小学館の日本古典文学全集を目当てに近くの古本屋さんに寄ってみたら、またしてもレジに例のおばちゃんがいた。売れ残りを眺めたら「松尾芭蕉集」と「狂言集」が目に止まったので買うことにした。おばちゃん、ちゃんとこちらのことを覚えていた。
「あのねえお客さん、先日、女性の学生さんが来て、この全集の一冊を500円で買って行ったんよ。」
「はあ、それが何か?この前は300円で売ってくれたじゃない。」
「だからさあ・・・。」
「ええからええから、まだ値札がついとらんじゃない。まっさらが500円だから、こんなに薄汚れたのは300円にきまっとるじゃない。」
「でもさあ・・・。」
「じゃ、次からきっちり値段をつけときんさいや。付けとららんからわしに値切られるんよ。割引券はいらんけん、2冊で600円にまけときんさいや。別に誰かが損するわけでもないんじゃろ?」
「ま、そりゃそうだけどさあ。」
「おりゃ頑固だから、一回300円で買った本は500円じゃ買わんよ。はい2冊分、600円。はよう袋に入れてえや。」
「しょーがないひとじゃねえ。」
この小学館日本古典文学全集のうち、更に平家物語全2巻・井原西鶴集全3巻・歌論集ほか2冊も買う予定がある。次には〆て7冊を2500円あたりで折衝してみることにする。本の価値が解らない古本屋さんが増えているのでこちらとすれば大助かりだ。相場でいうとこの日本古典文学全集の古本は、一冊1500円が相場。因みに新編日本古典文学全集の新本は1冊5000円くらいする。
呑む時には一晩ン万円も厭わないというのに書籍を求める際のこの執着。ラーメン代を節約して神田の古本屋街をさすらった、すきっ腹時代の怨念なのか?自分でも原因がよく解らない。思い通りの値段で手に入れた2冊の汚れをせっせと落としで磨き上げるのが楽しくて仕方がない。こんなわたしをK女史は今日もなじるのであろうか?