つづき
トンネルの傾斜なだらか梅三分 まきえっと
◎(ちせい)気温も徐々に上がり、トンネルの中にも暖かな気が。
トンネルの出口一瞬春の海 めたもん
◎(幹夫)下句「春の海」が佳い。
〇(瞳人)目の前が開けてすばらしい
◎(仙翁)トンネルの出口の句、いろいろありましたが、一瞬がいいですね。
◎(藤三彩)春の海が見えるのが心地よい
○(宙虫)一瞬で広がる海、暗から明への展開がいい。
離村碑の立つダム湖畔梅香る アゼリア
○(あちゃこ)ダム湖に似たような景を見た思い出があります。
〇 (多実生) 殆どのダムは住民の立ち退きの歴史有り。
○(仙翁)このような所は、多くありそうですね。
○(あき子)かつて人の暮らしていた賑わいを想像しながら湖畔を歩くと、梅が香るのに気づく。「ダム湖畔」が効果的です。
◯(道人)季語が生きている。
洞窟を抜ければ名湯梅香る 藤三彩
○(泉)良い温泉旅行ですね。
〇(瞳人)ゆきぐにならぬ梅の国
○(アダー女)暗い洞窟を抜ければ、そこは雪国ならぬいい湯と馥郁たる梅の香に包まれた世界だという極楽のような気分。明るさに満ちた一句!
梅の寺拝し御朱印いただけり 春生
○(アネモネ)そうとう御朱印が溜まったでしょうね笑
料峭や旧家に残る防空壕 道人
○(アネモネ)「防空壕」いかにもです。
○(カンナ)旧家には防空壕がありそうですね。
〇(春生)あの戦争はいつまでも忘れられません。
〇(まきえっと)裏山の中にありそうですね。
○(藤三彩)子供の頃に行った丘の斜面の防空壕からは薬莢が出てきた。旧家の防空壕とはどんなものだろう?
○(卯平)素直に鑑賞出来る。欲言えば「残る」は説明。料峭はこの句では生きている。
〇(めたもん)今に残る防空壕が季語と響き合い、戦争のあった過去へと思いを導きます。
◯ (アゼリア) また防空壕が必要にならないと良いと思いました。
○(宙虫)時代を生き抜いてきた家を感じる。
梅さくやいのち焔やして濃く淡く あき子
○(アダー女)「炎」ではなく「焔」ほむらと読むこの字には激しい感情や欲望で燃え立つの意があるようで梅の濃淡が花の命、感情の揺らめきで濃くも淡くも咲くという見方に新しさを感じます。
迷い入る山の隧道水温む 仙翁
〇(楊子)このトンネルはあまり怖くない感じがします。季語の力でしょう。
○(あちゃこ)旅ならではの楽しみの一つ。ぶらぶらいきますか。
それが又つかへて嬉し初音哉 瞳人
〇(珠子)つっかえつっかえだから愛おしい。上五が何ともおしゃれです。
〇 (多実生) 鶯の初音微笑ましい限りです。
○(あき子)全体に春の喜びがあふれています。
◯ (アゼリア) つかえ方が可愛らしいですよね。
◯(道人)初音の雰囲気と出会えた喜びが一茶調でよく伝わってくる。
友と歩を満を持したる梅日和 多実生
〇(まきえっと)女性三人で楽しそうですよね。
○(藤三彩)コロナで友達と会ったり旅行に出かけたりしていない。今年はなんとかしたい
○(宙虫)特に今年、解放感が少しずつ見えて来る。
長き闇抜け春色の曼陀羅図 餡子
〇(楊子)言ってしまった感がありますが何かから突き抜けたようですね。
〇(珠子)コロナ禍の闇を抜け本物の春。この先の春はまさに曼陀羅図のごとし。
○(あちゃこ)具体がなく抽象的な句ですが、世相と人々の思いを代表しているかのようです。写真からの連想が深い。
◎(アダー女)曼荼羅図の詳しい意味は難しくてよく分かりませんが、大日如来を中心とする極楽界絵図と単純に捉えると暗いトンネルの先は春色にきらめくこの世の春があると言うことでしょうか。人間、辛い暗闇の我慢の時を過ごしたあとには、曼荼羅図のような心穏やかな時期がきっと来るという解釈も含んでいるような気がしてほっとします。
〇(まきえっと)「曼陀羅図」への展開がいいですね。
○(卯平)春色だから曼陀羅図の景が明確。今回の課題写真からであれば「長き闇」は納得。
◎(宙虫)春色の光の広がりが伝わる。精神的に開放されたい。
◎(道人)洞穴・トンネル・隧道などの闇を抜けた瞬間の「光」の捉え方が今回の小麦句会では幅広く詠まれていて興味深かった。掲句の「春色の曼荼羅図」は出色。
隧道の向こう明るし猟期果つ アネモネ
○(藤三彩)猟友会の冬の狩猟が終わる。有害駆除の要請があれば高齢化した会員の献身は大変。
