時の栞

何を見て、何を思い、どう表現したのか。
私の欠片であるコトバで綴った、私自身の栞です。

CC: カーボンコピー * 幸田 真音

2009-06-08 13:22:08 | 読了備忘録
タイトルの“CC:カーボンコピー”とは、メールを複数の人に送る機能のこと。
いち早くトラブルを察知するために、メールを取引先と直属の上司に送る社内のコミュニケーション・システムを改変した中堅の広告代理店が舞台。

バツイチの山里香純・41歳は、元夫である一憲が社長を務めるナガサワ・アド・エージェンシーで離婚後も仕事を続けていた。
ある日、取引先である極東生命に勤める、かつての恋人・広崎研吾が昇進し、広報部へ戻って来る。

昇進祝いのために設けた席で、香純は研吾から保険金不払いについてのグチを聞き、ビジネスにしようと考える。
香純は研吾に、『問題が発覚したときこそが、最大のチャンスなの』と、企業の危機管理能力の重要さを教えつつ、お詫び広告のお膳立てを約束する。

おりしも生損保業界は不払い問題の表面化で、広告の受注が激減し、広告代理店はチャンスを奪い合って熾烈な競争となっていた。
研吾の異動で極東生命のお詫び広告が取れれば、香純の社内での立場も改善され、収益にも貢献できる。
心身を削って作成したお詫び広告の企画書を研吾に託し、かわりにナガサワ・アド・エージェンシーに発注するという約束を交わすのだが…。



広告業界や企業の広報についての記述は興味深く、読みごたえがありました。
ただ、ラブストーリーでもあるので仕方ないのですが、個人的にはここまで性的描写が必要だろうかと思うことしばしば。
人と人の意思疎通の大切さを言うのなら、それよりも、父の急逝で社長となった一憲の後任となった堀井部長や、事務方の先輩女性、井村博子の心情を突っ込んで書いて欲しかったです。

私は香純の仕事に対する姿勢に共感はしても、そのやり方には賛成できない部分もあります。
香純ほどバリバリ仕事はしてませんが、女性だというだけで悔しい思いをしたことも、人事異動で嫉妬されたことも、下げなくても良い頭を下げるという屈辱的なこともありましたが、女性であることを仕事に持ち込むことはしたくないし、感情が伴ってのことなら、なおさら仕事とは切り離したいですね。

それでも、次々と起こる問題に立ち向かう香純の姿は“おしっ、頑張ろう!”という気持ちにさせてくれます。


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