住み慣れし色無き世界藤の雨 あちゃこ
〇(まきえっと)静けさと色無き世界が合っています。
○(道人)静謐な生活観がよく伝わってくる。「藤の雨」が佳い。
○(餡子)毎回写真3枚を通してのイメージ作りは、むずかしい のであるが、この句は一枚に固執せず三枚を通しての世界が見えてきた。
◎(泉)全体として、「色無き世界」という印象です。「斜陽」という感じがします。
ふらここのこどものお腹ちいらちら 瓦すずめ
住民もアパートも老いつつじ咲く 泉
○(藤三彩)育てた子どもが去って、老いの世代が残る郊外現象は深刻のようだ
○ (多実生) 初期の団地など住民との交渉で建て替えに手間どっている様です。
〇(瞳人)明るさはそこだけ、というような、感じですね
藤棚に土星が落ちた青い象 宙虫
◎(吾郎)この写真吟行力はすごい!
○(藤三彩)どひゃ!
○(敏)SFチックな想像力に一票。「青いぞー」って声が聞こえてきそう。
○(仙翁)なかなか面白い発想ですね。
◎(道人)確かに青い象は土星人のイメージです。発想が奇抜で季語との取り合わせも見事。
暮春かな人声のするマンホール 幹夫
◯(吾郎)雨上がりは特に(笑)
○(敏)マンホールにどなたか閉じこめられているのでしょうか……。ミステリーっぽい感じが、「暮春」の文字と相俟って雰囲気充分です。
○(仙翁)いかにも、マンホールから人声はしそうな。
○(春生)工事中。マンホールの暗闇から人の声がしている。春も終わりだなあという感慨がこみ上げてくる。「人の声するマンホール」 が面白い。
○(瓦すずめ)マンホールから人の声が聞こえてきたら不気味ですね。季節の変わり目だから余計に不気味なものが出てきそうな気がします。
○(アネモネ)何話しているんでしょうね。いかにも暮春。
〇(宙虫)足元から人の声が聞こえる。不思議な季節感がある。
藤の花だあれもいないすべり台 ルカ
○(ちせい)季語は「藤の花」。無人な風景に俳味があります。
○(藤三彩)シュールな風景だなあ。
○(とっきー)夕暮れの公園の寂しさが描かれています。賑やかだった昼間の後の静けさです。
○(瓦すずめ)藤の花とだあれもいないという言葉で、不気味な世界を作り出していると思いました。
○(幹夫)景のままが素直に詠まれており好感です。
○(泉)本当に誰も居ません。少子化の影響でしょうか。
惜春の空を映して潦 とっきー
◎(藤三彩)潦=(にわたづみ、にはたづみ)この言葉、教えていただきました
○(ルカ)上手に詠まれています。
薫風や腰を伸ばして受けとめる 呆夢
○(ちせい)季語は「薫風」。腰がしゃんとして居れば風も俳風に。
○(仙翁)薫風をしっかりと体全体で受け止めているか。
○(瓦すずめ)薫風を体で受け止める、そのたびに伸びをするのはいいなあと思いました
(選外)(宙虫)切れ字を入れずに「薫風を」としたほうが断然いいなと思う。まっすぐ立っていきたいですね。
にわたずみに一瞬の影夏つばめ アゼリア
○ (多実生) 雨後は虫が飛び交うので燕の活動に適します。一瞬がよく効いています。
○(道人)景が目に浮かぶ。静と動の取り合わせも巧い。
(選外)(瓦すずめ)素敵な光景です
電線の揺れを小さく抱卵期 アネモネ
○(幹夫)動物愛護が詠まれています。
笑い声の余韻が雨となるつつじ 宙虫
○(道人)「余韻が雨」が素敵。「つつじ」の明るさに何もかも収斂してゆく。
群れ咲きて一つ落ちたる躑躅かな 仙翁
行く春の手が出て首出てマンホール 敏
◯(吾郎)すごい景色かも(笑)
◎(呆夢)童謡にも似た楽しさがあるように思いました。
○(仙翁)マンホールからいろいろ飛び出てきそうな。
