エー毎度のお運びありがとうございます。
エー、さて今回は、タマ手箱を開けた浦島太郎がおばあさんになったところからお噺が始まります。
エー、おばあさんになった太郎は、その後、流れ流れて陸奥の国に行き、そこでペットショップを開きウサギや亀を販売しながら余生を送るようになりました。
そして、その隣には、歳の頃なら28-9で、影もピンク色をしてるというくらい色気たっぷりな若後家さんが住んでおりました。
ある日、帝の勘気を蒙り都落ちしてきた、つまり左遷された藤原の左近衛中将実方(さねかた)というお公家様が、この陸奥の国へとやってまいります。 この実方というお方は大変和歌の道に秀でたお方でございますが、なかなか色の道にも達者で、一説には色恋沙汰で都から放逐されたという噂もございます。また、死後スズメとなって都へ帰ったという逸話もございます。
「あーぁ、まったく陸奥ッてとこはホントに田舎だね。山じゃ狐にだまされて道に迷うわ、さっきは猫に折角昼餉(ひるげ)に食しようと思った焼き魚を取られるわ。 ンとに『狐にゃだまされ猫にゃとられ ニャンでコンなにへまだろう』って麻呂のことだね。 それにしても昨日は疲れたね。あの花魁もなかなかオツなもんでしたよ。 『アナタに見しょとて結うたる髪を 夜中に乱すもまたアナタ』ってなことを言われてついつい長居をしてしまいましたョ。 『ゆうべしたのが今朝まで痛い 二度とするまい箱枕』なんてネ。それにしても腹がへったな。そうだ、そこの家で何か食べさせてもらおう」と、丁度目に入った若後家さんの家にのそりと入ります。この後家さん、亭主をナニで衰弱死させたというウワサがあるくらいのシトですから、ご主人が居なくなってイライラしており扱いもつっけんどんです。
「許せよ。何か食するものは無いかな。麻呂は藤原の左近衛中将実方である」
「何だィ。エー?売れ残りの内裏雛(だいりびな)みたいなのっぺりしたのが入って来たよ。冗談じゃないよ。エー、家(うち)にゃぁ季節はずれの雛壇に供えるものはないよ。あっちへ行った、行った、シッ シッ」
「見た目はそそるもんがあるのに乱暴なオンナじゃな。しかし、腹がへったナ。それでは隣のペットショップの老婆の所へ行ってみよう。老婆ならやさしいじゃろう。老婆心というくらいだからな」
「これこれ、麻呂は腹がへりま(練馬)の大根じゃが、ナにか食するものを所望じゃ」
「これはこれは、まずいシャレでうまいことをおっしゃるお方でございますね。難儀でございましょう。ここは都と違ってフランス料理やイタリアン、マンカン全席などはありませんが、桃の節句が過ぎたばかり。丁度余った桃がありますので、これでもお召上りください」と太郎ばあさんが大きな桃を差し上げました。
「ヘェーなんだね。随分と落差があるね。ま、しかし食いもンがあるだけマシだ」「ムシャムシャ。ムムッ、なかなかの美味じゃ。誉めてとらすぞ」
「ハハァー恐れ入ります。で、お公家様はこれからどちらへ?」
「ウム、麻呂は帝のご命令でこれからさらにみちのくの奥の奥のどんづまりまで一人で行かねばならぬのじゃ。つまり、『みちのくのくのくの一人旅』じゃな。ついては、もし麻呂の身に何かあれば、これも何かの縁じゃ。きっと何かに化けてそちの家に帰って参るぞ」。 帰ってきてもらっても困りますが、そこは数百年も生きた太郎ばあさん、如才なく「あぁあぁ、それはそれはお難儀なことでございますね。えぇえぇいつでもお帰りください」と送り出した。
さて、旅路を急ぐ実方中将。どうにも体の具合が悪くなりとうとう山道で動けなくなりました。
「あーあぁ麻呂もとうとうみちのくのみちばたで死ぬのか。今ごろ帝はどうしているだろうか。 麻呂のことを思い出してくれるかなぁ。時世の句でも読むか。『帝(みかど)はいまごろ醒めてか寝てか 思いだしてか 忘れてか…』これじゃまるで都都逸だよ。そうだ、スズメになって都へ帰ろう」。と決定してこの世を去りました。そのとき口から3条のうっすらとした煙が出たとみるとそれはスズメに変わり都めざして南へと飛び立ちました。
