2月も後半。北海道や日本海側では大雪です。
どうぞお気を付けてお過ごしください。
2月は28日までなのであっという間に3月ですね。
兼題:返
返球の逸れたる先や初桜 春生
〇(楊子)こんなところに咲いているという意外性がいいです。
春一番返事はイエスのプロポーズ 泉
○(卯平)良かった、良かった。春一番は如何にもめでたい。と同時に何処かに。。。
○(敏)おめでとう! と口走りたくなりました。
返し坂凍土古道と翳し絵か 吾郎
返し縫いがほつれる予感春の雪 宙虫
○(アダー女)返し縫いをしたもののなんか縫い目がほつれてくるのではというなんとも頼りなげな雰囲気。「ほつれる」と春の雪の儚さがピタリと。
パンケーキ返して二分春になる 楊子
◎(泉)何となくホノボノとした感じが良いと思います。
◯(ルカ)春の匂いと色。
○(餡子)明るいキッチン!明るい食卓!テーブルクロス!春ですね。
◎(宙虫)春が迫る気分が満載。パンケーキの温度や丸さが心地良い。わくわく感も。
〇(あき子)パンケーキの焼き上がりを待つ二分、春の気分を満喫したい。
○(まきえっと)トッピングには苺ですね。たっぷりのクリームと。
返信を惑ふ余寒の街にをり 卯平
◯ (アゼリア) 何の返信かといろいろ想像をしました。
田遊の地べた掘つたり返したり アネモネ
○(道人)この童心にとても惹かれる。
玉頭に駒音一歩冴返る 瞳人
○(吾郎)盤面は人生の縮図とか──山あり谷あり。
返信にコロナと春の雪のこと 敏
(選外)(道人)あるある感に共感。さらりとした詠い方がいい。
改札機に切符かしゃりと冴返る めたもん
カナリアの返す挨拶春きざす 道人
紐を解き今日を返却涅槃西風 まきえっと
◎(吾郎)返しちまえばこっちのもんでぇ。あたぁ寝るだけ、あらよっと。<今日を返却>が素敵!
〇(ちせい)「今日を返却」に惹かれました。
返事待つ間の昂りや春の月 餡子
○(敏)何の返事か読者に想像させるところがいいですね。
○(吾郎)春の月が居座ってくれてるので、そこまで切羽詰まった返事じゃないのがいい。冬なら──おぉやだ。
〇(春生)状況がぼやけていますが、気持ちは伝わっています。
寝返り打ちこの世に独り春の雪 アダー女
○(泉)歳を取ると、この感覚は良く分かります。
○(仙翁)なかなかしみじみとした光景ですね。
返照の夕日乱れる冬の湖 仙翁
○(道人)今回使いたかった「返照」がうまく使われている。
反り返る聖書の頁ヒアシンス あちゃこ
〇(藤三彩)聖書とヒアシンスの取り合わせ、まだ寒い日が続きますが温もりのある聖句があればグッド。
◎(楊子)宗教って不要不急なのか。重たいのか軽いのか。などと不謹慎にも思ってしまいます。ヒヤシンスの音もそんな感じ。
○(卯平)反り返る景は、例えば風でめくれている景だろうか。それとも古い聖書で反り返っているのか。しかし聖書の某頁だけが反り返っている景は見えそうで見えない。めくれているとすればヒアシンスとの上手く嵌まってはいる。
◎(ルカ) 取り合わせが絶妙。
〇(めたもん)意味ありげな「反り返る聖書」。少しクールなヒアシンスが見つめています。
〇(宙虫)この聖書に触れてきた人たちの心情を垣間見る。
〇(あき子)ヒアシンスの隣に、何代もの人々に読まれてきた年季のいった聖書だろうか。
◎(ちせい)聖書のページとヒアシンスが相和していると思いました。
◎(まきえっと)ヒアシンスがいいですね。
猫の恋返さぬままの文庫本 ルカ
○(卯平)と言う事は失恋したんだ。借りた本が文庫本で何処か高校生同士の恋の話し。
◯(道人)取合せが面白い。何かしら「未達成感」のようなものを感じる。
〇(めたもん)中七、下五と季語「猫の恋」との取り合わせの距離感と新鮮さが魅力です。
裏返るままの靴下合格す 珠子
○(アネモネ)おめでとうございます!お疲れさまでした笑。
○(泉)「裏返る」靴下のほうが、縁起が良いようです。
〇(楊子)あの子がねえ…だだっこだったのに大きくなったものだ。と感慨を以て大人が見ている句と読みました。
○(瞳人)受験日以来、ずっと裏返しで履き続けるおまじない? であろうか、そんなことと思いつつ、合格す、が力強い。
○(あちゃこ)育ちきれていないアンバランスな少年の姿が浮かぶ。それでも愛しい子。
○(アダー女)靴下が裏返しだろうが、シャツが裏返しだろうが(ここまではないか!)唯々合格への一途な願いと集中力!合格おめでとう!
