かすかべみてある記

日光道中第4の宿場町・粕壁宿を忠心にクレヨンしんちゃんのまちかすかべをみてある記ます。

かすかべ花便り2022・牛島の藤(余話)

2022-05-02 19:30:00 | 藤の花
◆牛島の藤 
前回エントリーした牛島の藤について、備忘録として余話を少々。
この牛島の藤がある「藤花園」(とうかえん)は、もともとは、「蓮花院」(れんげいん)という真言宗のお寺でした。廃仏毀釈の影響などで明治7年に廃寺となり、その後、何人かの個人の方が所有、現在は所有する小島家の有限会社藤花園さんにより管理・公開されています。




なお、郷土史家の須賀芳郎氏によれば、
この藤は「野田フジ」の一種で花房は、2㍍ほどの長さになります。樹齢は1200年以上で、伝説では弘法大師のお手植えともいわれています。
昭和30年、国の特別天然記念物に指定された「藤花園」は、蓮花院跡と伝えられており、藤の所有は蓮花院(廃寺)から田中源太郎氏、藤岡氏へと移り、現在は小島すい子氏が管理しています。 
明治33年5月発行の「粕壁藤の紫し折おり」に、大和田建樹が「牛島の藤」と題し、紀行文を寄せていますが、その一節に「藤は一つの幹より枝さしひろがり、長さ18間、幅5間の棚にぞ作られたる。それより幾千幾ともなき花房氷柱の如く滝波の如くしな垂れて。下いく少女の顔に映つしあいたるさますべていふべくもあらず。桜は吉野といへど。梅は月瀬といへど藤の名所はまだ知らぬを、あにおもはんや帝都を去る十里の地にして此見ものあらんとは花房の長さ去年に劣れりといえど。なお4尺はあるべし、300 年来の木なりというも遠くはたがはじとぞ思う。」と讃美しています。
詩人三好達治の詩集の中にも「牛島古藤歌」があり、その一節にも
ゆく春のなかき花ふさ
花のいろ揺れもうごかず
古利根の水になく鳥行々子啼きやまず
メートルまりの花の丈
匂ひかがよう遅き日の  
つもりて遠き昔さへ 
何をうしじま千とせ藤  
はんなり、はんなり 
とあります。
昭和初期の長谷川零余子は、 
人の世のいさかいは知らず藤の花
人の目に藤たれて虻のうなりかな 
と牛島の藤を詠んでいます。
(引用:ふるさと春日部『かすかべの歴史余話』須賀芳郎/著 1977年~)

と書かれています。多くの詩人や俳人が訪れて詩や俳句を残しています。 

なお、現在の園長は小島喜久雄氏。

大和田建樹(おおわだ たけき)=『鉄道唱歌』『故郷の空』などで知られる明治期の詩人、作詞家、国文学者。

三好達治(みよし たつじ)=昭和期における古典派の代表な詩人、翻訳家、文芸評論家。

長谷川零余子(はせがわ れいよし)=明治から昭和初期にかけて活躍した日本の俳人。

「はんなり」とは、上品ではなやかなさまを表現する言葉。 

なお、現在の園長は小島喜久雄氏。 

◆新一万円札の顔も

下記のブログによると詩人や俳人の他、昨年2021年のNHK大河ドラマ『青天を衝け』の主人公渋沢栄一翁が今から110年前の明治45年(1912)4月28日、講演で来訪の際、牛島の藤をご覧になったそうです。

↓↓


◆野田藤


園内の案内板などにも「九尺藤」「野田藤」とあります。花のことに疎いため、てっきり野田市(千葉県)が原産なのかぁ、なんて呑気に感心していましたが、そうではなく、どうやら、
大阪市福島区野田はノダフジ(野田藤)と呼ばれる藤の名所で、牧野富太郎による命名のきっかけとなった。同区玉川の春日神社には、野田の藤跡碑がある。(wiklpedia)

牧野富太郎(まきの とみたろう)=「日本の植物学の父」と言われた著名な植物学者。

なお、この野田藤は、今でも牛島の藤(埼玉県春日部市)、春日野の藤(奈良県奈良市春日大社)と共に日本の三大名藤の一つとされています。

その一方、「野田藤」の原産地は、はっきりしないとも言われています。いずれにしても野田市(千葉県)ではないことだけは確かなようです。

最後に、

とその前に、園内には、


花壇と

躑躅

◆牛島の地名

牛島の地名について少々、郷土史家の須賀芳郎氏は、 

ウシジマはウチ(内)ジマの意とみられ、シマには「川添いの耕地」「村」などの意がある。おそらく川荒れによりおこった地名。(「埼玉県地名誌」)
また、小野文雄氏(春日部市史監修者)は自身の著書「埼玉県の歴史」の中で「國府への道(古道)は、武蔵國は東山道に属しており東山道から國府までの五駅の一つである浮島の駅(うまの地で、後に牛島と変化したのではないか」と述べています。

と書いています。興味深いですね。

なお、牛島の地名については、後日改めて。

◆ぷらっとかすかべ

春日部駅東口にある春日部市の情報発信館「ぷらっとかすかべ」にはこんなコーナーもありました。







藤は春日部市の花ですから、この時期は多くの方がお見えになります。





かすかべ花便り2022・牛島の藤

2022-04-28 19:30:00 | 藤の花
◆晴天に誘われて
週明け月曜日25日は、気温も上がり、汗ばむ陽気でした。かすかべの市の花藤も見頃とのことで牛島の藤を観に行ってきました。本当に久しぶり。
場所は、市内牛島にある藤花園
ホームページはこちら
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古利根川沿いを歩いて徒歩でも行けます。車の場合は専用駐車場の他、近くのパチンコ店と共用の広い駐車場が利用できます。駐車場から200m程歩くと藤花園の入口です。