さて、その実方スズメですが本体が病気だったところに糖尿病の気がありましたものですから、とても都まで体が持たず、以前世話になった太郎ばあさんのところに緊急着陸いたしました。
太郎ばあさん「おや、まあ、可愛いスズメだこと。それにしても随分とのっぺりして。これは前に立ち寄られたお公家さんの生まれ変わりに違いない。お気の毒にお亡くなりになったんだね。これも何かの縁、以前にもカメを助けていい思いをしたことがあったから、1度あることは3度あるという。今度はこのお公家スズメに親切にしてあげよう。また、何かいいことがあるかもしれない」。どうも人間の品格というのは何年経っても直らないようで。
「さあ、スズメさん、おなかも空いただろう?ン、ヤキトリでも鳥雑炊でも作ってあげるよ。ナニ、食い合わせがよくない? そうかもね。まあ、ゆっくりしていきなさい。着ているおべべも大分汚くなったね。着替えは持ってないの? ナニ? 着たきりスズメでこれしかない? 間違いないわねェ。それじゃぁね、わたしが布団の切れっ端で着物を縫ってあげよう」
いろいろと親切にしているうちに、実方スズメもすっかり元気になりました。元気を回復するとこの実方スズメ、出自は公家で女を追っかけるのが仕事みたいなものでしたので、やはり体力がつくと精力もついてくる。ついつい昔のクセでお隣の色気たっぷりの若後家さんに言い寄ったりするようになります。
この実方スズメ、なかなかの手管の持ち主で、まっすぐ後家に言い寄らず、桃をくれた太郎ばあさんにまとわりついて、後家さんをじらします。「浮気スズメは後家さんじらし、梅干さけて桃(モモ)に鳴く」なんてネ。そうこうするうちに後家さんも実方スズメに餌を与えたりするようになり、だんだん深い仲となっていきます。つまり、若いスズメですな。
しかし、実方スズメは何しろオンナに目が無い方ですから、後家さんだけでは満足できず、そのうちに里の若いオンナ達にも手を出すようになった。何しろ本人は空を飛べますので何時でも何処でも好きなところへいける。そんな若いツバメならぬ若いスズメであちこち飛び回っているうちに元の後家さんをないがしろにするようになってしまいました。「あついあついと言われた仲も 三月せぬ間に秋(飽き)が来る」というように、段々二人の間も冷えてまいります。
ある日、里のオンナと逢っているところを後家さんに踏み込まれます。
「アンタ! 私というものがありながら、また浮気して。エーッ、この間は何て言ったィ。『すずめ百までワシャ99まで 共に白髪の生えるまで』なんて言っておきながら。 クヤシーッ、おのれ、こうしてくれる!!」と持ってきたハサミで実方スズメのアソコをチョッキンと切り取ってしまった。それ以来、スズメは自分の一物を探して「チョンチョン」と鳴くようになったということでございます。マ、あまりアテにはなりませんが。しかし、これがホントの「下切りスズメ」でございます。
シタを切られたスズメは恥ずかしくてこのままでは都へ帰ることもできませんので、チョンチョンと泣く泣く、スズメのお宿のある新潟の方へと飛んでまいります。
さあ、太郎ばあさんはそんなこと知らないから急に居なくなってしまった実方スズメを探し廻ります。「スズメのお宿は何処じゃ」と言ってあちこち竹をたたいて探します。これはなんです。昔から梅にウグイス、スズメには竹と相場が決まっております。「雪をかぶって寝ている竹を 来ては雀がゆりおこす」という位ですからナ。
そしてようやく太郎ばあさんが実方スズメのお宿を探し当てると、実方スズメもすっかり感激して大歓待です。太郎ばあさんもすっかり喜び、「ヘェー、 スズメの隠れ里ってのは結構不便だと思ったけどなかなかいい所だねェ」「はい、スズメば都(住めば都)というくらいですから」
さて、太郎ばあさんはそこで、実方スズメ達から下にもおかない接待を受けまして帰りには大きなつづらを土産に持って帰ります。