○(餡子)男の子ですね。男の子の靴下についてはどこの家庭でもちょっとした問題。この子は全く頓着しない子なんでしょうね。でも合格!!おめでとう。
○(まきえっと)毎日裏返しに脱ぐ靴下と合格という非日常の取り合せがいいです。
(選外)(道人)昔は正にこういう受験生が多かったような気がする。時は移れど…
過ぎにける返却期間鳥帰る 藤三彩
初花やもう返せない本二冊 あき子
◎(餡子)桜の咲く頃になると思い出す人なんですね。そしてその人からお借りしていた本。それも2冊。俳句の本?私にもあります。尊敬していた師に「読んでごらん」と言われてお借りしたまま。9月の木犀の咲く頃逝かれました。
三十五年続く返済冴返る アゼリア
◎(アネモネ)兼題の「返」が見事に決まった一句だと思いまた。
○(泉)家のローン返済でしょうか?日本は家の価格が高過ぎますね。
○(瞳人)ローンは、早く返す、これに向かって努力する、これがみそです
〇(珠子)35年間は途方もない長さですが何とかなります。我が家の30年返済も何とかなりましたから。
〇(春生)本当に気の遠くなるような長さですね。季語が効いています。
返却日延ばされて居る春寒し ちせい
テーマ:高い
てっぺんの積木三角春兆す めたもん
○(アネモネ)構図がさりげなく決まっています。
○(卯平)積み木てっぺんに三角形の積み木を置くのは今の子らも一緒だろう。春の訪れを三角形に託す句。
春の山高い高いと子を揚げて 春生
○(餡子)懐かしい風景。子供のはしゃぐ笑い声にほっこりさせられます。柔らかい春の山との取り合わせが上手い。
日脚伸ぶ全部が同じようなビル まきえっと
◯(ルカ)着眼点がいいですね。
〇(ちせい)批評意識が有ると思いました。
(選外)(卯平)「同じような」の「ような」が余分では。「ビル」に作者の発見があれば選候補。
ぶらんこの空を離れてゆくふたり ルカ
○(道人)ぶらんこを空に向かって高く漕いでいる二人の少年少女。時間の経過とともにどちらかのぶらんこの漕ぎ方が小さくなってゆく。「空を離れてゆく」の措辞が二人の行く末を暗示しているかのようだ。ロマンあり。
○(仙翁)空を離れ、二人が離れ、面白いですね。
◎(敏)二人一緒に漕いでいるのでしょう。空に近づくときも離れるときも一緒です。
ロフテッド軌道恋にも春立つ日 アネモネ
○(敏)春立つ日ですから、この恋は今昇りつめているのでしょうね。
○(吾郎)計算づくか、はたまた成り行き狙いか。ま、春だし。
球音の空へ消え行く二月尽 瞳人
〇(珠子)コロナ禍で球音も球児の野太い声もなかなか聞こえて来ませんが、新学期には何とか聞こえてきてほしいものです。
競り勝った志功の版画余寒くる 楊子
〇(めたもん)オークションは冷静さを欠き競り上がってしまいがち。その後の気持ちが下五か。
◯ (アゼリア) 競り勝った喜びも束の間、支払いの現実ーなどと世俗的な事を考えてしまいました。
スノボーに皆の夢載せ空を舞ふ アゼリア
◎(瞳人)五輪ものではこれが1番だ! と
見下ろせば君は黒点鳥雲に 宙虫
◎(あちゃこ)黒点の断定が様々な思いを想像させる。すっきりとした景の描写が心地よい。
◎(アダー女)息子がオーストラリアのポートリンカーンという南の僻地にマグロの仕事で赴任していたことがあり、アデレードからは小さなプロペラ機で行かねばならなかったことを思い出しました。帰る時、空港まで送ってくれた、まだ独身の息子の姿が段々小さくなり、黒い点になっていくのが切なくて機上、アデレードまで泣き続けたことがありました。「鳥雲に」の季語がその時の切なさを一瞬にしてはっきり思い出させてくれました。私事を長々書いてしまい申し訳ありません。
○(餡子)加藤登紀子の「この空を飛べたら」を思い出しました。「ああ人はむかしむかし鳥だったのかもしれないね こんなにもこんなにも空が恋しい。」この作者も鳥になりたいのですね。私も。
高き枝に鳩が来て居る春の川 ちせい
スキーヤー勝利をつかむ大ジャンプ 泉
三高が理想の相手昭和の春 餡子
○(泉)今でも三高は理想でしょうが、現実は・・・?
