誰でも自由なこころで 時代小説「かもうな」掲載中

江戸時代の仙臺藩髙橋家に養子に入った治郎の生涯を愛馬のすず風を通して描いた作品です。時代考は本当に大変でした。

かもうな 養子縁組 一之巻

2023年03月02日 20時11分43秒 | 日記

かもうな

養子縁組 二之巻

                   そのような時右衛門夫婦には一つの悩みごとがあった。

                   後を継ぐべき子が無かったのである。当時子が無ければお家断絶の

                   憂き目に合うのは必定だった。時右衛門はいう。

                   「武士たる者なんの未練があろうか、このまま野辺に朽ち果てようぞ

                   夢々この世に未練など残すでない」

                   諦め半分妻お豊に言い聞かせるだが、その寂しさだけは拭い切れなかった。

                   時は、延享元年(1744)、時右衛門四十歳、お豊三十五歳の頃である。

                   養子縁組の話は過去に幾度かあったがその度に破談となっている。

                   その理由はこうである。

                   これまでの養育費が欲しいとか、借金の保証人になって欲しいなど人の弱

                   みにつけ込む輩が多かったからである。

                   時右衛門はその度吐き捨てるように

                   「人を何だと思うのか、犬や猫でもあるまい」

                   律儀な時右衛門はその度に怒る。

                   その様ななか、兼ねてより懇意の白石藩二番座七の宍戸七郎右衛門からの

                   文が届けられた。

 

・・・続く・・・