「あヤァー、またもらっちゃたよ。お土産を。前には開けたらケブが出て、ばあさんになっちゃったから、こんど開けたら灰になっちゃうんじゃないかねェ。ケブが出て灰になるなんて世話ないねぇ」なんてェことをつぶやいていましたが、どうも中が気になってしょうがない。じゃあ、ちょこっとだけ見ようと恐る恐るつづらの蓋を開けると中にあったのは…
ちゃんと入っていました。大判小判に金銀財宝が。ザックザックと。そして太郎おばあさんは、大金持ちとなりました。めでたし、めでたしィ。
イヤ、 まだ終わりではございません。続きがございます。
これを見た隣の若後家さん。「チキショー。あのスズメめ。アタシというものがありながら、あんなババアに土産をくれて。そうだ、アタシにも慰謝料ってのを請求する権利があるって誰かが言っていたョ。こうなりゃ、アタシもスズメのお宿に乗り込んでお土産をふんだくってこよう。四の五の抜かしたら、前はシタを切ったから今度は上のシタを切るぞと脅してやろう」 思うやいなや、流石ご婦人だけありまして直ぐに行動に移ります。先ず、隣の太郎ばあさんからスズメのお宿の場所を聞き出し、竹をたたきながらスズメのお宿に向かいます。
さて、若後家さんに乗り込まれた実方スズメも困ってしまいましたが、何しろ頭に来るとナンデモ切っちゃう相手だから怖い。ともかく、この若後家さんの我ままを聞いて一応歓待いたします。
さて、そろそろ頃合というときに、この後家さん「あーぁ、そろそろ家にも帰らなくちゃいけないいんだよ。そう言えば隣のばあさんは何か結構なお土産を貰ったそうじゃないかェ。アタシも土産はそんなもんでいいよ。エッ?ナニ?もうお土産はない?冗談じゃぁないよ。子供の使いじゃあるまいし、手ぶらで帰れるか!」と実方スズメの首根っこを押さえつけ頭をポカポカ殴りつけました。堪らず実方スズメは泣き出し「ひぇー許してください。今出せるのはこれだけです」
「なんだそれは?」
「ハイ、スズメの涙です」
これにて「下切りスズメの項」読み終わりといたします。
エー、さて今回は、タマ手箱を開けた浦島太郎がおばあさんになったところからお噺が始まります。
エー、おばあさんになった太郎は、その後、流れ流れて陸奥の国に行き、そこでペットショップを開きウサギや亀を販売しながら余生を送るようになりました。
そして、その隣には、歳の頃なら28-9で、影もピンク色をしてるというくらい色気たっぷりな若後家さんが住んでおりました。
ある日、帝の勘気を蒙り都落ちしてきた、つまり左遷された藤原の左近衛中将実方(さねかた)というお公家様が、この陸奥の国へとやってまいります。 この実方というお方は大変和歌の道に秀でたお方でございますが、なかなか色の道にも達者で、一説には色恋沙汰で都から放逐されたという噂もございます。また、死後スズメとなって都へ帰ったという逸話もございます。
「あーぁ、まったく陸奥ッてとこはホントに田舎だね。山じゃ狐にだまされて道に迷うわ、さっきは猫に折角昼餉(ひるげ)に食しようと思った焼き魚を取られるわ。 ンとに『狐にゃだまされ猫にゃとられ ニャンでコンなにへまだろう』って麻呂のことだね。 それにしても昨日は疲れたね。あの花魁もなかなかオツなもんでしたよ。 『アナタに見しょとて結うたる髪を 夜中に乱すもまたアナタ』ってなことを言われてついつい長居をしてしまいましたョ。 『ゆうべしたのが今朝まで痛い 二度とするまい箱枕』なんてネ。それにしても腹がへったな。そうだ、そこの家で何か食べさせてもらおう」と、丁度目に入った若後家さんの家にのそりと入ります。この後家さん、亭主をナニで衰弱死させたというウワサがあるくらいのシトですから、ご主人が居なくなってイライラしており扱いもつっけんどんです。
「許せよ。何か食するものは無いかな。麻呂は藤原の左近衛中将実方である」
「何だィ。エー?売れ残りの内裏雛(だいりびな)みたいなのっぺりしたのが入って来たよ。冗談じゃないよ。エー、家(うち)にゃぁ季節はずれの雛壇に供えるものはないよ。あっちへ行った、行った、シッ シッ」