○(春生)工事中のマンホールから「手が出て首出て」と捉えたところがこの句の眼目。俳諧味のある句。
○(あちゃこ)マンホールから出て来る人は、盗っ人だったら面白いかな?ありそうで無さそうな発想が楽しいですね。
○(泉)マンホール内で仕事中でしょうか。ユーモラスな俳句だと思います。
○(アネモネ)4コマ漫画のようにユーモラス。
〇(宙虫)本当に何でも出てきそうです。
(選外)(瓦すずめ)過ぎ去っていく春と寂しい道のマンホールがあっているように思いました。
滑るたび幼児尻餅藤若葉 多実生
◯ (アゼリア) 可愛いあんよが目に浮かびます。藤若葉も効いていると思いました。
◎(瓦すずめ)藤若葉と滑り台で最後にお尻をつける子供の様子が非常にあってる気がします。
○(泉)微笑ましい光景だと思います。
藤の花親の手放す滑り台 藤三彩
○(呆夢)子が先に離すのか、親が思い切って離すのか、藤の花だけが知っているのでしょうね。
○ (多実生) わが子を心配する親心が見えます。
鈴蘭の匂へば音痴耳すまし 瞳人
行く春や無人の道のマンホール 道人
○(仙翁)無人の道にも、マンホール。人のたたずまいがある。
果てしないつつじ綴じつつ去なしては 吾郎
○(呆夢)つつじもあっという間に終わりました。別に去なしたわけではないのですが…
○(珠子)幼いころ、躑躅や皐月の花を藁蕊に通して冠を作って遊んだことを思い出しました。「つつじ綴じつつ」から、去なしの軽さが余計に感じられます。
春陰のシャッター固く閉ざされて ルカ
◯(吾郎)閉ざされたシャッターが語りかけることの多さ
◎(ちせい)季語は「春陰」。「固く」に人間的な意思さえ感じました。
○(餡子)何処にも団地が造られたあの時代。今や駅前商店街と同じ運命に。何とかもう一度活気をと、自治体も考えているようですが。
〇(瞳人)この寂しさ、どうなるのでしょう、この国は
春夕焼ご飯を告げる母の声 餡子
◎(アネモネ)懐かしい。「春夕焼」がやさしいですね。
藤棚に誘いたるや通り雨 仙翁
○(泉)何となく風流な俳句だと思います。
給食のチャイムかしらん藤若葉 珠子
◯ (アゼリア) 写真の光景が急にいきいきと見えてきました。
○(餡子)この写真のそばには小学校がある気配ですね。私もそんな感じがしました。
にはたづみ春光溜めて居るところ ちせい
〇(まきえっと)溜めていますね。
○(藤三彩)写真の景が映されています
◎(敏)正攻法で捉えた今回の写真吟行の秀句と見ました。イメージ鮮明です。
◎(春生)にはたづみのきらきらと輝くさまを「春光溜めて居るところ」 と捉えた感性が素晴らしい。
○(あちゃこ)確かに水の流れには光が宿っています。雨上がりのムッとした空気感も伝わってきます。
○(珠子)潦の句は多いだろうなと思いました。潦の句ではこの句の立ち姿に一番惹かれました。
○(幹夫)潦の景が佳く詠まれています。
にはたずみ皐の垣をとびとびに 春生
あめんぼが水面にうつる雲にのり 瓦すずめ
◯(吾郎)この捉え方は好き
◎ (多実生) あめんぼは飛んで移動出来るので、思はぬ所で見掛けます。雲にのりがきれいな表現です。
◎ (アゼリア) 童話の世界ですね。ストーリーを色々想像して楽しませて頂きました。
◎(仙翁)面白い発想ですね。そんなふうに見えるかも。
○(幹夫)好感の景が詠まれています。
花の香の満つる春昼通り雨 まきえっと
○(餡子)雨あがりの、静かな様子がわかります。3枚をうまくまとめたと思います。
藤垂れて通訳はなき象二頭 道人
○(ちせい)遊戯具は閑寂として。通訳の無き閑寂、侘しさ。
○(藤三彩)通訳がいないので意味不明。なんでここに象がいるの?
