夢に引く弓  大野鵠士 【獅子吼982号(2021年2月)掲載】

2021年02月14日 | 俳句
【獅子吼982号(2021年2月)掲載 31句】
夢に引く弓    大野鵠士

                 【季語】   【時期】(参考)
言葉の矢もて玄帝を迎へ撃つ     玄帝     三冬(冬)
夢に引く弓もありけり冬椿      冬椿     晩冬
角打ちをしたし時雨の間なりとも   時雨     初冬(「角打ち」は酒屋の立ち飲み)
夜の色に山沈みゆく枯野かな     枯野     三冬
雑談は耳にただ音花八手       花八手    初冬(八手の花)


天狗の羽団扇結論などはなし     天狗の羽団扇 初冬(八手の花・・面白い季語です)
冬の日を吸う土昔城の土       冬の日    三冬
腹鼓打つ音に似て小夜時雨      小夜時雨   初冬(時雨)
無精髭ばかり伸びたる漱石忌     漱石忌    仲冬(12月9日)
穏やかに焼き討ちされし山眠る    山眠る    三冬


時雨とは天地結ぶ銀の糸       時雨     初冬
あれは大魚あれは恐竜冬の雲     冬の雲    三冬
うるはしく灯点るやうに帰り花    帰り花    初冬
侘助を侘しがらせて雨止みぬ     侘助     三冬
宝石のやうなクッキー十二月     十二月    仲冬(陽暦十二月)


義士の日や今日も塩分控え目に    義士の日   仲冬(義士会 12月14日)
一匹の蠅と仲良くなる師走      師走     仲冬・晩冬(陰暦十二月の異称)
冬の虹罪といふもの知らぬげに    冬の虹    三冬(傍題・しぐれ虹)
アクリルに心透けたる息白し     息白し    三冬
湯気立てや遠き昔の汽車思ふ     湯気立て   三冬(傍題・加湿器)


きのふ三つけふは四つ咲く姫椿    姫椿     初冬(山茶花)
短日や文字盤黒き掛け時計      短日     三冬
一陽来復てふ言葉温めむ       一陽来復   仲冬(冬至)
もの思ふ一日遅れの冬至湯に     冬至湯    仲冬(柚湯)
  オールズバーグ 急行「北極号」
北極行きの汽車の絵本を手に聖夜   聖夜     仲冬(クリスマス)


何故に目見哀しげに聖樹観る     聖樹     仲冬(クリスマス)
目薬の沁みる眼よクリスマス     クリスマス  仲冬
予備校の全階点り年暮るる      年暮る    仲冬(年の暮)
  言ふならば
忌はしきコロナ元年逝かむとす    年逝く    仲冬(行く年)
うつつなる国への旅や夢始      夢始     新年・上(初夢)
粥なんど欲る喰積を食い飽きて    喰積     新年・上


◆私の好きなベストフォー 健人選◆
時雨とは天地結ぶ銀の糸   ※しぐれとはあめつちむすぶぎんのいと
あれは大魚あれは恐竜冬の雲
一匹の蠅と仲良くなる師走
もの思ふ一日遅れの冬至湯に


※お好きな一句をぜひ見つけて下さい。

2 コメント

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好きな一句 (きりぎりす)
2021-02-17 07:38:29
と言う訳ではないのですが、「角打ち」などと言う風情は田舎暮らしの現在は無縁のものとなってしまいました。
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角打ちという言葉を (健人)
2021-02-17 16:11:00
知りませんでした。名古屋でも使う言葉でしょうか?私の電子辞書には広辞苑など3種類の国語辞典が入っているのですが、どれにも掲載がありません。仕方なくネット検索してみたら、元々は北九州が発祥の言葉だそうで、読み方は「かくうち」ではなく「かどうち」との事。広辞苑では最新の第七版で初めて採用され「酒を枡で飲むこと。また、酒屋で買った酒をその店内で飲むこと」と書かれているそうです。大曾根の「さのや」は角打ちの店だと初めて知った次第です。
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