「見た目はそそるもんがあるのに乱暴なオンナじゃな。しかし、腹がへったナ。それでは隣のペットショップの老婆の所へ行ってみよう。老婆ならやさしいじゃろう。老婆心というくらいだからな」
「これこれ、麻呂は腹がへりま(練馬)の大根じゃが、ナにか食するものを所望じゃ」
「これはこれは、まずいシャレでうまいことをおっしゃるお方でございますね。難儀でございましょう。ここは都と違ってフランス料理やイタリアン、マンカン全席などはありませんが、桃の節句が過ぎたばかり。丁度余った桃がありますので、これでもお召上りください」と太郎ばあさんが大きな桃を差し上げました。
「ヘェーなんだね。随分と落差があるね。ま、しかし食いもンがあるだけマシだ」「ムシャムシャ。ムムッ、なかなかの美味じゃ。誉めてとらすぞ」
「ハハァー恐れ入ります。で、お公家様はこれからどちらへ?」
「ウム、麻呂は帝のご命令でこれからさらにみちのくの奥の奥のどんづまりまで一人で行かねばならぬのじゃ。つまり、『みちのくのくのくの一人旅』じゃな。ついては、もし麻呂の身に何かあれば、これも何かの縁じゃ。きっと何かに化けてそちの家に帰って参るぞ」。 帰ってきてもらっても困りますが、そこは数百年も生きた太郎ばあさん、如才なく「あぁあぁ、それはそれはお難儀なことでございますね。えぇえぇいつでもお帰りください」と送り出した。
さて、旅路を急ぐ実方中将。どうにも体の具合が悪くなりとうとう山道で動けなくなりました。
「あーあぁ麻呂もとうとうみちのくのみちばたで死ぬのか。今ごろ帝はどうしているだろうか。 麻呂のことを思い出してくれるかなぁ。時世の句でも読むか。『帝(みかど)はいまごろ醒めてか寝てか 思いだしてか 忘れてか…』これじゃまるで都都逸だよ。そうだ、スズメになって都へ帰ろう」。と決定してこの世を去りました。そのとき口から3条のうっすらとした煙が出たとみるとそれはスズメに変わり都めざして南へと飛び立ちました。
さて、その実方スズメですが本体が病気だったところに糖尿病の気がありましたものですから、とても都まで体が持たず、以前世話になった太郎ばあさんのところに緊急着陸いたしました。
太郎ばあさん「おや、まあ、可愛いスズメだこと。それにしても随分とのっぺりして。これは前に立ち寄られたお公家さんの生まれ変わりに違いない。お気の毒にお亡くなりになったんだね。これも何かの縁、以前にもカメを助けていい思いをしたことがあったから、1度あることは3度あるという。今度はこのお公家スズメに親切にしてあげよう。また、何かいいことがあるかもしれない」。どうも人間の品格というのは何年経っても直らないようで。
「さあ、スズメさん、おなかも空いただろう?ン、ヤキトリでも鳥雑炊でも作ってあげるよ。ナニ、食い合わせがよくない? そうかもね。まあ、ゆっくりしていきなさい。着ているおべべも大分汚くなったね。着替えは持ってないの? ナニ? 着たきりスズメでこれしかない? 間違いないわねェ。それじゃぁね、わたしが布団の切れっ端で着物を縫ってあげよう」
いろいろと親切にしているうちに、実方スズメもすっかり元気になりました。元気を回復するとこの実方スズメ、出自は公家で女を追っかけるのが仕事みたいなものでしたので、やはり体力がつくと精力もついてくる。ついつい昔のクセでお隣の色気たっぷりの若後家さんに言い寄ったりするようになります。
この実方スズメ、なかなかの手管の持ち主で、まっすぐ後家に言い寄らず、桃をくれた太郎ばあさんにまとわりついて、後家さんをじらします。「浮気スズメは後家さんじらし、梅干さけて桃(モモ)に鳴く」なんてネ。そうこうするうちに後家さんも実方スズメに餌を与えたりするようになり、だんだん深い仲となっていきます。つまり、若いスズメですな。
