女性教員の産前産後休養実施に関する通知が来ているのがあるので、それを転載して実情を考えたい。
発学9
大正11年9月18日 文部次官 赤司 鷹一郎
第五高等学校長 溝淵 進馬 殿
女教員の産前産後に於ける休養実施に関する件通
発学108号
大正11年10月13日 文部次官 赤司 鷹一郎
第五高等学校長 溝淵 進馬 殿
女教員の産前産後に於ける休養実施に関する件通帳
今般文部省訓令第十八号に基つける首題の件に関し別紙の通り地方長官宛通帳を発したるに付き御了知相成度
県知事 殿
教員の産前産後に於ける休養実施に関する件
通帳 今般文部省訓令第十八号を以て教員の産前産後に於ける休養に関し発令相成りし処右実施に就いては尚左記の事項御了知の上可然御取扱相成度
記
一、大正十一年文部省訓令第十八号に拠り教員に産前産後の休養を為さしむる場合は賜暇に準じ取扱われ度
一、当該休養を為す教員の担任える授業の補充に関しては教授の上支障を来たさざる様予め補充の教員をおく等適宜の方法を請うぜれ度
一、従来私立学校に在りては其の教員産前産後の休養を為す場合に教授上支障を来す等の理由により解職せらるる向きも有る也に聞き及ぶ所なるが斯は該休養の趣旨に添はざるものなれば自今此点に関し適宜の方法を請うぜれ度
一、該休養をなさしむる外 教員の月経時、妊娠時には体操、運動会、遠足等に於いて過激なる運動を為す等凡て其の身体の異常を起こし易き職務を随時軽減又は免除する等適宜の保護方法を講ぜられ度 以上
10月18日
学校における伝染病予防実施に関する件 通帳
首題の件に関し別紙のとおり地方長官へ通帳せしにより参考の為御通知致すに付き御了知相成度
1918(大正7年)の女性教師の訴えによると、
「起床5時半、お乳をつくり、小川でおむつの洗濯。7時20分登校、5時帰宅、それから子供の世話、子どもがつごうよく眠ってくれればその間にそうじ、夕食後縫い物等々で新聞もろくろく読めません。子どもが出来てから教育雑誌さえ十分読めなくなりました。」
と、学校における優秀な教師が、家庭では「ダメな主婦」になっていると自ら言わざるをえない状況であった。
五高に在職した女性教師は外国人教師 Sophie Buettnerno (ドイツ語)で明治44年月1日から大正4年7月31日まで在職した例があるがこの通知は殆ど顧みられていないようである。