~異様な写真に見えるようですが、今を盛りのコスモスです~
江戸幕府開府からかれこれ50年が経過した頃、
三代将軍家光の腹違いの弟で会津藩主「保科正之」に見込まれた、
安井算哲(=渋川春海(はるみ))が主人公です。
算哲は代々「碁打衆」として江戸城登城を許された家系に生まれ、
碁の腕前もさることながら、数学や天文学にも関心を持つ、まあ頭の良い人。
当時の暦は平安時代から820年間も使用されていた「宣命暦(せんみょうれき)」で、
保科正之はその暦がすでに2日間の狂いを生じていることを知っており、
算哲を見込んで新しい暦を作る事を命ずる・・・わけです。
詳しい話を書くとややこしいので、なるべくすっ飛ばしますが、
23歳の算哲は、先ず「北極出地(?)」という使命を与えられ、
60歳前後の二人の老人をリーダーとするチームで、
全国津々浦々を約1年半かけて、北極星の角度=各地の緯度、を計測します。
ここらあたりも大変楽しいお話で、
映画では二人の老人役を笹野高史と岸部一徳が演じています。
「北極出地」と「暦の作成」がどう繋がるのかは、私には分かりませんが、
そこからスタートして、約20年余りを費やして、
「大和暦(のちに貞享暦(じょうきょうれき))」という、
日本人の手になる初の暦が朝廷&幕府で採用されるに至るわけです。
そこに行き着くまで、いろいろなエピソードが出てきます。
数学道場への出入りを始め、そこで後の数学者関孝和との出会いがあり、
本業である「御城碁」の真剣勝負の話が出てきたり、
後妻となる女性(えん)との出会いも二転三転、波乱万丈の物語が続きます。
本題の「貞享暦」に至る前に、
保科正之も算哲も、中国「元」の時代に作られた「授時暦」こそ正しいと信じ、
いったん「授時暦」でお公家さん達との勝負に出るのですが、
あと一息のところで、日食予報の失敗により、それ見たことかと挫折を経験します。
しかし、春海はこれに屈せず、その後も観測を続け、
予報失敗の原因が、中国と日本の「経度の差」にある事をつきとめて、再チャレンジ!
公家勢力の中の味方「土御門泰富」との協力で、なんとか逆転うっちゃり、
旧慣墨守の公家勢力を駆逐して、「貞享暦」として採用されるに至ります。
作者の想像フィクションも勿論あるのでしょうが、手に汗物のお話でした。
時に春海は46歳、
その後、幕府天文方というポストに任命されてめでたしめでたし。
ぜひ、皆様にも一読をおすすめしたいと思います。
ところで、今年春から俳句をかじり始め、
旧暦(太陽太陰暦)と現今の新暦(太陽暦=グレゴリオ暦)の違いに興味を持ちました。
この小説を読んだのも、そんなことがあったため。
そして今は、岡田芳朗先生という暦専門家の本を、読んでいますが、
これまた面白く(細かいところはついてゆけない所も多々ありますが)、
「暦(こよみ)の話」にはまっている毎日です。続きはまた・・・・・。
※「暦ものがたり」角川ソフィア文庫
岸部一徳、いい役者です。悪人も善人も。
~やはり秋遠く高くに鰯雲~
~青春の想いを広げる秋桜~