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白鳥の湖を久しぶりに見ました。
ボリショイで1877年初演から1637回目グレゴロービッチ振付今回の2001年版で96回目という上演です。
1列目4400RUB(2万円ほど)というボリショイの中でも有数に高いバレエで最前列のチケットを買うには一寸気合のいる演目ですが何せオデットーザハロワ、ジークフリートーウヴァーロフ、そして更に悪魔Geniusをティスカリーゼという現在のボリショイではこれ以上望めないという言わばゴールデントリオの舞台だったためです。このようなトリオでの白鳥の湖は久しぶりの筈。多分ウヴァーロフが昨年の怪我から復帰してから初めての組み合わせだと思います。そして出来は期待に違わぬ素晴らしいものでした。
3スターがそれぞれ火花を散らす演技をしたのですから素晴らしい舞台にならないはずははありません。カテコ動画でお判りのようにカテコは何度も続きました。
さて肝心の舞台ですがザハロワの白鳥の表現力が更にUPしているように感じました。白鳥を感じさせる腕のしなやかな使い方、王子と初めて出合った時の驚き、震えそしてその中から愛情に変るさまの演技は見事でした。
ウヴァーロフは王子役にぴったりな正当派貴公子そのもの。
無精ひげを伸ばしてこの役になりきっていたティスカリーゼの悪魔役の演技も見事でした。
因みに男性ダンサーの靴が脱げるとかザハロワが黒鳥の場面で右耳のピアスが回転で飛ぶとかはハプニングはありましたがご愛嬌ですね。
カテコ動画 1 (一幕終了後 ティスカ及びザハロワ、ウヴァーロフ)
2 (一幕終了後ザハロワ、ウヴァーロフ)
3 (ニ幕終了後ティスカがジャンプして登場、ザハロワ、ウヴァーロフ)
4 (花束と二人)
5 (二幕カテコ続き)
6 (幕前)
観客にとっては美味しい舞台でした。
ニューリッチ風の親子や外国人も多く、
会場がざわざわしていて少々気が散りましたが、
それも吹き飛ぶ素晴らしさでした。
スペインの踊りで男性ダンサーの靴が脱げたのには
びっくりして息を飲んでしまいました。
久しぶりにご主人とのご観劇でしたね。
昨夜の舞台とは大違いでした。
後でUPしますが土曜と日曜の舞台が同じ料金では
土曜が美味しい舞台であったのは間違いなし。
非常に嬉しかったのが、動画1,2で、カテコでのウヴァーロフに、まだ舞台の余韻の覚めやらぬ表情がみてとれること。
ザハロワは愛らしい視線をウヴァーロフに投げますが、それを受け止めるでもなく、相好も崩さず、少し硬く悲しげな表情。
グレゴローヴィチ改訂新版「白鳥の湖」は断片的にしか内容を聞いてません。最後はオデットは失われ、ジークフリートが一人残される話だと。
この版は悲劇である上に、一緒に死ぬこともなく、自らの罪の結果のようにオデットはジークフリートから奪われてしまう。
この陰惨な気がするラストの台本設定に相応しい表情のカテコで、この版の初演第一キャストのウヴァーロフがこの作品をどう表現したか関心があったので、感慨深かったです。
作品は全てがジークフリートの頭の中の世界での出来事だというから、ザハロワの扮する姫は王子の理想の形象、夢の中の存在で現実の存在ではないのかと。ツィスカリーゼ扮する役は、王子とは別個の存在ではなく、王子の心の中の世界に邪悪な心が入り込むとか乗り移るとかそういう意味かしらと、とりあえず考えています。この役がわかりにくくて。そのうち日本でも上演されれば解説されると思いますが。
初演の第一キャストにヴォロチコワを迎えた際の批評は、(批評がどれほど正しいかはわかりませんが)私が読んだロシアのは、ヴォロチコワは充分過ぎるほどの成功を得たとは言いがたいものでした。
彼女の問題もありますが、賛否のある作品であり、ヴォロチコワが去ったボリショイで、グレゴロからもすでに作品は離れ、残された初演者のウヴァーロフがこの作品をどう発展させるか、と思っていたので・・。
今日はうまくいったようで、ちょっとほっとしました。
これはウヴァーロフのために振付られたと言えなくもない、珍しい役でもあるので(酷い役だけど)、ちょっとややこしい内容ですが、観客を納得させるものができたらいいと思ってました。
ザハロワの白鳥は毎度進化を見せていて目が離せないのです。去年11月白鳥の羽ばたきの腕の美しさ、ソロのポーズの洗練など際立ちました。
表現は「生硬」と言われるのが気になってました。ウヴァとのコンビ最後に見た’06年1月9日の「白鳥」もそういう評価はありました。オデットはそういう存在とも言えますが。
地のザハロワ、ウヴァーロフは互いに恋愛感情があるわけじゃないし(と思うんですけど?)ザハロワは女優ではないし、仕方ないかと思ってました。ウヴァーロフの怪我欠場で、ザハロワが戻ってきたウヴァに有難みを感じてくれたらその辺がカヴァーされるんではないかと期待してました。ここを見ると良化してそう。
動画3 ツィスカリーゼのジャンプ!
