星々の舟

2008年05月10日 | 読書
村山由佳さんの作品で、129回の直木賞受賞作。平成14年か15年?

ひとつの家族の物語で、6つの短編からなる、ひとつのお話。
それぞれの話の続きをもっと読みたいと思う時に、
別の話に移ってしまうが、少しづつ関わりを持ちつつ展開するので、
ひとつの長編小説として、奥の深い、感慨深いストーリーになっている。

題名と主人公を順番に並べると、
■雪虫・・・・・・・次男 暁
■子どもの神様・・・次女 美希
■ひとりしずか・・・長女 沙恵
■青葉闇・・・・・・長男 貢
■雲の澪・・・・・・孫娘 聡美(貢の長女)
■名の木散る・・・・ 父 水島重之

兄弟姉妹の年齢は、長男・次男・長女・次女という順。
長男と次男は先妻晴代の子供、長女と次女は後妻志津子の子供。
後妻の志津子とは先妻存命中から愛人関係にあり、
先妻が病気になった頃から子連れの住み込み家政婦として水島家に来た。

幼い頃から一緒に育った次男暁と長女沙恵とは、やがて深い間柄になるが、
それを知った両親から猛反対をされ、怒った暁は家を飛び出る。
本当の事情は兄から聞かされる。
暁はどこまでも思いを捨てられず、結婚し子供も出来た後に離婚をする。
沙恵は幼馴染との結婚に踏み切ろうとするが、やはり諦める。悲しい話・・。

父は過酷な戦争体験で受けた大きな苦悩を誰にも言えず一人で抱え、
そのトラウマが妻や子どもたちに大きな影を落とし、
それぞれが深い苦しみの中で、それぞれの人生を歩んでいる。
それでも、家族だけが持つ一種の暖かさが、最後には伝わってくる。

一人で抱え込まずにもっと話せばいいのに、と読者は思うが、
時代の価値観の違い、時代の環境の違い、勿論年齢の違いもある。
夫と妻の関わり、親子の溝、兄弟姉妹の微妙な関係、
祖父と孫の(確執のない)穏やかな優しさ。

そういった諸々がひとつひとつ丁寧に書き込まれているが、
それぞれの話が本当に過酷。特に、重之の戦争体験は読むのが辛い。
それにしても村山由佳さんの小説には犯される話が多すぎるように思う。
またーー、と思って途中でやめた本もある。


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