とうとう読みました。高村薫の「照柿」
合田雄一郎警部補シリーズの「マークスの山」に続く2作目、
3作目は「レディージョーカー」。
【人生の道半ばにして
正道を踏み外したわたくしは
目が覚めると暗い森の中にいた。】
<ダンテ「神曲」地獄編>
以上のフレーズが冒頭に書かれる。
あのストイックな合田雄一郎が、
ひと時の出会いの女佐野美保子に狂ってしまう。
その女は物語のもう一人の主人公で
幼馴染みの”野田達夫”の不倫相手。
ちょっとありえないような設定に
途中まではついて行けなかったが、
結末が近づくにつれて、
少しづつ納得させられてしまった。
それにしても、全編を覆うあまりの陰鬱な空気に、
何度となくこのストーリーから脱落しかけたことか・・・。
ドストエフスキーの作品を読んだことはないが、
「高村薫は日本のドストエフスキーである」と、
文庫版解説の沼野充義氏は言う。
複雑な筋書きなので、
物語を順序だてて書くことなどとても出来そうもないが、
作者はわずか数日の出来事を、
二人の主人公の行動と心理描写とで克明に描く。
その一場面一場面があまりに暗く、
陰鬱な空気の中に表現されてゆく。
このシリーズの主人公でありヒーローであるはずの合田が、
少年時代の暗い想い出を引きずる人格で
屈折した心の闇を抱えている事が徐々に明かされる。
無二の親友で、かつての妻「貴代子」の双子の兄である
「加納祐介」との友情も、
何とも言えず救いがたい感情の中に漂っている。
野田達夫という人物は、不思議な描かれ方をしている。
少年時代からの不良で、
成人するまでは幾度と無く警察の厄介になった人物だが、
太陽精工羽村工場に勤めて18年、
ベアリング生産熱処理工程の責任者として、
厳しい職場管理を徹底する律儀な職長である。
冷えた夫婦関係ではあるが、
一児の父としてつつましい家庭も営んでいる。
危険な要素をはらんだ性格ながら、
仕事への忠実さは群を抜く人格として描かれる。
しかし彼の職場では、
老朽化した古いガス変成炉が不良品を生み出し、
家庭においては、
妻とのギクシャクした関係や思い通りにならない息子がいる。
後には美保子との不倫が妻の知るところとなり、
夫婦の危機を迎える。
そんな折に、
長期間音信不通であった父泰三の訃報がもたらされ、
気の進まぬままに葬儀に行けば、
生家の稼業を乗っ取ったかのような
叔父夫婦との確執がある。
そんなこんなで、達夫の心の歯車は順次狂って行く。
そんな折に雄一郎と達夫は18年ぶりでの再開をする。
葬儀の後に酒を酌み交わし旧交を温めるが、
弾みでの暴力沙汰ともなってゆく。
そして二人は、一人の女美保子をはさんで、
敵対し対峙する関係へと暗転する。
雄一郎も達夫も異常な心理状態の中で、
平穏な日常が終焉を迎え、
物語は悲劇的な結末へと突き進んでゆく。
そんな結末に至らざるを得ない、
幼児期の体験も次々と明かされる。
達夫は不眠の混濁した頭のまま、大
阪で再開できた美保子を階段から突き落とす。
その結果、美保子の魅力的な容貌は失われ、
植物状態の人間になってしまう。
雄一郎は、この事件への奇妙な絡みを疑われ、
警察社会の中で生き抜く上での、
大きな汚点を作るところとなってゆく。
人の心の中に潜む闇・・・。
実は、そんな闇は誰の心の中にも、
ひっそり横たわって存在するのかもしれない。
合田雄一郎警部補シリーズの「マークスの山」に続く2作目、
3作目は「レディージョーカー」。
【人生の道半ばにして
正道を踏み外したわたくしは
目が覚めると暗い森の中にいた。】
<ダンテ「神曲」地獄編>
以上のフレーズが冒頭に書かれる。
あのストイックな合田雄一郎が、
ひと時の出会いの女佐野美保子に狂ってしまう。
その女は物語のもう一人の主人公で
幼馴染みの”野田達夫”の不倫相手。
ちょっとありえないような設定に
途中まではついて行けなかったが、
結末が近づくにつれて、
少しづつ納得させられてしまった。
それにしても、全編を覆うあまりの陰鬱な空気に、
何度となくこのストーリーから脱落しかけたことか・・・。
ドストエフスキーの作品を読んだことはないが、
「高村薫は日本のドストエフスキーである」と、
文庫版解説の沼野充義氏は言う。
複雑な筋書きなので、
物語を順序だてて書くことなどとても出来そうもないが、
作者はわずか数日の出来事を、
二人の主人公の行動と心理描写とで克明に描く。
その一場面一場面があまりに暗く、
陰鬱な空気の中に表現されてゆく。
このシリーズの主人公でありヒーローであるはずの合田が、
少年時代の暗い想い出を引きずる人格で
屈折した心の闇を抱えている事が徐々に明かされる。
無二の親友で、かつての妻「貴代子」の双子の兄である
「加納祐介」との友情も、
何とも言えず救いがたい感情の中に漂っている。
野田達夫という人物は、不思議な描かれ方をしている。
少年時代からの不良で、
成人するまでは幾度と無く警察の厄介になった人物だが、
太陽精工羽村工場に勤めて18年、
ベアリング生産熱処理工程の責任者として、
厳しい職場管理を徹底する律儀な職長である。
冷えた夫婦関係ではあるが、
一児の父としてつつましい家庭も営んでいる。
危険な要素をはらんだ性格ながら、
仕事への忠実さは群を抜く人格として描かれる。
しかし彼の職場では、
老朽化した古いガス変成炉が不良品を生み出し、
家庭においては、
妻とのギクシャクした関係や思い通りにならない息子がいる。
後には美保子との不倫が妻の知るところとなり、
夫婦の危機を迎える。
そんな折に、
長期間音信不通であった父泰三の訃報がもたらされ、
気の進まぬままに葬儀に行けば、
生家の稼業を乗っ取ったかのような
叔父夫婦との確執がある。
そんなこんなで、達夫の心の歯車は順次狂って行く。
そんな折に雄一郎と達夫は18年ぶりでの再開をする。
葬儀の後に酒を酌み交わし旧交を温めるが、
弾みでの暴力沙汰ともなってゆく。
そして二人は、一人の女美保子をはさんで、
敵対し対峙する関係へと暗転する。
雄一郎も達夫も異常な心理状態の中で、
平穏な日常が終焉を迎え、
物語は悲劇的な結末へと突き進んでゆく。
そんな結末に至らざるを得ない、
幼児期の体験も次々と明かされる。
達夫は不眠の混濁した頭のまま、大
阪で再開できた美保子を階段から突き落とす。
その結果、美保子の魅力的な容貌は失われ、
植物状態の人間になってしまう。
雄一郎は、この事件への奇妙な絡みを疑われ、
警察社会の中で生き抜く上での、
大きな汚点を作るところとなってゆく。
人の心の中に潜む闇・・・。
実は、そんな闇は誰の心の中にも、
ひっそり横たわって存在するのかもしれない。
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