しかし、実方スズメは何しろオンナに目が無い方ですから、後家さんだけでは満足できず、そのうちに里の若いオンナ達にも手を出すようになった。何しろ本人は空を飛べますので何時でも何処でも好きなところへいける。そんな若いツバメならぬ若いスズメであちこち飛び回っているうちに元の後家さんをないがしろにするようになってしまいました。「あついあついと言われた仲も 三月せぬ間に秋(飽き)が来る」というように、段々二人の間も冷えてまいります。
ある日、里のオンナと逢っているところを後家さんに踏み込まれます。
「アンタ! 私というものがありながら、また浮気して。エーッ、この間は何て言ったィ。『すずめ百までワシャ99まで 共に白髪の生えるまで』なんて言っておきながら。 クヤシーッ、おのれ、こうしてくれる!!」と持ってきたハサミで実方スズメのアソコをチョッキンと切り取ってしまった。それ以来、スズメは自分の一物を探して「チョンチョン」と鳴くようになったということでございます。マ、あまりアテにはなりませんが。しかし、これがホントの「下切りスズメ」でございます。
シタを切られたスズメは恥ずかしくてこのままでは都へ帰ることもできませんので、チョンチョンと泣く泣く、スズメのお宿のある新潟の方へと飛んでまいります。
さあ、太郎ばあさんはそんなこと知らないから急に居なくなってしまった実方スズメを探し廻ります。「スズメのお宿は何処じゃ」と言ってあちこち竹をたたいて探します。これはなんです。昔から梅にウグイス、スズメには竹と相場が決まっております。「雪をかぶって寝ている竹を 来ては雀がゆりおこす」という位ですからナ。
そしてようやく太郎ばあさんが実方スズメのお宿を探し当てると、実方スズメもすっかり感激して大歓待です。太郎ばあさんもすっかり喜び、「ヘェー、 スズメの隠れ里ってのは結構不便だと思ったけどなかなかいい所だねェ」「はい、スズメば都(住めば都)というくらいですから」
さて、太郎ばあさんはそこで、実方スズメ達から下にもおかない接待を受けまして帰りには大きなつづらを土産に持って帰ります。
「あヤァー、またもらっちゃたよ。お土産を。前には開けたらケブが出て、ばあさんになっちゃったから、こんど開けたら灰になっちゃうんじゃないかねェ。ケブが出て灰になるなんて世話ないねぇ」なんてェことをつぶやいていましたが、どうも中が気になってしょうがない。じゃあ、ちょこっとだけ見ようと恐る恐るつづらの蓋を開けると中にあったのは…
ちゃんと入っていました。大判小判に金銀財宝が。ザックザックと。そして太郎おばあさんは、大金持ちとなりました。めでたし、めでたしィ。
イヤ、 まだ終わりではございません。続きがございます。
これを見た隣の若後家さん。「チキショー。あのスズメめ。アタシというものがありながら、あんなババアに土産をくれて。そうだ、アタシにも慰謝料ってのを請求する権利があるって誰かが言っていたョ。こうなりゃ、アタシもスズメのお宿に乗り込んでお土産をふんだくってこよう。四の五の抜かしたら、前はシタを切ったから今度は上のシタを切るぞと脅してやろう」 思うやいなや、流石ご婦人だけありまして直ぐに行動に移ります。先ず、隣の太郎ばあさんからスズメのお宿の場所を聞き出し、竹をたたきながらスズメのお宿に向かいます。
さて、若後家さんに乗り込まれた実方スズメも困ってしまいましたが、何しろ頭に来るとナンデモ切っちゃう相手だから怖い。ともかく、この若後家さんの我ままを聞いて一応歓待いたします。
さて、そろそろ頃合というときに、この後家さん「あーぁ、そろそろ家にも帰らなくちゃいけないいんだよ。そう言えば隣のばあさんは何か結構なお土産を貰ったそうじゃないかェ。アタシも土産はそんなもんでいいよ。エッ?ナニ?もうお土産はない?冗談じゃぁないよ。子供の使いじゃあるまいし、手ぶらで帰れるか!」と実方スズメの首根っこを押さえつけ頭をポカポカ殴りつけました。堪らず実方スズメは泣き出し「ひぇー許してください。今出せるのはこれだけです」
「なんだそれは?」
「ハイ、スズメの涙です」
これにて「下切りスズメの項」読み終わりといたします。