つづき
直向きや路地に凍てつく赤提灯 あちゃこ
◎(敏)赤提灯のたたずまいを「直向き」と見たところ、俳諧味がありますね。
通学や電線撓る冬の空 ルカ
落葉吹き込む駅前銀座商店街 餡子
〇(楊子)銀座と名がある商店街は日本にいくつもあるでしょう。みな寂しくなっているようです。
○(瞳人)ひと所を除いて、みな、さみしい、の代名詞みたいです
〇(藤三彩)「銀座商店街」が活きたように思います。因みに戸越銀座が新婚生活のスタート地でした。
〇(仙翁)駅前銀座の静かな様子がうかがえます。
〇(春生)どこからとなく吹き込む落葉に年の暮を感じます。
道草をして黄昏れの焼芋屋 道人
〇(藤三彩)道草をしたのはランドセルの児童ではなく作者。焼芋屋は昔風に流しのチリリン車かもしれない
○(あちゃこ)写真から懐かしい思い出が甦ってきました。掲句の景もその一つ。町の匂いや音を感じます。
○(アダー女)黄昏時、お腹が空き、寒い日には、焼き芋の香ばしい匂いの誘惑は切ない!
◎(ちせい)道草に愉快な含意があると思いました。焼き芋が浮かび上がって来ま
す。
牙を剥く壁画のゴジラ神無月 敏
〇(珠子)応募していきた市民が画いた壁画というところでしょうか。
〇(めたもん)季語「神無月」と上五・中七の「ゴリラ」との取り合わせの距離がいい感じです。
片端に寄り添う下校山眠る 藤三彩
◯(道人)「山眠る」で寒々とした午後の下校風景がリアルに立ち上がって来る。
○(泉)下校の列と交通事故。危険です。
◎(めたもん)少子化で下校する子の数も少なくなりました。それを見守る冬の山。優しい視線が魅力の句です。
御前の愚痴なぞ聞かぬおでん酒 卯平
〇(まきえっと)お酒を飲んで愚痴を言ったら悪酔いしそうです。
少年たちの目に僕はない十二月 宙虫
◯(道人)老いを実感しますね。逆も真なりで、もう少年の目には戻れない自分。十二月は人生の十二月と勝手読みしました。
◎(餡子)意味深であり、考えさせられた句です。この「僕」は、作者自身で有り、見えない過去の者達。12月が示唆している物とは。
◎(珠子)これに似たようなことを感じることはあるのに、言葉に再生する前に消してしまった私の感性との大きな違い。
◯(ルカ)発想が面白い。
(選外)(卯平)何故「少年」だけで断定しなかったのか。その断定があれば文句なしの選。
老妻は惣菜買って温め酒 泉
〇(藤三彩)燗酒のあてに数品をつくる。大根の葉としらす干しの炒めものや根菜の煮物とか。仲がいいナ。
○(瞳人)こんなおいしいお酒、ありませんよ、羨ましいです
居酒屋の木枠のドアに落葉降り ちせい
(選外)(卯平)句材からすれば詩へと昇華出来ると思った。読み下しの句としては不発では。
串打ちを終えて午後待つ焼鳥屋 アネモネ
〇(楊子)焼鳥屋の仕込みを詠んだところが目の付け所がいいです。
○(餡子)「赤目四十八滝」に主人公が焼き鳥の串打ちをする場面がかかれていたなあと想像が広がりました。この句の主人公にも何かドラマがありそうで。
〇(あき子)今日はお客さんどうかなと、期待と不安で待っているお昼時。
〇(宙虫)開店までの時間の捉え方がいい。
いつのまにか婦唱夫随やおでん酒 アゼリア
○(敏)羨ましい境地です。
熱燗や訛り飛び交う町長選 道人
〇(楊子)あの写真から飛んだ発想で畏れ入りました。熱燗、訛り、町長選と庶民の街が見えます。
○(泉)「カネが飛び交う」はダメですね。
○(卯平)市長選や県知事選では標準語での情報交換。ましてや熱燗の席で口角泡を飛ばす事もない。町長選だから標準語の中に訛り交じりの論議は似合うだろう。村長選となると訛りそのものでもっと粘りのある会話となるであろう。
〇(珠子)コロナが終息して、あちこちでこういう場面がみられるハズだったのに。オミクロン株の脅威。
○(あちゃこ)地方の小さな町。町長選の斡旋が面白い。酒を酌みつつ選挙戦略?選挙予想?
◯ (アゼリア) 何故か町の人達は選挙に燃えますね。
〇(春生)「訛り飛び交う」が地方の選挙を思わせ、滑稽感が出ました。
みかん箱の向うに昭和つづく路地 楊子
○(泉)シャッターの降りた路地。正しく昭和の風景です。
〇(珠子)昭和は私たちのふるさと。
○(あちゃこ)みかん箱には気付きませんでした。季語になる?「山積みのみかん昭和の続く路地」という所かな?