藤花園入口
コロナ禍で、一昨年、昨年と休園が続いており、3年ぶりの開園と言うことで多くの方が訪れていました。
◆園内
入園して、右手の欅の下に石碑があります。

天然記念物牛島之藤

昭和参年四月建設

牛島の藤案内石碑
 国指定特別天然記念物
   牛島の藤案内
この藤は、樹齢約千年といわれる古藤で、山藤に似ているが、つるは右巻きで毛がない変種といわれ、全国一をほこる根のまわりは十平方メートルもある。明治の頃は、三メートルちかい花房をつけていた。藤棚は七百平方メートルの面積がある。園内にはおなじ藤が二本あるが毎年五月はじめに藤紫色の花をひらき美しいながめは関東一といわれている。昭和三年一月十八日国の天然記念物、昭和三十年八月二十二日文化財保護法により特別天然記念物の指定をうける。
   藤の伝説 
むかし、柳原で農家の娘が長い間病気で苦しんでいた。旅僧から娘の病気は生垣の中にある藤を寺に納めるとよくなるといわたので 藤を寺の境内に移し植えたところ病気は治ったという。この寺は蓮花院といわれ今はないが、藤だけが残されてそのあとをしのばせている。
  昭和四十七年三月 
埼玉県教育委員会
春日部市教育委員会  
春日部市 関根石材店施工
 
また、頂いたパンフレットには
由来微証伝説(現在高野山にあり)
当園は元真言宗蓮花院の境内なりしを明治七年当寺の住職藤岡好三氏其の筋へ出願なし、廃寺となり爾来所有者変わり現在にいたる、又、人々の言伝えによると、千二百年前、弘法大師お手植の藤とも聞きおよぶ。
と書いてありました。

日本語、中国語、英語の案内板

凄い生命力



園内の南西に小高いところがあり、そこからみると



絶景かな




◆藤を守る

なお、藤花園さん開園(藤の公開)は、長年受け継いだ藤を守るため、4月から5月の開花時期だけです。

以前、園長さんに伺ったところ、

国の天然記念物の藤を守るため、肥料には、酒粕などを与えている。そして、藤の開花には冬と夏の気温差も大いに関係しており、冬が暖かくても、夏が涼しすぎても花は綺麗には咲かない。

と仰っていました。実際藤の根本には、こんな立札も


創業文化五年(1805)世界鷹小山家グループ小山景一氏経営の(秋田)北鹿(新潟)雪椿・ 越の2本櫻 (埼玉)都鷹(茨城)賜杯櫻(伏見)世界鷹・京姫(灘)浜福鶴各銘醸庫より寄贈の酒粕を毎年寒肥として施肥しこの見事な花房の活動力の源泉となっております。
  特別天然記念物
     藤花園主
      小島すい子

丹精込めて藤を守ってきたことがわかります。小島すい子氏は先代の園長さんのようです。

なお、藤の花の香りを感じられるのは、日差しが強い日中より、朝早くか夕方がおすすめとのこと。また、コロナ禍の前までは、外国の方も増えていたそうですが、2シーズン閉園でしたので、しばらくは期待できなそうです。

そして、入口付近には



やはりお寺の名残りのようです。




かすかべ花便り2022・粕壁神明社の藤

2022-04-24 19:30:00 | 藤の花
◆藤の出番

桜の季節が終わると春日部市の花“藤”の出番がやってきます。

当地かすかべで藤の花と言えば樹齢1200年余と言われる国の特別天然記念物「牛島の藤」がよく知られていますが、その他にも市内の公園や神社などではよく藤棚を見かけます。

また、春日部駅西口の「ふじ通り」にはその名の通りの通り道路の両側に立派な藤棚がありますが、開かずの踏み切りを渡って行かなければいけないのでなかなか行けません。

そして、例年であれば藤の花の時期には、このふじ通りで春日部を代表する一大イベント「春日部藤まつり」が行われ、多くの見物客が訪れ、華やかなパレードや模擬店などで賑わうのですが、昨年(2021年)は、一昨年(2020年)に引き続き新型コロナウイルス感染拡大の影響により2年連続中止、そして今年も残念ながら中止が発表されおり、引き続きオンライン形式での開催となるようです。やはり寂しいですね。

神明社の藤

日光道中粕壁宿の問屋場跡辺りは、江戸時代に名主を務めた見川家の屋敷があったとされ、その敷地内に祀られていたとされる粕壁神明社の境内にも小さいですが藤棚があります。

夏の暑い日にはこの藤棚の下で涼むことがありましたが、なかなか上を見上げる心の余裕がありませんでした。そう言えば藤の花でした。


藤棚の先は神明社本殿

小さな藤棚

古びた木のベンチでしばし藤の花見

房は短いですが、藤の花は散り始めていました。


ここのところ、気温の高低差が大きく、体調を整えるのが難しかったですね。マスクを付けていますので、いきなりの夏日、熱中症対策などと言われても。

水分をしっかり補給してバテないように気をつけましょう。