少しずつ日ざしが春めいてきて、庭の梅の蕾がぷっくりふくらんでいます。
店頭のバレンタインコーナーの装いに、なんだか心も華やぎます
バレンタインデーといえば、ネパールのジャングルで過ごしたことがあります。
その日、象の背に揺られながら、村を抜け、チトワン国立公園のジャングルを巡りました。
はじめて、野生の一角サイの群れ、川べりの巣穴からヌーっとすべり出してくるヌマワニ、夕陽をバックに葉の落ちた大木の枝に腰掛けるサル、羽を広げて道の前方に立ちふさがる立派な孔雀、たちに出会いました。
13年前のあの頃、イベントは盛り上がらなくっちゃ!と思っていたわたしは、バレンタインデーに備えて、前日のうちに、宿から歩いて行けるところに一件の感じのいいカフェを見つけておきました。
といっても、川の対岸はジャングルで、こちらは現地のタル―族の村と、簡素な宿泊施設と、象の遊び場になっている森くらいで、見たところお店らしきものは、ほかに飲み物やスナックを売る小さな売店くらいでした。
そして14日の夕食後、彼をお茶に誘いました。
通された二階のテラス席には、キャンドルが灯っていて、欧米の夫婦が二組座っています。
それまでタイ、インドと廻ってきて、きっとこういう旅行者向けのカフェならあると予想していたチョコレートケーキをメニューに見つけ、やった!と注文、ほろ苦いパウンドケーキみたいなそれをふたりで食べました。
だけど予定とちがったのは、お皿を運んできてくれたウェイターさんが、「英語の練習したい」と立ち止まり、「どこから来たの」「どこ行くの」と片言英会話が始まったことでした。
「えー、ロマンチックじゃなくなっちゃうじゃーん」
と、あまり話に身の入らないわたしでしたが、今は、そんなこんなも、固かったケーキも、タイ・バンコクの床屋から帰ってきて以来、そもそもそんなにロマンチックでもなかった彼の坊主頭も、ぜーんぶ香ばしい思い出です。
翌日は、ジープサファリの帰り道、ジャングルの真ん中でエンジンが故障して、助けが来てくれるまで1時間くらい立ち往生しました。
どんどん日が暮れて、とうとう真っ暗闇になり、その闇を貫いてかつて聞いたこともない鳥の雄叫びが間近に聞こえ、風が冷たくなりました。
彼が、グレーのフリースを脱いでかけてくれました。
オープンカーに乗ったガイド2人とわたしたち4人の旅人は、安全のためににぎやかに声を出していたほうがいいと、声高らかに話し、笑い合いました。
宿の隣のコテージに泊まって、一緒に参加していたオランダからきたカップルは、彼が朗らかな歴史学者で、彼女はリンダさんという可愛らしい舞台女優さんだったので、彼女が時々、声量のある美しい声で母国語の歌を口ずさみました。
車のハイビームに加え、装備してあった大きなライトで前後左右を煌々と照らし、急ごしらえのちいさなお祭りのようでした。
それでも、当日の朝、ガイドさんから、
「早朝に出発したジープにサイが突進してきたので、そのグループは途中で引き返しました。あなたたちは参加しますか?」
と、意思確認されていたので、
「ああ、サイもトラもヒョウもこないでね。。」
と内心に秘めていた緊張感は、ついにレスキュージープが到着した時、歓声と拍手にとって代わりました。
「後になれば、こういう経験がいい思い出になるのよ!」
わたしたちを陽気なメロディーで包んでくれていたリンダさんが、ニコニコしながら言ったのは、ほんとうでした。
かうんせりんぐ かふぇ さやん http://さやん.com/
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バレンタインデーといえば、ネパールのジャングルで過ごしたことがあります。
その日、象の背に揺られながら、村を抜け、チトワン国立公園のジャングルを巡りました。
はじめて、野生の一角サイの群れ、川べりの巣穴からヌーっとすべり出してくるヌマワニ、夕陽をバックに葉の落ちた大木の枝に腰掛けるサル、羽を広げて道の前方に立ちふさがる立派な孔雀、たちに出会いました。
13年前のあの頃、イベントは盛り上がらなくっちゃ!と思っていたわたしは、バレンタインデーに備えて、前日のうちに、宿から歩いて行けるところに一件の感じのいいカフェを見つけておきました。
といっても、川の対岸はジャングルで、こちらは現地のタル―族の村と、簡素な宿泊施設と、象の遊び場になっている森くらいで、見たところお店らしきものは、ほかに飲み物やスナックを売る小さな売店くらいでした。
そして14日の夕食後、彼をお茶に誘いました。
通された二階のテラス席には、キャンドルが灯っていて、欧米の夫婦が二組座っています。
それまでタイ、インドと廻ってきて、きっとこういう旅行者向けのカフェならあると予想していたチョコレートケーキをメニューに見つけ、やった!と注文、ほろ苦いパウンドケーキみたいなそれをふたりで食べました。
だけど予定とちがったのは、お皿を運んできてくれたウェイターさんが、「英語の練習したい」と立ち止まり、「どこから来たの」「どこ行くの」と片言英会話が始まったことでした。
「えー、ロマンチックじゃなくなっちゃうじゃーん」
と、あまり話に身の入らないわたしでしたが、今は、そんなこんなも、固かったケーキも、タイ・バンコクの床屋から帰ってきて以来、そもそもそんなにロマンチックでもなかった彼の坊主頭も、ぜーんぶ香ばしい思い出です。
翌日は、ジープサファリの帰り道、ジャングルの真ん中でエンジンが故障して、助けが来てくれるまで1時間くらい立ち往生しました。
どんどん日が暮れて、とうとう真っ暗闇になり、その闇を貫いてかつて聞いたこともない鳥の雄叫びが間近に聞こえ、風が冷たくなりました。
彼が、グレーのフリースを脱いでかけてくれました。
オープンカーに乗ったガイド2人とわたしたち4人の旅人は、安全のためににぎやかに声を出していたほうがいいと、声高らかに話し、笑い合いました。
宿の隣のコテージに泊まって、一緒に参加していたオランダからきたカップルは、彼が朗らかな歴史学者で、彼女はリンダさんという可愛らしい舞台女優さんだったので、彼女が時々、声量のある美しい声で母国語の歌を口ずさみました。
車のハイビームに加え、装備してあった大きなライトで前後左右を煌々と照らし、急ごしらえのちいさなお祭りのようでした。
それでも、当日の朝、ガイドさんから、
「早朝に出発したジープにサイが突進してきたので、そのグループは途中で引き返しました。あなたたちは参加しますか?」
と、意思確認されていたので、
「ああ、サイもトラもヒョウもこないでね。。」
と内心に秘めていた緊張感は、ついにレスキュージープが到着した時、歓声と拍手にとって代わりました。
「後になれば、こういう経験がいい思い出になるのよ!」
わたしたちを陽気なメロディーで包んでくれていたリンダさんが、ニコニコしながら言ったのは、ほんとうでした。
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