カチカチ山
エー毎度のお運びありがとうございます。
さて、話しもいよいよ最終局面でございます。
果たして、うまくお噺がつづきますことやら。いささか頼りない気がして落ち着かないのは皆様方の方かと思いますが…エー私の方は全然心配しておりません。どうせうまく落ちなくったって、打ち所が悪くて死ぬなんてェことはありませんから。
エー前回は、シタ切りスズメが悪い色後家さんにとっちめられたところまででしたな。
何しろ歳を取りますってぇと、どうも記憶の方がはっきりしませんで…。
さて、今回のお噺は、叶姉妹のようなナイスバディの後家さんがスズメのお宿から手ぶらで家に帰ってきたところから始まります。
「ちきしょう、あのスズメめ。あたしにゃ何も土産をくれなかったよ。そうだ、隣のばあさんの金銀財宝は、本来あたしがあのスズメからもらう慰謝料だったんだ。だからそれを殺して取ったって悪くはないよ。取られたものを取り返すだけだからね。 だけどナンだねェ。隣にいるババアが死んじゃったら、あたしが真っ先に疑われるね。ナンかうまい手はないかねぇ」後家さんは暫く思案しておりましたが、ハタと手を打ち、胸をブルンと振るわせ「そうだ。あそこはペットショップだから、あそこで売られている狸を買ってきて、ババアを殺させたらよかろう」とよからぬことを思いつきます。
誠にお胸の大きいご婦人というのは、考え方があらぬ方向へ飛躍するようで怖いものです。 わたくしがこうやって長生きできたのも、ひとえにこのような美人に無縁だったからかも知れませんが。 マ、それが良かったかどうかは疑問でもございますが…。
それはさておき、美人後家さんは太郎婆さんの店からタヌキを買ってきて、その狸に婆さんを殺す算段を教えます。
「いいかい。オマイはあの店で売られていて、危うく他の客に狸汁の具として売られるところをあたしが助けてあげたんだよ。その恩を忘れたら犬畜生どころか人間より劣るよ。あの家はお金が一杯あるからサ、婆さんを後ろから棒で殴って殺しちまってお金を持っといで」
この狸もなかなかのタヌキでして、神妙な顔で後家さんの言うこと聞いておりましたが、「そうか、あのペットショップにそんなに金があるんなら、何もシトのためじゃなくて自分のためにやろう。ナーニ、一人殺すのも二人殺すのもおんなじだ」と、どっかのシトとおんなじようことを考え、後家さんが油断して後ろを向いた隙に、そばにあった棒で後家さんの頭を殴り、殺してしまいました。そして太郎婆さんの家に忍び込み、これも棒でひと殴りしましたが、さすがに歳はとっても太郎婆さん、昔はオトコ。血だらけになりながらも、家の外に逃げ出します。
「タスケテクレー」。太郎婆さんは山道を逃げてきましたが、とうとう倒れてしまいました。そこへ丁度、月の国からきたウサギが通りかかります。
太郎婆「もしもし、そこを行くウサギさん。私は元、浦島太郎というものですが、今悪いタヌキに頭を殴られ、出血太郎(多量)で死にます。どうぞ仇を取ってください。お礼にタヌキに盗られた家にあるお宝を全部を差し上げます」
「おいおい、見れば婆さんじゃねぇか。こんな年寄りをいじめやがって。もうチョイ我慢すれば手ぇ出すまでもなく死ぬものを。まぁ、しかし、これも何かの縁だ。よし、分かった。確かにそのタヌキ野郎は俺が仇をとってやるからな。まぁ安心して成仏してくんな」と親切に土に葬って簡単な墓を立ててやります。
その頃、タヌキは太郎婆さんから奪った金で贅沢三昧。イヤ、もう札ビラを切って、若い娘、コスプレ嬢、キャバクラ嬢などを相手に大盤振る舞い。ラブホにも連荘(レンチャン)で泊り込んで遊びまくっております。「今日はキャバクラ、明日はアキバ、間を過ごすは錦糸町」ってなもんです。何しろ金がある上にキンのタマつきですから、少々顔や体形が不細工でもモテルモテル。そこへ月のウサギがやってまいります。
「オッ、いたいた。あのタヌキ野郎か。ヨーシ、早速声をかけてやろう」「ヨッ、タヌキのダンナ。様子がいいですヨッ。エーッ。こんなに若い女の子に囲まれてモテモテですねッ。金離れよくて、おまけにこんなでかいモノをぶらさげているんですから、素人さんから玄人さんまで夢中になりますよ。ィヨッ、ニクイね!この後家殺し!」
「オオーツ、ビックリした。『後家殺し』なんて、あんまりホントのこと言うなよ。処で、ナンだお前は?」
「ヘイ、月のカジノからやってきた営業担当部長です」
