ボリショイ劇場 & シドニ-オペラハウス観劇記

元モスクワ、現在シドニ-赴任の元商社マンによるボリショイ劇場やシドニ-オペラハウスなどのバレエ、オペラ観劇記です

新国立劇場バレエ団『くるみ割り人形』 12月20日 初日

2009年12月22日 | Weblog

Nさんより新国立劇場バレエ団の牧阿佐美芸術監督の新製作の

くるみ割り人形の初日の寄稿を頂きました。

これは20日の初日に関するNさんの飽くまで個人的感想です。

なお写真は10月のドンキホーテの際に展示してあった今回のくるみ割り人形の説明です。

新国立劇場バレエ団『くるみ割り人形』

1220日(日) 初日

 新制作ということで、期待とやや不安も抱きつつ初日を鑑賞した。

 幕開けが大変斬新であった。

高層ビルを背景に携帯で話す人、

ブレイクダンスをする人、デパートの袋をぶら下げて帰途に付く人など

劇場から数分の場所にある新宿の風景が描かれていた。 

クララ役は伊東真央(まちか)さん、

終始元気一杯、天真爛漫なクララを好演していた。

瞳をくりくりと輝かせ、観ているだけで、心が浮き立った。

まだコール・ドのダンサーだが周りとは一線を画す華があり、

今回抜擢されたことに大いに納得がいった。

 金平糖の女王は小野絢子さん、

抑制のきいた、クラシックのお手本のような美しく正確なポーズを次々と見せ、

溜め息ものだった。

団員の中では一際小柄なダンサーだが、

シャンパンカラーに輝く衣装に負けぬ、

内面からにじみ出るようなオーラを放ち、

女王としての貫禄も十分だった。

ヴァリエーションは音楽を奏でるかのように

繊細で柔らか、

シンプルな振付をしっかりと魅せてくれた。

最終日のクララに益々期待するところである。

 

王子は山本隆之(りゅうじ)さん、

バレエにはさまざまな王子が存在するが、

くるみの場合は少女の夢の中に登場する完全無欠な人物という設定で、

難役中の難役であろう。

しかしながら、クララに対して姫君のように恭しく手を差し出したり、

抱き上げたりとする仕草といったら全く隙がない。

また、はしゃぐクララをずっとにこやかに温かく見守るなど

まさに絵本や夢の世界から飛び出した王子そのもの、

終始うっとりさせられた。

ねずみの王様と再び剣で対決する場面があるのだが、

そこでは逞しさを発揮し、

優しさと強さをバランスよく備えた理想の王子であった。

衣装が18世紀頃の貴族が使用していたようなデザインだったのだが、

(上は1幕が淡い青、2幕は紅色に近い赤、下は共に白)

よく似合っていた。

欧米を探し歩いても、彼ほどノーブルで美しい王子にはなかなか出会えないのでは、と改めて感じた。

 そのほか印象深かったのは以下の通りである。

 雪の女王(西山さん)

ふわふわと軽やかに舞い、

リーダーらしい威厳もあって魅力的だった。

 

トレパック

今回は男性3名の構成で、

バリノフさん、八幡さん、福田さんが務めた。

豪快なジャンプを次々と見せて拍手喝采であった。

 

もう一工夫ほしいと思った箇所もあった。

例えば1幕のパーティー場面、

以前より人数が減ってしまったように思われる。

また、子供たちの役を小柄、または研修生が演じていたが、

どこか迫力が足りない。

発表会の雰囲気を感じずにはいられなかった。

背の高いダンサーが演じると違和感があるとの意見もあるが、

以前のほうが磐石の技術で勢揃いした群舞を見せてくれていた。

女性ダンサーが演じる男の子もかなりはじけていて、

見応えがあった。

 ドロッセルマイヤーの衣装にも疑問が残る。

白い鬘が仙人のように見えてしまい、魔法を使う不思議でお洒落なおじさんというイメージと結びつかなかった。

このキャラクターの描き方で作品のセンスが決まるといっても過言ではないほど重要な役柄である。

公演の宣伝文句にもなっている「洗練」「スタイリッシュ」にもう少し近づけてほしい。

 不平もいくらか述べてしまったが、残りも全公演鑑賞予定なので

また新たな発見を期待したい。



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2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
ありがとうございます (バレエファン)
2009-12-22 23:36:39
管理人さん&Nさん
早速のくるみ割り人形の感想ありがとうございました。
これから行こうと思っていたところなので大変参考になりました。じっくり見てきます。
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コメントありがとうございました (管理人)
2009-12-23 19:40:08
バレエファンさん
コメントありがとうございました。
当方も是非見たい公演ですが今回は残念です。
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