つづき
喉元へ上げるファスナー牡丹雪 珠子
〇(楊子)ファスナーの音、見上げる空などが想像できます。もう春ですね。
〇(カンナ)牡丹雪の季語がよいですね。
◎(幹夫)視点に共感。
〇 (多実生) 自然の行動、少しでも暖かく。
〇(瞳人)春の雪は寒くないけど
○(卯平) 早春と言えど牡丹雪が降る如月や弥生。そこで急いでジャンバーのチャックを喉元まで上げる詠み手。このままでもそれなりに読ませるが今一つ食い込みが欲しい。牡丹雪は共感。
〇(藤三彩)首筋にすきま風が入らないようにしっかりガード。気合が入っていますね
◯(道人)「喉元へあげる」の描写が俳諧的。
〇(めたもん)力みのない詠み振りがいいですね。「喉元」「ファスナー」「牡丹雪」などにより雪の句にかかわらず温かさがあります。
○(あき子)「喉元」まで上げないと寒いです。ファスナーをあげたとたん牡丹雪が舞ってきたように思えるところが素敵。
◯ (アゼリア) 寒いと言わずこういう風に表現できるのですね。
○(ちせい)まだまだ寒いので、ファスナーで寒さを防ぐ。
○(宙虫)なるほどと思った。牡丹雪もいい。
銀河系の星の一隅六つの花 道人
○(幹夫)大きな景の片隅を埋める六花が美しい。
◎(アダー女)銀河系のひとつである地球のそのまた一隅に雪が降っている。なんだか高い高いところから地球の一隅を眺めているような、そしてそこにはきらきらと雪の六角形の花が咲いているのがみえるようなメルヘンの世界を感じます。
○(あちゃこ)六花で「むつのはな」と読めるのでは。大系からの焦点化でいただきました。中谷宇吉郎は、雪を天からの手紙と言っていますね。
○(あき子)「一隅」という控え目な捉え方と、六つの花が響き合います。
地もの探す旅が好きです晩白柚 アダー女
〇(カンナ)晩白柚の季語がよいですね。
○(アネモネ)晩白柚がなかなかです。
○(餡子)小さい頃は全く知らなかった晩白柚を知ったのは10年くらい前でしょうか。その大きさに先ずビックリ。皮の厚さにびっくり。作者はこの旅でで会ったのですね。
◯(道人)晩白柚は秋季語なれど、肥後の地貌季語としてなら冬もありかと。
○(あき子)ばんぺいゆの音の心地良さが、七七五のリズムをまとめて着地しているように感じました。
(選外)(卯平)上五中七の答えを下五の季語「晩白柚」で答えを出しているのでは。下五が安定していないのでは。
(選外)(藤三彩)晩白柚(ばんぺいゆ)とはザボンの一品種だそう。
雪舞いの夕べ残りし雪灯り 仙翁
雪片の昂る夜灯町静む あちゃこ
◎(まきえっと)雪片の昂る夜灯の表現がいいですね。また対比もいいですね。
○(仙翁)夜の街の中の雪、景色が見えますね。
◯(道人)写真の景は、まさに「昂る」雪。夜灯にどんな思いを抱いているのだろう。町は静もるしかない。
箪笥倒ル秒差免れ阪神忌 瞳人
風巻く雪当てずっぽうのフルネーム 宙虫
◎(めたもん)「風巻く雪」のように曖昧な記憶。フルネームが違っていたときの言い訳は「雪でよく見えなくて」でしょうか。
アーケード街に地産の蜜柑売り アネモネ
○(泉)アーケード街の真ん中で蜜柑を売る。地域起し、地域密着で良いですね。
冬野菜屋根の高さに下を向く ちせい
肩の雪払う指先日暮れくる めたもん
〇(まきえっと)下五への展開がいいですね。
○(アネモネ)日暮れの雪のシーンがいかにもです。
◯(道人)粋な句。「指先」が繊細、「日暮れくる」で少し艶かしさも感じられる。
◯ (アゼリア)綺麗な指先が見えます。
○(ちせい)夕暮れ時は寂しそうです。
(選外)(卯平)この先に詠み手の発見があれば詩になるのではないか。
寒明けるテニス女性が好敵手 多実生
(選外)(卯平)「が」をどう読み解くか。ここでは他にも敵がいるなかでテニス女性だけが好敵手と読む。ではその場面はどんな場面か。テニスコートか。それでは態々「テニス女性」と言わなくても良いだろう。「寒明け」との関係で中七下五を読み解くにも迷路に迷い込む。
風神と連れ立ち帰る雪女 アゼリア