「何が営業担当ブチョウだァ。ブッチョウ面ぶらさげて。処で何かオレに用か?」
「エエ、エエ、何か八日(ようか)、9日10日というくらいなもんで。実は今、月のカジノじゃァ、お客様還元セールと銘打って、カジノ全店で「大相撲八百長セール」と銘打って絶対勝てる取り組みをご用意しているんですよ。何しろ勝つことが分かっているほうに賭けるんですから負けたくても負けないんです。マ、そんなとこですから、誰でもというわけにはいかない。やはり、一流の紳士で金持ちしか相手にしないんですよ。ダンナは絶対いいカモ、いや、そこにピッタリのお方と思ってお誘いするようなわけでして」
「そうかい?オレがそんなに紳士に見えるかい? そうか、そうか。イヤ、実はナ、もっと刺激的な遊びはないか探していたとこなんだよ。よしッ、それじゃあ一緒に行こうか」ってんで、タヌキは若い女の子を侍らせながらウサギの用意した月ロケットに乗って月のカジノへ向かいます。
「オオーツ、なかなかいいな、このロケットは。天にも上る気持ちだな。ウン。処で俺はナ、月を見ると、その-ゥなんだ、腹鼓を打ちたくなる性分なんだ。ここで腹ツヅミを打たせてもらうぜ。ホレ、ポンポコポンノ・スッポンポン」ロケットの中で大変な騒ぎです。連れてった女達もスッポン、スッポン、スッポンポンとか囃されて本当にスッポンポンになって踊ったりしております。
さて、タヌキは月に着いて「火事の勝勝」と看板の掛かった山深いカジノへつれていかれ、早速「相撲賭博」をやり始めましたが、元々タヌキを懲らしめるのが目的の博打ですから、あっという間に負けがこみます。
そうこうするうちに、素人の悲しさ、タヌキは有り金を巻き上げられます。そこで例に洩れず火星人かバルタン星人の月のヤクザが出てまいります。
「なにぃ?金が無い? ざけんな。マタの間にでかいモンがあるじゃねぇか。お前もタヌキなら、それをキンの茶釜に化けさせてみろ。イヤと抜かしたら泥舟に乗っけて沈めちゃうぞ」と脅され、止む無くあそこを金の茶釜に化けさせたところで、借金のカタにとその部分をひっこ抜かれます。
イヤァ、痛いの痛くないの。タヌキの袋は8畳敷きと申します。私のモノはせいぜいお猪口程度ですが、それを一寸ぶつけても気の遠くなるような痛さですから、8畳分ともなると想像を絶しますな。
さすがの不知火検校みたいなタヌキもタマを抜かれたらタマりません。アッというまに悶絶死でございます。マア、道理で『「タ」ヌキの「マ」ヌケ』といいますから、タとマをヌカれるわけでございます。
そして月ウサギは「婆さん、アンタの仇は討ったぜ。成仏してくれよ。ところでこのキンのタマ茶釜はどうするかな。しかしナンだね。でかい釜の上の端っこにチョコッとちっちゃい注ぎ口がついていて。これは茶釜というより急須だね。タヌキの野郎、デカイ袋を自慢してた割には注ぎ口はチンケだね。イヤ、チンコか。しかし、これだけデカイ水入れがついているとナンにでも使えちゃうね。『万事急須』ってこのことだね」
ウサギは、その茶釜と急須のアイノコみたいなのを「キンがタマる茶釜でお茶を飲みましょう」と銘打って、カジノの縁起物として、これにお茶を入れて売り出したところ大変な評判となり、お客さんはカジノで博打をする前に、先ずこの茶釜風急須のお茶で喉をうるおすようになります。
そんな中、酔狂なシトも居るモンで、ある日このキン茶釜を買いたいという人が現れました。
「これこれ、その方が、あのキンのタマる急須風茶釜の持ち主か。実は、拙者はさる藩の家老じゃが、殿があのヘンテコな急須茶釜が欲しいとおおせられての。拙者としてはお止めしたのじゃが、是非にも買い求めたいと言われる。ついては、あの急須の値は如何ほどかな?」
「ヘッ?あの急須をですか? マ、そりゃぁ売らないこともありませんけどね。チョットお高いですけど、いいですか? ヘッ、ありゃぁ、何しろキンでできてますからね。やはりお支払いも金(キン)ということで如何でしょう? マ、そうですね、あの急須茶釜に入る金の量と同量ということで如何でしょう」
「ウウム、その方なかなか商売がうまいの。しかし、殿がいたくお気に入られているので致し方あるまい。よし、それではそれで手を打つが、一体どれほどの金が入るのじゃ?」
「ハイ、1升ほど入ると思います。
「何故、1升と分かるのじゃ?」
「ハイ、『急須に1升を得た』と申します」
