頬袋日記

いまいち飼育法の確立されてない動物「ハムスター」に翻弄されっぱなしの「ニンゲン」の観察記録。

ハムスターを「プレゼント」にするのはやめてください

2013-11-03 00:38:00 | 「どうぶつ」のことについて。
どのカテゴリに書こうか迷いましたが、こちらに書いておくことにします。

昔、インドでは、嫌な家臣をやめさせたいと思ったときは、王様はその家臣に「白い象」を贈ると言われていました。白い象とは大変珍しく、貴重なものです。家臣はありがたくそれをいただくのです、が…。
珍しい生き物とあってどう世話をしていいかわからない。とにかくやたらと餌を食うようだ。王様からもらった白い象だから絶対死なせてはいけない。こうやって、飼い方を調べに奔走し、餌代に散財した挙句、仕事どころではなくなって、その家臣は失脚するという寸法です。

また別の例。
大学時代、先輩の誕生日プレゼントにハムスターを贈った後輩たちがいました。そのハムスターは一年経つか経たないかで死にました。卒論の研究が忙しくて帰れず、世話をできなくて死んでしまったと言うのです。

「白い象」と「ハムスター」はある意味逆の結果をもたらしています。白い象は飼い主に悪影響を及ぼしているけど、ハムスターはただ放置されて死んだだけです。しかしハムスターとて時には「白い象」になり得るのです。

例えば先程のハムスターだって、後輩から贈られたものを死なせてしまっていい気分はしないでしょう。それにいままで関心のなかった動物の世話を、毎日忙しい中させられることになるのです。この先輩がハムスターの飼育にハマってしまっていたら、もしかしたら留年したかもしれません。

生き物を贈られるのはやはりかなりプレッシャーを伴うもので、最初はかわいい!で済むかもしれないけど、毎日の世話という現実がやってきた時、さして知識や興味のない人間にとっては邪魔な存在にしかなりません。愛玩されるべきハムスターが、嫌がらせに使われるための「白い象」の役割を担ってしまうのです。

生き物を他人に贈るときは、その人がその生き物を欲しいと思っているか、そしてその為に知識や情報を集めているかをよく確認することが必要です。これからクリスマスを迎えますが、かわいいしなんとなく子供でも飼えそうだからと云う理由で、ねだられるままにハムスターを買い与えるお父さん、お母さんにはちょっと考え直して欲しいです。子供が小動物とはいえ命をあずかり、全責任を負うのは不可能に近いことです。そのフォローをするために、お父さん、お母さんはどれだけハムスターのことを知っていますか?お子さんができない部分の世話を、時には血が出るほど噛まれても行うことはできますか?病気になった時、一回5000円前後、場合によっては数万円の治療費を払うことはできますか?家族旅行をするときに、ハムスターを一匹家に置き去りにせず、ペットホテルなど適切な環境下で預かってもらいますか?
…これは他の動物にも言えることだと思います。

これが例えモノをプレゼントするのであれば、たとえ趣味に合わないものでもしまっておけばいいだけのことですが、生きているものを収納することはできません。
生きているものを「プレゼント」にするのは、やめませんか?

テンポイント

2013-10-31 10:11:58 | 「どうぶつ」のことについて。
昔、テンポイントという名馬がいました。
天皇賞、有馬記念といった大レースを勝ち抜き、同世代のトウショウボーイやグリーングラスと並んで大人気を集めました。

しかし、テンポイントはレース中に脚を骨折してしまいます。皮膚を折れた骨が突き破るほどの大怪我で、安楽死させるしかないと思われていました。
ところが、安楽死をさせずに治療を望む声が多数寄せられ、一時は助命嘆願の電話で回線がパンクするほどになりました。その結果、安楽死はさせずに、できる限り治療をして延命させようという事になりました。

治療は困難を極めました。
折れた骨を繋げて固定するためのボルトは、テンポイントの馬体重を支えきれず歪み、自立が不可能となりました。やむを得ずテンポイントの体を天井から吊り下げる形で治療を続けたものの、テンポイントは次第にやせ衰え、500キロ近くあった馬体重は300キロを切るかというところまで落ちていたそうです。見た目は馬というより「大きな犬」という程になりました。
そして、最後には横たわらせて寝たきりの状態になりました。そして蹄葉炎という障害も併発し、亡くなりました。最後まで安楽死は行われず、自然死でした。

私は子供の頃「ダービースタリオン」という競走馬育成ゲームにハマっていて、そこからテンポイントの事を知りました。
「ダービースタリオン」というゲームは競走馬を育ててレースで勝たせる事を目的としたゲームなんですが、一定の確率でレース中に故障を発生し、「予後不良」すなわち安楽死となるイベントがあり、そのシーンがいかにも葬式然として辛いものがありました。

なぜ、馬は脚が折れると死んでしまうのか。
テンポイントの話を知っている人は、現状では治療が苦しみにしかならないことを知っています。
しかし普段競馬を見ないような人は、たまたま有名な馬が予後不良になったというニュースだけを見てショックを受けて、
「脚の骨が折れたくらいで殺すなんて可哀想じゃないか」
「レースに出られなくても牧場で飼ってあげればいいじゃないか」
というようなクレームを口にしたりします。
おそらくテンポイントの助命嘆願をした人たちもはじめはそう思っていたのでしょう。

「競走馬は脚が折れるとレースで使い物にならないから殺される」
これは大きな誤解です。
できるならもう一度レースに出してあげたい、せめて子孫だけでも残してあげたい、そう一生懸命に思って馬主側も最善の努力を尽くしているのです。
しかし、治らないものは治らないのです。
治らないものに無闇と人の手を加えても、苦しむ時間を長引かせるだけだと、テンポイントは身を持って伝えています。

なんでテンポイントの事をいきなり語りだしたかというと、日本のペットの立ち位置が変わってきていて、ペットが病気になったのは飼い主のせいだから滅私奉公しろ、という声が大きくなっているように思ったからです。
インターネット某所では、飼っているハムスターの様子がおかしいので看病をずっとしていたが、30分ほど目を離して家の用事を済ませていたらハムスターが死んでしまったという飼い主に対して、恐ろしいほどの非難が寄せられていたのです。
ペットの命が危ないという時に家の用事なんかするな、徹夜してでも看ていろというのです。

それはないんじゃないかと。
30分目を離しただけで消えてしまった命なら、もう助からなかったんじゃないかと。
仮に病院に連れて行ったからといっても、搬送中に亡くなっていたのではないかと…。

なんだか、事情も知らずに競走馬の安楽死を強く反対する人たちと被るのです。
病気になったらお医者さんのところへいけば治るよ、というのは、子供のうちに卒業しなきゃいけないことだと思います。
どうにもならない命もあるんです。
それを全て人間のせいにするのは愚かしいし、おこがましいとも思うのです。