「出身地鑑定!! 方言チャート」がすごすぎる!
大学生らが開発、隠れ方言もばれる
産経新聞
9月29日(火)10時0分配信
「出身地鑑定!! 方言チャート」がすごすぎる!
大学生らが開発、隠れ方言もばれる
方言チャートの流れ(写真:産経新聞)
方言に関する二択質問に答えていくだけで、自分の出身地がずばり的中-。
今年7月にインターネット上で公開された「出身地鑑定!!
方言チャート100」の利用者が、約2カ月で300万人を突破した。
開発したのは、方言学を専門とする東京女子大現代教養学部の篠崎晃一教授と、
篠崎ゼミに所属する学生たち。
普段は方言だと思わずに使っている「隠れ方言」も織り交ぜながら、
出身地を100エリアに分類するチャートは、
自分のルーツを再確認するきっかけにもなりそうだ。
(滝口亜希)
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「あとぜき」「へっちょ」…分かりますか?
《翌日、家に不在の時、「明日、家におらん」と言うことがありますか?》
方言チャートは、こんな質問で始まる。
「はい」と答えれば西日本、
「いいえ」ならば東日本に分けられ、
そこからさらに質問を重ねていく。
ここで「出身地」としているのは、言語形成期にあたる3、4歳から
13、14歳ごろの時期を過ごした地域だ。
最終的には、旧国名や旧藩名に基づく100エリアに分類される。
近畿地方勤務の2年半を除いて30年近く東京都武蔵野市に住む記者(32)は、
36問に答えたところ、
《あなたの出身は武蔵(東京都・埼玉県)ですね!?》と診断された。
用意されている質問は全部で250問。
大まかなエリアに分けた後は、
ごく限られた地域でしか使われていない方言で、
さらに絞り込んでいく。
たとえば、「扉を開けたら閉めてください」という意味の「あとぜき」は
熊本県で使われるほか、愛媛県の中でも「よそ見をするな」という意味で
「へっちょを見るな」という言葉を使う地域は中予(愛媛県中部)、
使わない地域は東予(同県東部)に分類した。
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学生のネットワーク駆使
実は元祖・方言チャートの登場は平成20年にさかのぼる。
篠崎教授が「現代に使われている方言を掘り起こしてその意味を研究するとともに、
集めた調査データを社会に還元できる」と、
ゼミ生とともに作ったチャートを同年11月の大学祭で発表。
25年8月には試行版が、26年4月には改良版が、
それぞれインターネット上で公開された。
試行、改良版はいずれも出身地を47都道府県に分類する形式。
ゼミ生らが文献やインターネットで、
方言や「◯◯と言ったら、方言だと指摘された」といった隠れ方言に関する情報を収集。
SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)などを使って、
各エリアの出身者に本当にその言葉を使うか確認した上で、
質問を作成していった。
出身地を特定する上での最難関は「関東地方」。
日中の仕事場と夜に住む地域が異なるケースが多く、
その人が使っている方言がどのエリアの言葉か特定しつらいのだ。
各エリアの出身者探しにも苦労したという。
「各エリアで複数人、できれば3人ずつぐらいの協力者が必要。
知人の知人など、学生たちのつてをたどって、人を集めた」と篠崎教授。
100エリア版でも、学生のネットワークを駆使して全地域の協力者を集めた。
篠崎教授は「たとえば尾張出身者の中で、
ある方言を使うかどうか意見が割れれば、
さらに尾張出身者を探して意見を聞いてもらった」と振り返る。
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関心高く、アクセス集中
方言チャートの利用者は、47都道府県版(改良版)が
今年8月6日現在で940万人に迫り、
7月に公開されたばかりの100エリア版も9月8日現在で
約305万人を数える。特に最新の100エリア版への関心は高く、
公開初日にはアクセス集中で一時、
つながりにくくなったほどだ。
一方で、47都道府県版では、作成者の想定外の回答により、
正しい出身地に導けないケースもあった。
「片付ける」を意味する
「なおす」は、西日本の隠れ方言として知られるが、
「西日本の中でも、
四国出身者には意外に使われていなかった」(篠崎教授)という。
100エリア版では、出身地の区割りを都道府県から変えたほか、
一部の設問を見直した。また、
同じエリアにたどり着くまでに複数のルートを設置し、
想定外の回答で西日本出身者が東日本ルートに分類されても、
その後の質問で西日本ルートに戻れるようにした。
25年に47都道府県版の試行版を公開する直前に
300人を対象に行ったテストでは、的中率は約8割を記録。
チャートの最後には、出身地が当たったかどうか、
違う場合は正しい出身地がどこかを利用者に答えてもらう仕組みになっており、
100エリア版の的中率は今後、
ゼミ生とともに分析する予定だが、
ネット上では「当たった」「すごーい!」など好評だ。
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「郷里に思いはせるきっかけに」
なぜ今、方言が注目を集めるのか。
「方言は年寄りの使う古臭い言葉というイメージがあるが、
若い人も使っており、その人のアイデンティティーや
帰属意識を考える際に欠かせないもの」と篠崎教授。
「メディアが発達して共通語と混ぜられたり、
若者がアクセサリー的にあえて方言を使うなど、
用法や形を変えながらも、各地域をアピールするアイテムになりつつある」とみる。
たしかに、NHK連続テレビ小説「あまちゃん」のせりふに多用された
「じぇじぇじぇ」がブームとなったり、24年11月には、
富山空港の愛称が、全国で初めて方言を採用した「富山きときと空港」に決まるなど、
方言は生活の中でより存在感を増しているようにも見える。
方言チャートのヒットで、かつてない大規模な、
方言に関する調査データが集まりつつある。
データの今後の活用方法は未定だが、篠崎教授は
「当たった外れただけでなく、方言は各地の生活語として
生き生きと使われていることを再確認してもらい、
郷里に思いをはせるきっかけになれば」としている。
最終更新:10月4日(日)18時48分
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150928-00000529-san-soci