臨時給付金のゆくえ
12月から18歳以下の子供がいる世帯に1人10 万円を支給する施策が始まった。紆余曲折あり、当初は2段階でクーポンだとか、現金給付だとかあったものの、結局多くは一括現金給付となった。この給付金は、「新型コロナウイルス感染症が長期化し、その影響が様々な人々に及ぶ中、子育て世帯については、我が国の子供たちを力強く支援し、その未来を拓く」ために導入されたものである。18歳以下高校生までの子どもに対して、一人当たり10万円支給するが、養育している者の年収が960万円未満であることが要件となっている。
正直今ひとつこれを導入した政策的目的ははっきりしないが、選挙の公約となっていた事もあり、成り行きで決まってしまった感が否めない。
コロナ禍での給付金は、2020年夏にかけて給付された特別定額給付金が記憶に新しいが、こちらは全国民対象におこなわれた給付で、普遍的給付と言える。今回子育て層を対象に給付をおこなったが、これの目的は何であろう。子育て層が皆コロナ禍で苦しんでいるとは必ずしも言えない。同時に本当に苦しんでいる人に対して、一人当たり10万円の給付がどの程度役に立つのか。はたまた経済効果を狙った消費誘因策であったのか。
給付金の支給が始まった
先頃2021年12月の総務省家計調査の結果が明らかになった。これによると12月の特別収入が確かに増加しており、特別収入の大幅な増加は2020年の特別定額給付金の支給以来である。
これにより2人以上・勤労者世帯では、可処分所得(いわゆる手取り収入)が前年比6.7%の上昇となり、消費支出も名目前年比が3.1%増となった。これを持って直ちに臨時給付金の影響と断ずることはできないが、12月の家庭支出は増加したことに間違いない。
実はこの間コロナ禍により消費自体が落ち込んでくる傾向にあったが、昨年の10月以降一定の感染状況の落ち着きによりやや回復しつつある動向にあった。このことの影響なのか、給付金の影響なのかはもう少し各種調査の結果などを見極める必要がある。
本当に消費に使われたのか
2020年の特別定額給付金の支給では、巣ごもり需要が旺盛に展開されていた時期でもあり、家電や家具などの需要が大きく伸長した。この原資として給付金が活用された面もあった。しかし全体的には、この給付金に限らずとも言えるが、お金の使い道が限定されていたことにより、預貯金に回された資金が多かった。
この点、今回はどうであろう。臨時給付金が支給されたのは実際的には12月末にかけてのことであった。このお正月で消費された分もあったことは想定されるが、むしろお正月明けからの新型コロナ・オミクロン株の流行により、消費自体は再び大きく抑制される方向に動いている。そうすると多くの家庭では、この給付金は再び預貯金に行ってしまう可能性は大いにあると思われる。
本当に支援を必要としている人
コロナ禍も3年目に入り、元々社会的に弱い立場の人たちが、コロナにより一層厳しくなり、様々な社会的問題が表面化した。特にひとり親世帯での生活の困窮実態も多く明らかになっている。こうした世帯にあっては、今回の給付金は確かにありがたいことであるが、給付金だけで目前の解決を図ることができないのが事実である。本当に困っている人たちに対する支援は依然として求められている。
子育て世帯への臨時給付金の効果~2021年12月「家計調査」のデータから~
第一生命経済研究所