(選外)(卯平)この句で「春」に季感があるかどうか。
山頂の一本松や鷹に雪 仙翁
人はみな高みを目指し卒業す 道人
誓子忌の空と宇宙の境界線 あき子
(選外)(卯平)中七下五は誓子の句柄とマッチしてはいる。しかし上五「誓子忌の」の「の」がココではキレているかどうか。
大志へと駆け上る坂木の芽風 あちゃこ
◯ (アゼリア) 勢いがあって今の季節にぴったりと思いました。季語も効いていると思います。
〇(宙虫)是非坂の上は春爛漫なことを願う。
〇(ちせい)駆け上がるのは自我と愛他主義であろうかと思いました。
昼月に触れんばかりに凧 敏
○(アネモネ)汀女さん真っ青!
◎(珠子)あのでっかいビニール凧でしょうか。このご時世に「昼月に触れんばかり」の勢いが嬉しいです。
◯(ルカ)高く高く舞いあがっている様子が、目に浮かびます。
〇(春生)思ったより高く上がりました。「昼月に触れんばかりに」がいいですね。
(選外)(道人)「触れんばかり」が言いえて絶妙。
直立のボーイソプラノ冴返る 卯平
○(あちゃこ)美しい歌声と季語がマッチしている。
◯(ルカ)季語がとても響き合ってます。
〇(めたもん)上五「直立の」はさりげないですが、中七と下五にうまく届いています。
◯ (アゼリア) 澄んだ綺麗な歌声が聞こえてきます。直立のが上手だと思いました。
廃業の湯屋の煙突春の雪 珠子
〇(藤三彩)銭湯が減少している高い塔を残したまま。
○(泉)確かに銭湯は少なくなりました。時代は変化します。
〇(楊子)錆びれたかんじの湯屋の煙突ににふんわりと乗る春の雪が侘しさを一段と高めます。
○(卯平)廃業の銭湯の煙突の景と春の雪の景で十分に叙情が伝わる。類似感は否めないが安心できる句。
○(アダー女)お風呂屋さん!銭湯!なんて懐かしい言葉。家庭に風呂があっても時々行くのが楽しかった。廃業してしまった湯屋の煙突に空から淡い春の雪。景がよく見えてきます。最近、また街の銭湯が人気とか。
◎(仙翁)昔、よく行った風呂屋、とっくに廃業しています。
○(まきえっと)銭湯かぁ。今はスパになってしまいましたし、煙突もないですね。春の雲があっています。
白銀の宙へ飛翔や歩夢の金 藤三彩
〇(春生)北京冬季オリンピックの活躍、素晴らしいです。
非のない妃高い相方ひいなの日 吾郎
〇(宙虫)なんか気位が高そうな、そんなおかしさ。
氷上の男神は高みへ高みへと アダー女
雑詠
かくし包丁入れ祖母に煮る春大根 アゼリア
〇(藤三彩)味がしみ込むように輪切りの大根に十字の切り口を入れる、柔らかく煮て高齢者が食べやすいように。
散り散りに歓声駆ける雪の壁 まきえっと
ハンガーの色は問わない鴉の巣 楊子
○(瞳人)烏は色が分からない、いや、そうじゃないんだ、巣作りの材料がないんだ都会では、その逞しさをほめよう
○(あちゃこ)たしかに。鴉の巣の類想句は多いと思うが、中七に生きる知恵を感じる。
◎(あき子)鴉は4色を認識しているらしいが、こだわらずに現実的な巣づくりをする鴉なのか。
間止みなく降りつ溶けゆく窓の雪 アネモネ
○(仙翁)よくある景色ですが、動きと静寂を感じます。
寄り添うか暗い俺らと買う橇よ 吾郎
〇(藤三彩)自らを「根暗という男」でも雪国の強さのある漢でもある回文。
○(あちゃこ)橇の中に寄り添うのは、誰だろう。
○(餡子)60年~70年代の映画みたい。
○(道人)雪国の素朴な男の孤独感がにじみ出ている。「暗い俺ら」が渋い。
○(仙翁)冬のオリンピックを感じさせますね。暗い老いらく、ですか。
〇(ちせい)橇と俺らの一体性を思いました。
○(まきえっと)北欧をイメージしました。雪が多いと気持ちも沈んだり暗くなるだろうな。
参道に踏まれし冬の蝸牛 仙翁
◯(ルカ)物語性を感じます。
◎(道人)冬に蝸牛は見たことがないが、見えていても気付かなかっただけかも知れない。人間世界と神の世界の間に人知れず消えた一つの命。「存在」とは何か、という重い主題をモノのみで表現して心に残る句。
山茱萸やつかずはなれずきのふけふ あき子