坑道にひかりの楕円涅槃西風 あき子
○(カンナ)季語が良い。取り合わせが素晴らしい。
◎(珠子)あの写真から、光の楕円と涅槃西風をチョイスする安定感には脱帽です。
〇(まきえっと)出口を「ひかりの楕円」と表現したところがいいですね。
○(仙翁)光の楕円、このように見えそうですね。
○「ひかり」と「涅槃西風」は近似の世界だろうが「坑道」と「ひかり」の対比で「涅槃西風」が生きている。
○(ちせい)うーん、いいと思いました。後光が差して居る様な。季語と合って居ると思いました。
◯(道人)この世のものとは思えない「ひかりの楕円」に「涅槃西風」の斡旋は巧い。
廃坑の出口は墓域梅香る 道人
○(アダー女)この句は「廃坑」の暗、「出口」の明、「墓域」の暗、「梅香る」の明と明暗の連続で最後に明の部分をもってきている巧みさを感じます。
◎(春生)「墓域」が発見。
○(餡子)此の廃坑の歴史を感じます。墓域とありますからきっと何か大きな事件があったのでしょう。梅の木だけは変らず馥郁と。
春の闇抜けて開ける明日かな 泉
面差しの貴やか肥後の雛かな アゼリア
◎(アネモネ)いいですねえ。一度ご尊顔を拝したい。
雑貨屋曲がるこわっぱ菜っ葉梅の花 宙虫
探梅の帰りはひとり梅を見ず 楊子
◎(めたもん)何を考えての帰り道でしょうか。探梅から帰る場面に着目したところが斬新です。
野遊やひとりぼつちのかくれんぼ 卯平
◎(カンナ)自由な発想がよいですね。
○(あちゃこ)喧騒を離れて野に遊ぶ。いいなぁ。かくれんぼが効いています。
〇(瞳人)さみしいね
〇(春生)情趣のある句です。
◯ (アゼリア)哀愁があって良いですね。
○(ちせい)孤高を持し、一人句作に。遊び仲間が帰って仕舞っただけなのかもしれませんが。
○(宙虫)心象の句として読むと、解放感のなかに切なさが見える。
梅咲けば草踏むごとにリズム増し ちせい
◎(泉)春が来ました。歩くのも躍動的になります。
儚さを百も承知の桜かな 幹夫
◎(卯平)その通り。今更儚さを桜に求めても万葉時代から今もってその通り。百も承知している。が、こう詠まれると改めて「人生は幻」と思わざるを得ないのが桜。
殿様のお忍び名家の雛祭り 藤三彩
雛の灯や嘗て名主の奥座敷 珠子
○(幹夫)古式ゆかしき佇まいが詠まれていますね。
○(藤三彩)由緒ある雛人形なのだろう。引き継がれて飾られる灯はほのぼのとする。
◎(あき子)写真を的確に捉えていてかつ詩情があって、私もこう作りたかったという思いが湧いてきました。
〇(めたもん)ちょっと薄暗い奥座敷に見える雛の灯。様々な過去も含め重々しい感じのするお雛様です。
○(宙虫)雛の灯が全てを語るようにゆらいでいる。
寮の名は変わらずにあり梅白し めたもん
○(アネモネ)昔の寮が変わらずにあってよかったですねえ!
○(カンナ)ノスタルジーに白梅が咲く。
〇(春生)学生時代にかえった思いですね。
ひっそりと雛人形の佇まい まきえっと
〇 (多実生) 男ばかりの兄弟で叔母の雛人形が思い出でした。
蛇穴を出て未来世の吾に遭う カンナ
上がり框上がれば雛のお出迎え アダー女
◎(瞳人)おお、これぞ、おひなさま
やわらかき風の細道雛の家 あちゃこ
○(アダー女)「奥の細道」ならぬ「風の細道」に雛の家が奥まった静かな場所にあり、そこにも春のやわらかな風が吹いているという長閑な感じがいいですね。
〇(春生)雰囲気が出ました。
◎(まきえっと)「やわらかき風の細道」から「雛の家」への展開がいいですね。
○(藤三彩)寒さが徐々に収まる三月のひな祭り。
〇(カンナ)上五、中七、下五の言葉の選び方がよいですね。
○(幹夫)優しい言葉で読まれ共感です。
○(ちせい)家が風に包まれ雛壇にも春の気が。
今月の写真
福岡県八女市のイベントに出かけた時の写真
一枚目・・・谷川梅林の「夢たちばな観梅会」の会場内のトンネル。トンネルの先に梅林が広がる。
二枚目・・・「雛の里八女ぼんぼりまつり」での八女市文化財「堺屋(旧木下住宅)」での一枚。正面に雛が見える。
三枚目・・・「夢たちばな観梅会」の会場の梅たち。まだ五分咲きくらいだった。
広島は次第に暖かくなって来ました。いよいよ春が来た、という感じです。WBCも始まることだし、スポーツ中継が楽しみです。