○(ルカ)着眼点がいいです。
春の雨窪みに作る水鏡 多実生
○(呆夢)春の雨は、同じ雨でも美しさを感じいます。水鏡の表面も輝く美しさがあるようで、きれいな句だと思います。
青嵐昔の賑わい連れ去りぬ 藤三彩
〇(まきえっと)音が感じられないですね。
○(とっきー)桜の季節の賑わいが過ぎて、青葉の季節になると人が遠ざかる。風が青葉を騒がせるばかりである。過去を振り返りながら、今を見ている雰囲気が良いなあと思いました。
○(あちゃこ)昔の賑わいに限定してるのは、少し気になります。無音の世界を上手く表現されていると思いました。
○(餡子)高齢化、少子化・・・。団地も空き室が増え、公園で遊ぶ子もいなくなった。
○(泉)本当に寂しい光景ですね。日本の少子化、斜陽化を感じます。
〇(宙虫)賑わいの名残も吹っ飛んでしまう青嵐。夏に向かう季節感とのギャップが面白い。
藤の花子らは高きを好みけり 春生
○(瓦すずめ)公園にある藤棚に咲いた花と、樹や遊具に登ろうとする子供の元気よさがあっているように思いました
雨上がる空の遠くにメーデー歌 アネモネ
◯ (アゼリア) いつからか今日が何の祝日かあまり意識しなくなってしまいました。「そうだ!今日はメーデーだ。」と思い出させていただきました。
○(ルカ)哀愁があります。
○(敏)無音無人の三枚の写真から、はるかな声を見いだしたところ秀逸と存じました。
○(春生)メーデーの歌声が聞こえてくるような、臨場感のある句。リズム感もある秀句。
○(あちゃこ)三十代の頃一度だけメーデーに参加した事を思い出しました。労働者という言葉は霞んでしまったと感じるのは私だけでしょうか?
◎(餡子)昔むかし、メーデーに駆り出されたことがあります。職場近くの公園でした。酸っぱい味のする句。
○(珠子)情けないことに、今年はメーデーのニュースを見て「ああ今日はメーデーの日だった」と思いました。ネンキン暮らしとはそういうものでしょうか。雨上がる空とメーデー歌との取り合わせがいいと思いました。
○(幹夫)メーデー歌が聞こえてきそうです。
◎(瞳人)こういう風景って、遠くなりました、しかし、確かにあったですね、かつて
(選外)(藤三彩)その昔、五月に付き物の光景でした。
躑躅咲きミラーに移る街路かな ちせい
○(とっきー)道路鏡に道が移っているという細かい観察がよろしいかと。
藤棚や羽音で揺らぐ房もあり 呆夢
○(ちせい)羽音で揺らぐとは上等な虚構だと思いました。実際に揺れている、それ「羽音」でと言い切る。そこに文学があるような気がしました。
○(道人)中七が繊細で秀逸。
○(アネモネ)これはまたリアル。羽音が聞えてきそうです。
(選外)(瓦すずめ)実際は、虫の羽音では、揺れないのだと思います。けれど、揺れている藤と羽音を結びつける歓声が素敵だと思いました。
引っ越して行ったあの子の夏帽子 餡子
◯(吾郎)記憶に残る一瞬の景
〇(まきえっと)ここ数年、麦わら帽子が流行っている感じがします。あの台詞を思い出しました。
◯ (アゼリア) もうあの娘の夏帽子が見られないなんて寂しいですね。
○(敏)一読あの奇妙な?童謡「サッちゃん」を想起してしまいました。
◎(珠子)童話のひとこまのような景、シンプルであたたかくて素敵です。
◎(幹夫)忘れ去られた夏帽子の景がくっきり浮かんできます。
◎(宙虫)夏帽子が決まっています。
(選外)(道人)「夏帽子」は多少気になりますが、「転校していったあの娘」と、勝手にノスタルジーを感じました。
ひよろり咲く沙羅見飽きず日暮れまで 瞳人
ゆく春やみちくさ映す潦 珠子
○(ちせい)季語は「ゆく春」。みちくさをくっている小学生でしょうか。何か抒情的な民謡的な・・
○(呆夢)みちくさをする子らの声が聞こえてきそうです。
○(とっきー)みちくさする子どもの恰好の遊び場となる水たまり。子ども達の笑い声が聞こえるような句。
◯ (アゼリア) みち草ー懐かしい言葉ですね。学校よりみち草の思い出のほうが鮮明です。
◎(ルカ)季語がきいています。
○(あちゃこ)みちくさをもってきましたか。ナルホド。放課後は、あちこちと回り道したものでした。道草は小さな冒険。想像を掻き立てる一句。
○(アネモネ)「みちくさ」が上手い。
