるかどうか。
いつも、徹底的に消費者の方を向いている柳井氏であれば、
それは可能なことでしょう」
海外ブランド服を適正価格で販売する、
ユニクロのチャレンジは消費者にとっては嬉しいことだ。
「ユニクロ アンド ルメール」はシンプルなデザインなので、
買い足しや着まわしがしやすそうなところも魅力。
ユニクロの海外ブランドとのコラボ路線は、
はたしてどう出るか。
これからも注目していきたい。
(ZUU online 編集部)
http://www.excite.co.jp/News/economy_g/20151002/zuuonline_83575.htmlより
ZUU Online
2015年10月2日 10時03分 (2015年10月2日 12時13分 更新)
「ユニクロ」の新コラボ「ユニクロ アンド ルメール」は売れるのか?
(写真=Thinkstock/Getty Images) (ZUU online)
[拡大写真]
ファーストリテイリング <9983> 傘下のユニクロが
10月2日から2015年秋冬シーズンコレクション
「UNIQLO AND LEMAIRE(ユニクロ アンド ルメール)」を発売する。
クリストフ・ルメールは、かつてラコステやエルメスでも
アーティスティック・ディレクターを務めた世界的なデザイナー。
パリのブランドらしい、着心地を大切にする洗練された服作りに評価が高い。
「ユニクロ アンド ルメール」の価格帯を見るとシャツで2,990円~3,990円。
ニットで2990円~1万2990円。
アウターで1万2,900円~1万7,900円。
パンツで2,990円~6,990円。
全体的に低価格帯でありつつも、
一方でアウターの上位価格は1万7,900円。
ともすれば、ファストファッション全般に慣れている消費者の目には、
低価格帯の洋服には映りづらい。
むしろ、他のブランドとの比較検討の範囲に入る価格設定と言える。
■ユニクロの海外ブランド服は高いのか?安いのか?
これまでも、ユニクロは有名デザイナーであるジル・サンダーと「+J」を展開するなど、
外部ブランドの付加価値を積極的に取り入れてきた。
「+J」でも、例えば定番の白シャツが3,990 円、
ジャケットは1万7,900円の商品がある。
今回の「ユニクロ アンド ルメール」の価格設定も同じ線にある。
そこで知りたくなるのは、ユニクロの海外ブランド路線で販売される服は、
はたして高いのか、それとも安いのか、ということだろう。
いつものユニクロ、GUの感覚からすると、
少々高いと言える。しかし、
百貨店で販売しているブランド服と比べると、
安いような感覚を覚えるのも確かである。
もう少し紐解くと、ユニクロの事業モデルである
企画・製造・販売を一手に行なう
製造型小売(SPA)の完成度の高さによる安定価格と、
ファッション界の価値の一つであるデザインに付帯する値段のバランスを、
今の時代の一般的な消費者がどう評価していくのだろうか、
と言い換えることができる。
そこで、国内外の衣料品業界に詳しい経営コンサルタントの河合拓さんに、
今回の「ユニクロ アンド ルメール」について見解を伺った。
■海外ブランド服を「適正価格」で売る挑戦
「ファーストリテイリングの高級路線と言われていますが、
そもそも、柳井正氏はユニクロを安い価格の服と定義していないのです。
服を誠実に真面目に作ると、これくらいの価格になるということ。…
海外ブランドとのコラボでは、周りは普段よりも高くなった、
という評価をします。しかし、
価値と価格のバランスが最も良い服がユニクロであり、
それが適正価格である、というのが柳井氏の考え方。
ですから、海外ブランドとのコラボでも、
高級路線の服を販売するという気持ちではないのでしょう」
ユニクロは流通コストと、そして販売における固定費において、
いわゆる百貨店型アパレルの事業モデルに比べて優位性を保っている。
まず、百貨店型のアパレルほどに商社や問屋を介するコストが積み上がることがない。
そして、大型の直営店で販売するので家賃をはじめとする
固定費が安く収まる。そのために、
同じ素材で服を作ったとしても、
百貨店の売り場での上代より、
大幅に低い値段を付けることができる。
「海外ブランドとのコラボについても、
百貨店の売り場と同じ価値を持つ服を、
流通と販売の2大コストの優位性により、
相対的に安価な適正価格で売っていると言えるでしょう」
■ユニクロの価値を消費者に伝える努力が必要
一方で、消費者としては、
値段の上下という心理的な評価が出てくることもあるだろう。
「今の時代、服1点に1万円以上の支払いをしない消費者が多いのは確かです。
ユニクロは、そういう買物志向の顧客のために
低価格帯の服が揃うGUを用意しています。
海外ブランドとのコラボで、
もっとユニクロとGUの差を出していきたい、
という狙いがあるのではないでしょうか」
「つまり、高級路線化というよりも、ブランドへの欲求、
の方があるのではないかと思います。
日用品であるベーシックの服では、
ユニクロは成功しました。そのロジックは、
デザインとファッションの領域では、
まだ検証されていません。ここでも、
誠実に真面目に服を作り、ユニクロが考える適正価格で
ブランド服の販売に打って出るということでしょう」
ユニクロが覇権を握った背景には、従来型の
アパレル会社のマーケティング手法に、
消費者が辟易していた面があったのではないか、
と河合氏は指摘する。作り手の意向でデザイン性や
装飾性が増えると、それは売価が上がることを意味する。
そのようななか、生活のイメージを訴えて
顧客を獲得したのが無印良品だった。
ユニクロは商品自体、つまりSPAという
ビジネスモデルを売って顧客を獲得した。
同じように、かつては低価格帯の服は郊外で売る、
というマーケティング論が主流であったが、
ユニクロは銀座をはじめ一等地に出店して結果を出している。…
河合氏によると、都心店舗の売上が好調で、顧客も、
実は可処分所得に余裕がある層が多いという。
そうすると、この度の「ユニクロ アンド ルメール」で
ブランド化を推し進めるのは、
ごく自然な流れであるように見える。
「しかし、ここで難しいところがあります。
デザイン性やファッション性を持つ海外ブランド服が、
はたして同じ売り場で売れるのか、という疑問が出てきます。
ブランド服は、例えば三越で包んでもらいたい、
と思う人は多いでしょう。ユニクロの海外ブランド化路線が提案する、
洗練されたデザインと買いやすい価格は、
一定の顧客には認知されると思いますが、
それが例えば伊勢丹が培っているブランド販売の
スキームをくつがえすことができるかは、極めて疑問です」
「それはつまり、ユニクロの論理が消費者にしっかりと伝わっているのか、
という話になるでしょう。柳井氏のロジックは正しい。
次は、そのロジックを持って売り場で消費者と
コミュニケーションができるかどうか。
いつも、徹底的に消費者の方を向いている柳井氏であれば、
それは可能なことでしょう」
海外ブランド服を適正価格で販売する、
ユニクロのチャレンジは消費者にとっては嬉しいことだ。
「ユニクロ アンド ルメール」はシンプルなデザインなので、
買い足しや着まわしがしやすそうなところも魅力。
ユニクロの海外ブランドとのコラボ路線は、
はたしてどう出るか。
これからも注目していきたい。
(ZUU online 編集部)
http://www.excite.co.jp/News/economy_g/20151002/zuuonline_83575.htmlより