○(アダー女)みかん箱は昭和の頃もダンボール箱だったかしら?(余談ですが、1950年代から木箱から段ボールに変わったそうですね。)林檎は子供時代、間違いなく木箱でした。路地の商店街も懐かしい昭和の思い出です。
○(敏)ローカル色漂う路地に「昭和」が見えてきました。
◯(ルカ)みかん箱が効いてます。
〇(宙虫)びったびたの昭和感。これもいいかな。
(選外)(卯平)一つひとつ句材には魅力がある。その構成が句としての一行詩に至るには粗雑すぎるのでは。
灯を入れて師走を照らす赤提灯 まきえっと
◯(アネモネ)「師走を照らす」がなかなか。
○(瞳人)はらわたに、しみいるようなお酒のあじです、きっと
〇(珠子)中七がいいですね。
◎(アダー女)師走のなんと言うことなく気忙しい町が赤提灯の灯りで温かく活気に満ちた町になる様子が上手いですねえ。「灯を入れて」は今時は電球の灯りなんでしょうね。蝋燭の灯りなんて贅沢な想像なんでしょうねえ。
〇(あき子)赤提灯を主役にして、美しい師走の句になっています。
◯(ルカ)中七がいいですね。
〇(めたもん)中七「師走を照らす」により赤提灯から周囲へと広がる景。見る人の思いへ想像が膨らみます。
草臥れた靴と電線師走かな あちゃこ
〇(ちせい)冬の暮でしょうか、電線が空を走り。
新蕎麦を掻ひて尽きせぬ慕び酒 瞳人
おでんの匂い女狐くぐる縄のれん アダー女
◎(瞳人)そんなメギツネさんと一杯やりたいけど、ちと、こわい…
◎(まきえっと)「おでんの匂い」かあ。冬のコンビニを思い出してしまいました。不思議な世界観です。
◎(仙翁)おでんの好きなメギツネですか、面白いですね。
(選外)(卯平)面白い句ではある。但し冬の季語である「おでん」「狐」の重みが相互に凭れているので句としてはちぐはぐ感が。
お喋りの女が気づく虎落笛 めたもん
○(仙翁)おしゃべりな女ですか。面白いですね。
○(卯平)お喋りをしながら虎落笛に気づくこの女、隙が無い。男性にとっては強敵だ。
〇(ちせい)俳人だったのかもしれません。おしゃべりの女は句会に居たのかもしれません。
真ちゃんのその後わからずおでん酒 餡子
◎(アネモネ)心配ですね、わたしにもそんな友人がいます。
◎(楊子)個人的な名前がいいです。だれかは知らないけれどそんな常連さんがいたかもしれないという想像が膨らみます。
◎(泉)余りの発想の飛躍に唖然としました。
〇(珠子)我が家のお隣さんも、巨人大好き・お酒大好きの真ちゃんですが?
〇(まきえっと)こういうことってありそうですね。
◯ (アゼリア) 私の町にも忽然と消えてしまった人達がいますが、いつのまにかみな忘れます。
〇(あき子)真ちゃんを知ってるような気にさせて、面白い。
〇(めたもん)おでん酒での連絡のない旧友の話題。上五「真ちゃん」という固有名詞がよい味わいです。
◎(宙虫)居酒屋などでの常連たちの話が浮かぶ。コロナ禍のなか、こういう会話案外増えているのかも。
(選外)(アダー女)ちあきなおみの「唄ってよ 騒いでよ…しんちゃん 新宿駅裏紅とんぼ・・・」の歌詞が浮かんできました。
居酒屋の焼肉匂ふ歳の市 春生
見えている学校遠し雪もよひ あき子
○(仙翁)遠く歩く山間の登校風景に見えますね。
◎(ルカ)自分が小学生だったとき、実感した事があります。
〇(春生)特に、雪もよひの日は道のりが遠く思えてきます。
綿虫のとぶ訳電線垂れる訳 珠子
◎(あちゃこ)何とも言えぬ魅力ある一句。誰もが理屈など問わぬ対象へ向けた視線が秀逸です。見えないモノにもっと目を凝らしていかないと。
〇(ちせい)訳を考えると俳句的感性も磨かれる、そんな気がします。
雲低し傘を持たせる朝寒し 仙翁
★★
今月の写真
熊本県御船(みふね)町の古い商店街を歩く小学生たち
熊本市の子飼(こかい)商店街の居酒屋や通りの様子。昔の活気がなつかしい。
広島は最近、暖かくて良いのですが、師走の感じがしません。しかし、もう師走ですか。早いですね。新型コロナの感染は来年も続く。ところで、来年のプロ野球は新庄監督に期待しています。勝敗は別としても、プロ野球が変わるかも知れません。