伯母の葬儀で出かけた静岡は桜の花が満開だった。
教会の前の垂れ桜の花吹雪も伯母を見送ってくれているようだった。
一昨年死んだ父は桜の花が嫌いだった。
零戦乗りで特攻隊の生き残りだった父。
「思い出すんだよ」と吐き捨てるように言っていた。
サクラノハナハキライ、とインプットされて育ったから、
私も桜には無関心を装って生きてきた。
でも父がいなくなって2年たった今、
桜を綺麗と見つめる自分がいる。
「生き残り」という罪悪感を生涯背負っていた父にとって
耐え難い思いの象徴が桜の花だったのだろう。
所属していた七生隊は全滅に等しかったと後で知った。
父も本当は桜の花が嫌いだったのではなかったのではないか、
と今は思う。