公開日:2019/04/10・更新日:2023/07/24
◆レンガの積み方
アーチは、レンガ縦小口の三重巻き立てで、面壁や袖壁は、レンガの小口の段と長手の段を交互に積む「イギリス積み」と言われる積み方です。
なお、レンガの積み方には、この他「フランス積み」というのがあるそうです。
ちなみに、
「イギリス積み」とは、レンガの小口(こぐち)を見せる小口(こぐち)積みと長手(ながて)の側を見せる長手積みを各段交互に積む方法。つまり、一段目はレンガを「横」(ながて)に長く並べ、その上の二段目はレンガを「縦」(こぐち)に積み、次の三段目は再び「横」に積む、以後これを繰り返す。つまり一段おきにレンガの向きが異なる積み方。
一方、「フランス積み」とは、同じ段に小口と長手を交互に積む方法。同じ段で「縦→横→縦→横」と繰り返して積んでいく積み方。
なお、明治20年頃からは「イギリス積み」が多くなったそうです。
◆土木学会「選奨土木遺産」
埼玉県内に残る煉瓦造りの樋門としてはニ番目(注2)に古く、4連のアーチ構造は、優れた施工技術により美しい原形と強度を保持していることから、土木学会の「現存する重要な土木遺産」のAランクであるほか、平成17年(2005)には、社団法人土木学会の土木学会選奨土木遺産に、選奨されています。
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◆近代化産業遺産
また、平成19年(2007)には「春日部市の赤煉瓦建造物」として経済産業省の「近代化産業遺産」にも選出されています。
注1:経済産業省 近代化産業遺産
東京駅、碓氷峠鉄道施設群、喜多方市の赤煉瓦製造関連遺産と建造物、埼玉県では、熊谷市の片倉シルク記念館(昨年、見学に行きました)等
注2:以前、このめがね橋が埼玉県内に残る煉瓦樋門としては、このめがね橋が最古と言われていましたが、大落古利根川(葛西用水・逆川)の下流に残る谷古田領元圦(やこたりょうもといり・越谷市)がこの「めがね橋」より2ケ月ほど古いことが分かり、今では「最古級」と表現されています。
今回、埼玉県の指定文化財になったことで、少し溜飲が下がりました。
レンガ樋門が多い理由?
全国的に見ても埼玉県ほど多数のレンガ樋門が建設された地域はないそうです。現存するものは20基ほどですが、造られたのは200基(水門を含む)にも及ぶという調査もあります。
埼玉県にレンガ樋門が多い理由として、明治21年(1888)に深谷市で製造を開始した日本初の機械式レンガ工場・日本煉瓦製造株式会社との関連ではないかと、指摘されていましたが、春日部市教育委員会が倉松落大口逆除からはげ落ちたレンガを調査(平成11年)したところ、日本煉瓦製造株式会社の製品であることを示す刻印は発見できなかったそうです。
明治期の利根川・荒川中流域には、瓦製造から転じた在来技術による中小レンガ工場が多数あったとされ、この樋門のレンガは、そうした中小工場の製品である可能性が推測されます。
なお、日本煉瓦製造株式会社は、昨日発表された新壱万円札の顔となる渋沢栄一翁が設立した会社です。
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【倉松落大口逆除】
次回に続く…
参考文献(次回を含む)
- 独立行政法人水資源機構:『水とともに』2009年5月号 NO.68
- 農山漁村文化協会:『ひとづくり風土記11・ふるさとの人と知恵 埼玉』1995年
- 埼玉県教育委員会『埼玉県の近代化遺産』1996年
- 是永定美著:『利根川・人と技術文化』(雄山閣出版)所収「利根川の煉瓦造水門」1999年3月
- 伊東 孝著:「日本の近代化遺産」岩波新書(新赤版)695 2000年10月20日発行