〇(楊子)ちいさいころから山茱萸をとりに行ったり遊んだりしたなあ。いまも帰れば会うけれど密接ではない、むしろいい関係かもしれない。ふる里はいいなあ。
〇(珠子)昨日と今日の関係は確かに「つかずはなれず」がぴったりだと共感しました。
〇(宙虫)微妙な時間、良くもなく悪くもなく日々が続く。山茱萸が支えながら。
○(吾郎)ひらがな大成功、赤い実の淡々とした日常…いいなぁ。
春迎ふ升一合と掛け蕎麦で 瞳人
○(アネモネ)ご一緒したいなあ笑。
○(アダー女)徳利ではなく一合の升酒ですね。盛り蕎麦でなく掛け蕎麦ですね。春は名のみの風の寒さですからね。しんみり良い句です。
神さびや無色無音の夜の雪 餡子
○(仙翁)雪の無色が面白いですね。
〇(あき子)無色無音という表現に、神さびの光景がリアリティをもって表現されている。
身上は山国暮し目刺し焼く 道人
○(瞳人)山国だからこそ、焼き鳥じゃないんだ、そこが面白いなあ
〇(宙虫)目刺し・・・。生魚より干物が好きだ。山国育ちは。
雛飾る魔法のように機嫌良く アダー女
石鹸玉不安の如き丸さかな めたもん
〇(ちせい)丸に不安を感じる。正円ではなくて楕円めいてくるからでしょう。
雪混り雨となりけり春の山 春生
染め髪と体格同じ梅ふふむ ちせい
パエリアにしよう二月の街角ピアノ 宙虫
〇(藤三彩)スペインの白米と魚介などを炒めた料理がパエリア。街角は海外だったのでしょう。
〇(楊子)あちこちに散見できるようになった街角ピアノ。今日はおしゃれに春の地中海の気分にさせる音が聞こえます。
〇(珠子)コロナ禍の中、この屈託のない明るさには救われます。たいていの街角ピアノは閉鎖されたままです。
○(アダー女)街角ピアノ、空港かしら?スペイン人が弾いていたピアノに「そうだ!今夜はパエリアにしよう。」となった作者の気持ち、健全です。
◎(めたもん)光増し来る二月の気分をカタカナの「パエリア」と「街角ピアノ」が奏で新鮮です。
◎ (アゼリア) まだまだ寒いけれど日差しが明るくなった二月にぴったりの明るい気分になれる俳句と思いました。パエリアも美味しそうです。
○(まきえっと)春に向かっての明るさを感じます。
多喜二の忌コロナに揺れる資本主義 泉
◎(藤三彩)まん延防止のなかでの雇止めや孤独死などがいわれる今日の資本主義。2月20日が三十歳にして亡くなった多喜二の命日。
◯ (アゼリア) 何を信じて生きればいいのか心細い気持ちになりますが、コロナの終息後にまた考えようかと思っています。
冬ぼたん上野の山を目覚めさす 藤三彩
○(敏)枯れ一色だった上野の山が冬ぼたんによって目覚めたという。上野東照宮の牡丹園そのものをうたったのかも知れません。
〇(あき子)冬ぼたんは、上野の山を舞台にした歴史を連想させる。
冬蝶と初蝶の間畑を打つ 珠子
〇(あき子)畑を打つ人も蝶も、季節の循環のなかで生かされている実感が湧いてきます。
〇(春生)絵本の世界のようです。
逃亡のをとことをりぬ雨水かな 卯平
○(あちゃこ)昔をとこありけり。如何なる物語が始まるのか。
○(吾郎)<逃亡、雨水>でビタースイートなエンディングが伺えたりして
風船やこんなところで渡されて ルカ
○(アネモネ)いろいろ解釈が出来て想像の膨らむ味わい深い一句。
◎(卯平)風船に託された恋文。それを貰った作者の驚きと嬉しさ。青春の句そのもの。
目鼻口流れて春の雪だるま 敏
〇(春生)解けやすいですからね
料峭やグラスを弾く泡の音 あちゃこ
〇(珠子)集うことの叶わぬ金曜日の夜。ちょっといいシャンパンでZoom飲み会?外はまだ寒い。
○(敏)寒が明けたのですから、燗酒をやめてビールにしたのでしょうが、まだまだ肌寒いこの頃といった句意かも知れません。
〇(めたもん)何か飲みながら窓から見ているのでしょうか。音の向こうには寒さが残る春の景が。
☆☆次回をお楽しみに。
広島は厳しい寒さが続いています。雪が降るのは珍しい街ですが、今年はチラチラと舞っています。それにしても、北京冬季五輪が終わった途端に、ロシアのウクライナ侵攻。大国の闇は深い?