シニア・ソレイケ

昭和生まれ専科

「夏子の冒険」

2011-07-14 | 映画ーアレコレ
夏子の冒険

人間の脳みそは、つくづく不思議なものだ。つい昨日何を食べたか覚えていないのに(小生だけかも知れないが)、昔のことは結構覚えている。

そう言えば何と言う落語の枕だか忘れたが、頭脳の明晰さでは歴史上最も高名な孔子(だったと思う)に、ある人が「孔子様は頭が良い人で昔のことを良く覚えておいでと聞いていいますが、一番古い記憶ってのは何です?」と訊くと孔子曰く「うむ、母親の胎内にいたときだな」。「ヘェ~、お母さんの胎内ってどんなもんなんすか?」「うむ、寒くもなく暑くもなく、丁度秋のようだったな」「へぇ? どうして春じゃなくて秋なんです?」「うむ、ときどきマツタケが生えていた」。

小生の場合、古い映画の記憶をたどると、いろんな映画が時間差なしに断片的に出てくるが、そのうちのひとつが、「夏子の冒険」。 調べてみるとリリースが昭和28年とあるし、小生の長岡を出た時がその頃だから、多分、長岡で観た最後の映画だったのかも知れない。

これは三島由紀夫原作の映画だそうだが、それを知ったのはずっと後年。この映画を観た時の記憶に残っているのが、若原雅夫や高橋貞二の7・3に分けた髪の、ヒカリを反射した部分が青く光っていたことだ。多分、子供心に髪の反射した光は白いものと思っていたのが青く見えたので不思議に、また新鮮に感じたのだろう。後に、これが高峰秀子主演で日本最初の総天然色映画の「カルメン故郷に帰る」の次に出たカラー作品ということだから、小生が観た初めてのカラー映画ということで、その意味でも記憶しているのだろう。

それと、この頃から色気づいていたのかも知れないが、映画では、森の中を若原雅夫が夏子(だったと思うし、女優が誰だかも覚えていない)のお尻(確かチェックのスラックス姿?)を前に向け両足をもって片方の肩に担いで歩いていて、夏子が何か言うと、もう一方の手でお尻をはたくというシーン。何故かここだけ鮮明に覚えている。

ここまで書いて思い出したが、少なくとも昭和30年代は映画のポスターに「総天然色」とサブタイトルが付いていたように思う。ということはモノクロームに対する表現であるが、その過渡期に「部分カラー」という映画があった。一番有名なのが、黒澤明監督の「天国と地獄」かも知れない。これは間違って誘拐された子供のために、本来狙われた子供の父親である会社重役の三船敏郎が提供した身代金を入れたカバンに薬剤を入れておき、燃やすと煙に色が付くという設定で、そうとは知らぬ犯人がカバンを燃やすと、画面の焼却炉の煙が突然モノクロからカラーになる。

「部分天然色」(今ではパートカラーというそうな)が主流だった昭和40年代には、どちらかというと「大蔵映画」に代表されるような成人向け映画に「部分カラー」が多くあったが、これにバーンと「総天然色」で登場したのが日活ロマンポルノだった。やはり一世を風靡しただけのことはある。