ようこそ「LENTO」小路へ

旅にお出かけ、おいしいもの、そして日常。「LENTO」(ゆっくり、のんびり)に、いきましょう♪

『生命海流』は旅ゴコロだけでなく

2021-09-01 | 2022夏まで ~本~
おはようございます。
少し前に読んだ、福岡伸一『生命海流』(朝日出版社)についての
感想文に、どうぞ、おつきあいくださいませ。


この夏も旅をあきらめ、ひたすら巣ごもり。

・・・せめて旅ゴコロだけでも満足させたい、
それなら、自分では絶対行かない(行けない)ガラパゴスを旅しよう・・・と、
読み始めた『生命海流』。

現代版ドリトル先生こと、
生物学者の福岡伸一先生の旅日記です。
もちろん、単なる紀行文ではありません♫

フクオカ先生の夢は、かのビーグル号にならい、
同じ航路をとり、若きダーウインが見たガラパゴスを旅すること。
辛抱強くチャンスを待ち続けた結果、素晴らしい旅になりました。

先生や日本人スタッフはもとよりですが・・・

現地エクアドル人の、船長、副船長はじめ、同行を定められているガイド、
通訳、名シェフに、雑役夫の若者・・・
彼らの仕事ぶりが、快適な航海を作り、旅を成功させています。

そんな充実した旅の様子が、ふんだんに掲載された写真から、
ビシバシ伝わってくるのです。

イグアナ、カメ、鳥の生物に空も、海も、本当に美しく・・・
ガラパゴスって、こんなにすばらしいんだ、と、うっとり。

・・・中でも、アタクシの旅ゴコロが、一番、満足させられたのは
航海中の食事、全メニューの写真なんです!

福岡先生も大絶賛の料理は、いかにも異国のテーブル。

夫にそのページを見せると・・・
「これって、いかにも外国のホテルの朝ゴハンで出る、ハムとソーセージの
盛り合わせだよね」と食いついてきましたw

異国の食事は、盛り付け方も全然違いますものね、
旅ゴコロは、やっぱり食事が一番なのでしょうか♫
この写真をきっかけに、しばし夫と、旅談義をしたほどでしたw




さて、福岡先生ならではの考察も、読み応えがあるのは
言わずもがな。

旅は、コロナ禍が、これほどの騒ぎになる直前のこと・・・
帰国後、大騒ぎに誰もが巻き込まれていくわけです。

それもあってか、ウィルスとは?生物とは?
そして、「ロゴス(言語=論理=構造)」とピュシス(生命)などなど・・・
福岡先生の自問自答は続きます。


本書の中で、一番印象に残った場面が以下です。

先生が、走る船の看板に出ていると・・・

グンカンドリだったか鳥が一羽、ずっと船の上を飛び続ける・・・
明らかに先生という人間を意識していた・・・
それも威嚇ではなく、遊んでいるかのように・・・だというのです。

福岡先生は考えます。

ーーガラパゴスは新世界の孤島、ガラ空きのニッチゆえ、
生物は天敵を気にせず、のびのびと生きられた、
それが余裕につながったのではないかーー

「生命は本質的に自由なのだ。
生命は自発的に利他的なのだ。」238頁

そう、結論されました。


生命は自発的に利他的なのだ・・・
感動しませんか?
この夏、一番、印象に残る言葉だった気がします。



そのせいか・・・今週、「読売新聞」(8月30日付)でも、
「利他的」との言葉が、妙に引っかかってしまいました。

記事によると、大竹文雄・大阪大特任教授が
添えられたメッセージの違いによるワクチン接種の意向が
変化するかどうかの調査をしたところ・・・

「高齢者には『あなたが接種すれば周囲の接種を後押しする』という
利他的なメッセージで接種の意向が高まったが...(中略)
若者はメッセージによって行動を変える可能性は低い」とされています。

これだけで、若者が利他的なものに心動かされないと決めつけるのは
早計ですが・・・それでも・・・

福岡先生のガラパゴスにおける考察を、飛躍させれば、
若者は、それだけ余裕がないということかもしれません。

そんな時代を作ってしまったんだなぁ・・・
いや、そもそも今の自分も「利他的」であろうか?
何やら、妙に考え込まされたのでございました。


・・・ということで、モヤモヤした感想文に、
おつきあいいただき、どうもありがとうございました。

コメント    この記事についてブログを書く
« 萩、花の季節に | トップ | 通勤途中の図書館は・・・ »