エー毎度のお運びありがとうございます。
さて、話しもいよいよ最終局面でございます。
果たして、うまくお噺がつづきますことやら。いささか頼りない気がして落ち着かないのは皆様方の方かと思いますが…エー私の方は全然心配しておりません。どうせうまく落ちなくったって、打ち所が悪くて死ぬなんてェことはありませんから。
エー前回は、シタ切りスズメが悪い色後家さんにとっちめられたところまででしたな。
何しろ歳を取りますってぇと、どうも記憶の方がはっきりしませんで…。
さて、今回のお噺は、叶姉妹のようなナイスバディの後家さんがスズメのお宿から手ぶらで家に帰ってきたところから始まります。
「ちきしょう、あのスズメめ。あたしにゃ何も土産をくれなかったよ。そうだ、隣のばあさんの金銀財宝は、本来あたしがあのスズメからもらう慰謝料だったんだ。だからそれを殺して取ったって悪くはないよ。取られたものを取り返すだけだからね。 だけどナンだねェ。隣にいるババアが死んじゃったら、あたしが真っ先に疑われるね。ナンかうまい手はないかねぇ」後家さんは暫く思案しておりましたが、ハタと手を打ち、胸をブルンと振るわせ「そうだ。あそこはペットショップだから、あそこで売られている狸を買ってきて、ババアを殺させたらよかろう」とよからぬことを思いつきます。
誠にお胸の大きいご婦人というのは、考え方があらぬ方向へ飛躍するようで怖いものです。 わたくしがこうやって長生きできたのも、ひとえにこのような美人に無縁だったからかも知れませんが。 マ、それが良かったかどうかは疑問でもございますが…。
それはさておき、美人後家さんは太郎婆さんの店からタヌキを買ってきて、その狸に婆さんを殺す算段を教えます。
「いいかい。オマイはあの店で売られていて、危うく他の客に狸汁の具として売られるところをあたしが助けてあげたんだよ。その恩を忘れたら犬畜生どころか人間より劣るよ。あの家はお金が一杯あるからサ、婆さんを後ろから棒で殴って殺しちまってお金を持っといで」
この狸もなかなかのタヌキでして、神妙な顔で後家さんの言うこと聞いておりましたが、「そうか、あのペットショップにそんなに金があるんなら、何もシトのためじゃなくて自分のためにやろう。ナーニ、一人殺すのも二人殺すのもおんなじだ」と、どっかのシトとおんなじようことを考え、後家さんが油断して後ろを向いた隙に、そばにあった棒で後家さんの頭を殴り、殺してしまいました。そして太郎婆さんの家に忍び込み、これも棒でひと殴りしましたが、さすがに歳はとっても太郎婆さん、昔はオトコ。血だらけになりながらも、家の外に逃げ出します。
「タスケテクレー」。太郎婆さんは山道を逃げてきましたが、とうとう倒れてしまいました。そこへ丁度、月の国からきたウサギが通りかかります。
太郎婆「もしもし、そこを行くウサギさん。私は元、浦島太郎というものですが、今悪いタヌキに頭を殴られ、出血太郎(多量)で死にます。どうぞ仇を取ってください。お礼にタヌキに盗られた家にあるお宝を全部を差し上げます」
「おいおい、見れば婆さんじゃねぇか。こんな年寄りをいじめやがって。もうチョイ我慢すれば手ぇ出すまでもなく死ぬものを。まぁ、しかし、これも何かの縁だ。よし、分かった。確かにそのタヌキ野郎は俺が仇をとってやるからな。まぁ安心して成仏してくんな」と親切に土に葬って簡単な墓を立ててやります。
その頃、タヌキは太郎婆さんから奪った金で贅沢三昧。イヤ、もう札ビラを切って、若い娘、コスプレ嬢、キャバクラ嬢などを相手に大盤振る舞い。ラブホにも連荘(レンチャン)で泊り込んで遊びまくっております。「今日はキャバクラ、明日はアキバ、間を過ごすは錦糸町」ってなもんです。何しろ金がある上にキンのタマつきですから、少々顔や体形が不細工でもモテルモテル。そこへ月のウサギがやってまいります。
「オッ、いたいた。あのタヌキ野郎か。ヨーシ、早速声をかけてやろう」「ヨッ、タヌキのダンナ。様子がいいですヨッ。エーッ。こんなに若い女の子に囲まれてモテモテですねッ。金離れよくて、おまけにこんなでかいモノをぶらさげているんですから、素人さんから玄人さんまで夢中になりますよ。ィヨッ、ニクイね!この後家殺し!」
「オオーツ、ビックリした。『後家殺し』なんて、あんまりホントのこと言うなよ。処で、ナンだお前は?」
「ヘイ、月のカジノからやってきた営業担当部長です」