〇(宙虫)水溜まりは子供の遊び場のひとつ。
葉桜やおくるみしろき乳母車 とっきー
○(ルカ)写生がきいています。
○(春生)色合いがさわやか。赤ちゃんの笑顔がみえるよう。
○(珠子)色で来ましたか・なるほど。
○(アネモネ)しっかりした句だと思いました。「葉桜」が効いています。
(選外)(瓦すずめ)光りにすける桜の葉が、乳母ぐるみのなかのおくるみを応援しているように思えます
祖母の忌は藤めしと決め雨上がる アゼリア
○(珠子)藤めしなるものをネットで調べてしまいました。黒豆ご飯・藤色になるから藤めし。お花見に合いそうです。おばあさまがよく作ってくれていたのでしょう。ちなみに私の故郷の赤飯は甘く煮た小豆か金時豆やら花豆を入れますので甘い。スーパーには、甘い赤飯と普通の甘くない赤飯が並べて売られています。
(選外)(道人)「藤めし」は知りませんでしたが、核家族世代として身に染みる句です。
道路鏡に一部の世間春霞 敏
◎(まきえっと)「一部の世間」が良いですね。
○(道人)道路鏡に注目した観察眼と、「一部の世間春霞」と達観している作者の春愁に共鳴しました。上六の調べは多少気になります。
〇(宙虫)言い過ぎのような中七を春霞がはぐらかしているようで面白い。
鞦韆や大地を確と蹴り上げて 幹夫
○(呆夢)ぶらんこの蹴りはしっかり蹴らないと動きません。力強く感じました。
◎(とっきー)力強く地を蹴ってぶらんこを空へ向かって跳ね上げるエネルギーの感じられる力強さに圧倒されました。
◎(あちゃこ)ブランコを漕ぐという一つの行為をこのように瞬間でとらえる着眼点がお見事だと思いました。当たり前ですが、確と蹴らねば始まりませんね、何事も。
○(春生)元気の出る句。「大地を・・・ 」力がみなぎっている一瞬を捉えた句。
(選外)(瓦すずめ)http://hai575.info/sa04d/04/04.htm に全く同じ句が掲載されています。以前に読んだことがあるので、印象に残っていました。
少子化の日本は斜陽藤の雨 泉
○ (多実生) 生めよ増やせよの時代もあったのに、村ばかりか近頃は町中も少子化です。
藤棚に産まれし恋のふたつ三つ あちゃこ
〇(まきえっと)年齢層が広い感じがします。
○(とっきー)こんなこともあるでしょう。ふたつ三つが良いですね。
○ (多実生) 藤棚の下はベンチで、日当たりと日よけが季節で使い分けられます。恋の語らいに絶好です。
○(ルカ)確かにありそう。
○(敏)「ふたつ三つ」の恋は、きっと、芽生え始めた幼い頃の思い出の中の恋心なのでしょうね。
○(瓦すずめ)産まれ「し」のしを過去だと解釈すると、藤棚を見ながら、自分の子供の頃を思い出している、大人の姿が浮かびました。こどものころに恋がふたつ三つだとすると、早熟で頭も良かったこどもだったのでしょう。
☆☆
お待たせしました。
結果発表です。
アゼリアさんのコメントについて。
「にはたづみ」と「にわたずみ」は旧かなと新かなの違いですので決して間違っているわけではないと思います。
麦の会の投句は「新かな」を基本としていますので、別に問題とはしません。
旧かなを基本とした結社であれば「間違い」と言われるかもしれませんね。
今回、「にわたずみ」の句がたくさん投句されました。
春生さんの「にはたずみ」は表記が混同していることになります(気になったのでひとこと。)。
ただし、お願いですが、投句一覧を掲載した後、コメント欄を使って修正などのコメントを書き込むのはご遠慮ください。
そのコメントによって作者が特定されて、句会の趣がこわれてしまう危険があります。
どうしても、修正をしたいときは当番宛てにメールで送ってください(タイミングによっては修正ができない場合もありますが。)。
どちらにしても、皆さんが参加している句会等を含めて、投句の際は、今一度確認のうえ投句してください。
ぐだぐだと申し訳ないです。
では、次回の告知をお待ちください。
今回の句会の感想などご自由にコメント欄へどうぞ。
GWは大雨が降ったり、晴れたり、強風が吹いたり、大変でした。この様なGWも、あまり記憶にありません。私は家に居たので、関係ないのですが。
皆さんの写真からの発想がとても面白いです。