この軽さと滞空時間の長さは去年の日本公演初日にはなかったものです。あの時は、まさか手術の後遺症?と冷や汗が出ました。ウヴァだけでなく彼もまた怪我に泣き復帰して来た人。この日、会心の踊りを披露できた、そんな表紙写真の笑顔でしょうか。ツィスカリーゼもザハロワの手にキスして笑顔を返されてますね。20代当時の彼の旧版、悪魔は気品のある踊りで好きでした。
マトヴィとはまた違う、ゴールデントリオのトライアングル。動画堪能させていただきました。この版もそのうち変わるかもしれないし、有難いもんです。
チャイコフスキー「白鳥」は悲劇だったのを、最高権力者のスターリン(バレエ好き)が、「好きなプリマが舞台の上で死ぬのが可哀想なので」悲劇をハッピーエンドに変えた、という話です。それを元に戻すはずが、グレゴロ版は特異な悲劇にしてますね。
何時もながら専門的コメント大変参考にあります。ありがとうございました。動画じっくり見て頂いてありがとうございます。
最後のあっけない幕切れは初めて見る観客から拍子抜けの雰囲気がいつも感じられます。あれっこれで終わり?という感じです。
自分が見た作品ではないので恐縮ですが。
>あれっこれで終わり?
>拍子抜けの雰囲気
時おり聞く感想ですよね。
*意図的にそういう演出にしてる?ネラッてやってるのか
(異化、観客の意識に水を差す演出にしてる、とか夢から醒めたとか?)
*ジツは単なる失敗?か、
なんて考えたりしてますが。
<悲劇、喜劇の話>
この版、前評判では「ハッピーエンドを悲劇に戻す」という話でした。バランシンが既に「白鳥の湖は男と女が出会う話だ」と発言し、ラストは喜劇でも悲劇でもどっちでもいいのだと括り、結論の出てる話ではありますが。
ソ連時代は私たちは「ソ連の体制が、この作品について悲劇的な終わり方は教育上良くないので、人々が希望を持てるような終わり方にした」というまことしやかな説明を聞いていたのです。(無論当時から、チャイコフスキーは悲劇で書いたのに、変えてしまったという批判はありました。)私は一般人なので、真相を知ったのはソ連崩壊後です。「スターリンが舞台で好きなプリマが死ぬのが嫌だから」というのは。
えっ!?では、私はダマされていたのね~!(笑)と。「教育上よくない」って理由とえらい違うじゃない!!と。ただの権力者のエゴ。
ソ連との関わりでいうと、こういう、世間に流布されてることと、真相の差の話って、聞いた範囲でもいくつかあります。たぶんその「教育上よくない」「ソ連の体制が」といった言い方って、日本人に信じられやすいんじゃないかと。
<ソ連ネタ>
ソ連ネタが出てきたので、ついでに。
これは管理人様だけ向けで。以前にグラチョーワの故郷の話題で、宇治様がサジェストされてました。
ソ連時代は非公開の話だった為ですが、ロシアになってからはそれはなくなったようで、彼女の出身はNBSの公演パンフに出ています。(NBSはこういうことはきちんとしてるはずで、ボリショイ側に内容のOK取ってパンフ出してると思うので)他の呼び屋さんの公演パンフにも出ていたし。
ネットなので詳述しませんのでご興味ありましたら周囲の「ロシア通」の方に機会を捉えてひっそりお聞きください。尚この話を知らない人は、「ロシア通」としてはモグリです。(笑)彼女の出身地はあまり身体にいい環境ではないようなので、行かないほうがよさそうなのです。空気が悪いとかそういう意味です。日本にもそういう問題はあるけど、私は専門家じゃないからそれ以上のことはわかりません。
ロシアになり、非公開ではなくなった?としても、広める話でもないので、こんなもんで。
少し前に「ソ連ネタ」が出てきたので、ちょいご紹介してみました。
そんなわけで、あの国には色々あり。ロシアが好きな人にとっては胸の痛む話も。スケールが大きすぎてパスしたい話も。見る上で大きな視野も必要だと思っています。
真相と違い「ソ連の体制が」で通っていたのは、この言葉、便利で安易によく使われるんだと思ってます。日本で使われる場合、批判の対象がぼやけるので、言った人が何も負わなくて済むし。10年位おなじ言説聞いてると飽きてきますけど。ロシアでは権力を持ってる側が裏では民衆に嫌われていて、一説によるとウラーノワが人気があったのも権力者の好きなプリマのライバルだったからという話もあります。ロシア人はしたたかに感じる時もあるし、一本気な日本人とはかなり違うような気が私はするのですけれど。
ときにゴールデンテレコムの話はご愁傷様でした。かつてロシア語で仕事するようになった友人が、ロシア人の悪口を延々言ってたことを思い出しました。関わってみないとわからない腹立つ話が多々あるらしいですね。(笑)とりあえずいいかげんとか、愛想がないとか、どうでもいいような形式的なことをあれこれいってくるとか人によって多岐に渡って違う非難を言いますが、体験すると同じ思いをするんだと思います。でもロシア人と恋愛してる日本人にたまに出くわします。男性も女性も。
かなり脱線してしまいました。色々あり、ロシアといった所で。(いちいち驚いてると身が持たない)
ロシア生活のトホホ話でも、モスクワのレストランの話でも気が向くことを書いてくだされば。日本のテレビでも随分ロシアのことが出ますが、モスクワの金持ちの話がこのごろ目立つ。(貯金より使う人種みたい)
それでは。
今日は久しぶりにダンチェンコにも行きました。
マチネのクルミ割りだったんですが舞台装置も結構凝っていて楽しめましたよ。江口さんが出演されるかと期待していたのですがマチネではお見かけせず。夜の部に出られたのでしょうか。