「何が営業担当ブチョウだァ。ブッチョウ面ぶらさげて。処で何かオレに用か?」
「エエ、エエ、何か八日(ようか)、9日10日というくらいなもんで。実は今、月のカジノじゃァ、お客様還元セールと銘打って、カジノ全店で「大相撲八百長セール」と銘打って絶対勝てる取り組みをご用意しているんですよ。何しろ勝つことが分かっているほうに賭けるんですから負けたくても負けないんです。マ、そんなとこですから、誰でもというわけにはいかない。やはり、一流の紳士で金持ちしか相手にしないんですよ。ダンナは絶対いいカモ、いや、そこにピッタリのお方と思ってお誘いするようなわけでして」
「そうかい?オレがそんなに紳士に見えるかい? そうか、そうか。イヤ、実はナ、もっと刺激的な遊びはないか探していたとこなんだよ。よしッ、それじゃあ一緒に行こうか」ってんで、タヌキは若い女の子を侍らせながらウサギの用意した月ロケットに乗って月のカジノへ向かいます。
「オオーツ、なかなかいいな、このロケットは。天にも上る気持ちだな。ウン。処で俺はナ、月を見ると、その-ゥなんだ、腹鼓を打ちたくなる性分なんだ。ここで腹ツヅミを打たせてもらうぜ。ホレ、ポンポコポンノ・スッポンポン」ロケットの中で大変な騒ぎです。連れてった女達もスッポン、スッポン、スッポンポンとか囃されて本当にスッポンポンになって踊ったりしております。
さて、タヌキは月に着いて「火事の勝勝」と看板の掛かった山深いカジノへつれていかれ、早速「相撲賭博」をやり始めましたが、元々タヌキを懲らしめるのが目的の博打ですから、あっという間に負けがこみます。
そうこうするうちに、素人の悲しさ、タヌキは有り金を巻き上げられます。そこで例に洩れず火星人かバルタン星人の月のヤクザが出てまいります。
「なにぃ?金が無い? ざけんな。マタの間にでかいモンがあるじゃねぇか。お前もタヌキなら、それをキンの茶釜に化けさせてみろ。イヤと抜かしたら泥舟に乗っけて沈めちゃうぞ」と脅され、止む無くあそこを金の茶釜に化けさせたところで、借金のカタにとその部分をひっこ抜かれます。
イヤァ、痛いの痛くないの。タヌキの袋は8畳敷きと申します。私のモノはせいぜいお猪口程度ですが、それを一寸ぶつけても気の遠くなるような痛さですから、8畳分ともなると想像を絶しますな。
さすがの不知火検校みたいなタヌキもタマを抜かれたらタマりません。アッというまに悶絶死でございます。マア、道理で『「タ」ヌキの「マ」ヌケ』といいますから、タとマをヌカれるわけでございます。
そして月ウサギは「婆さん、アンタの仇は討ったぜ。成仏してくれよ。ところでこのキンのタマ茶釜はどうするかな。しかしナンだね。でかい釜の上の端っこにチョコッとちっちゃい注ぎ口がついていて。これは茶釜というより急須だね。タヌキの野郎、デカイ袋を自慢してた割には注ぎ口はチンケだね。イヤ、チンコか。しかし、これだけデカイ水入れがついているとナンにでも使えちゃうね。『万事急須』ってこのことだね」
ウサギは、その茶釜と急須のアイノコみたいなのを「キンがタマる茶釜でお茶を飲みましょう」と銘打って、カジノの縁起物として、これにお茶を入れて売り出したところ大変な評判となり、お客さんはカジノで博打をする前に、先ずこの茶釜風急須のお茶で喉をうるおすようになります。
そんな中、酔狂なシトも居るモンで、ある日このキン茶釜を買いたいという人が現れました。
「これこれ、その方が、あのキンのタマる急須風茶釜の持ち主か。実は、拙者はさる藩の家老じゃが、殿があのヘンテコな急須茶釜が欲しいとおおせられての。拙者としてはお止めしたのじゃが、是非にも買い求めたいと言われる。ついては、あの急須の値は如何ほどかな?」
「ヘッ?あの急須をですか? マ、そりゃぁ売らないこともありませんけどね。チョットお高いですけど、いいですか? ヘッ、ありゃぁ、何しろキンでできてますからね。やはりお支払いも金(キン)ということで如何でしょう? マ、そうですね、あの急須茶釜に入る金の量と同量ということで如何でしょう」
「ウウム、その方なかなか商売がうまいの。しかし、殿がいたくお気に入られているので致し方あるまい。よし、それではそれで手を打つが、一体どれほどの金が入るのじゃ?」
「ハイ、1升ほど入ると思います。
「何故、1升と分かるのじゃ?」
「ハイ、『急須に1升を得た』と申します」