○(あちゃこ)早く帰って下さい。春の神々が追いかけてきていますよ。設定がユニークな楽しい一句。
〇(瞳人)きっと振られたのだね
〇(カンナ)物語がありますね。
○(アダー女)風の神と一緒に吹雪きを起こし、そして次の仕事場へコンビで行くようなこれもユーモア溢れる楽しい句です。
〇(めたもん)「風神:今年も頑張ったね」「雪女:また来年ね」会話が聞こえてきそうで楽しく愉快な句です。
◎(仙翁)風塵と雪女、とてもいい取り合わせですね。
○(ちせい)友達付き合いですかね、私は仕事付き合いだと思いました。
冬木の芽こころを込めて準備中 あき子
○(泉)もうすぐ花が咲きますね。生命の不思議を感じます。
○(アダー女)今回は比喩の句がとても多かったような気がします。春には素晴らしい芽吹きを見せられるように冬木の芽達は英気を養い今準備中。楽しみにしばらく待ちましょうか。
○(餡子)「こころをこめて」は何とかという居酒屋でしつこいくらいによく聞きますね。冬木の芽たちも、良い花が咲くように心の準備をしているのですね。
〇(藤三彩)如月に入ると河津桜や梅の花がちらほらと咲く。もうすぐ春が来る
◎(道人)雪や北風にも負けず)春の準備をしている冬木の芽に共感。「こころを込めて」とは中々云えない。
○(宙虫)最近「心を込めて準備中」という飲食店の看板をよく見る。面白い。
街灯の光滲ませ雪しまく 楊子
○(仙翁)写真の様子を良く捉えていると思います。
〇(まきえっと)情景が目に浮かびます。
〇(珠子)何気ないですが「光を滲ませる」という措辞に惹かれました。
○(アネモネ)寒々とした光景。得心です。
遠目から眺めるだけの冬野菜 まきえっと
◎(藤三彩)とりたてて何を買うということでもない。何せ寒波、大雪で野菜の品薄、高騰・・手が出ない
ホットウィスキーダニーボーイを聞きながら 泉
〇(楊子)かっこいい句です。今度ホットウイスキーを注文したくなりました。
〇 (多実生) 解放感、癒し方の一つです。
〇(珠子)雪の夜のホットウィスキーとダニーボーイ。実際にはCDやYouTubeかもしれませんが、ここは昭和の頃に買ったレコードとしたいところです。キスチョコでもつまみながら…?
◎(瞳人)これは旨そう、とろりときそうだ、忘れられないあのこ…
○(卯平)解りやすい句。舞台が揃っている。しかし、ホットウイスキーとの関係で「ダニーボーイ」では少々違和感はある。「ホットワイン」であれば「お利口さん」過ぎるとは思うが「ダニーボーイ」は似合うだろう。句材構成は幾分の違和感を感じつつ展開する舞台はなるほどと思う。
○(アネモネ)ダニボーイにしみじみです!
○(餡子)いやあーーーかっこいいですねえ。どなたでしょうか?
◎ (アゼリア) 至福の時間ですね。
○(宙虫)ダニーボーイいいです。できれば「ダニーボーイ」とかっこ書きにすると読みやすい。
弥高く斯くも哀しく雪の舞ふ 幹夫
〇(藤三彩)弥(いや)と上五は古文の格調。信長の『敦盛』幸若舞が舞えそう。「人間五十年 下天の内をくらぶれば、夢幻のごとくなり。」
○(あき子)雪の舞ふを描写するために、「弥」「斯くも」を使いこなして、哀しくも美しい情景が見えてきました。
(選外)(道人)「弥」は(いよいよ)ではなく(いや)と呼ぶのですね。「斯くも哀しく」が微妙ですが、何となく惹かれる句。
細雪恋慕のぬか床漬け難き 藤三彩
雪虫や暗い過去思い出す夜 カンナ
★今回投句が間に合わなかったとのことですが、卯平さんから選句評が届きましたので、あわせて掲載しています。ありがとうございました。
★今回の写真。
一月の寒波。熊本市内でも雪が舞った。
一枚目、熊本市の下通商店街。このあと街は雪になった。
翌朝にはうっすらと積雪。近くのテニスコートまで散歩した。
では、次回の句会告知をお待ちください。
一月は大変な大雪でした。しかし、雪国ではもっと大変ですから、想像も出来ません。広島も最近はやっと暖かくなって来ましたが、三寒四温です。それにしても、新型コロナは今後、どうなるでしょう?