つづき
老初めし吾にきらきら雨の茱萸 めたもん
◯(道人)茱萸には少年少女の心に戻る力がある。「雨の茱萸」なら尚更。
千振を咲かす浮力のある草原 宙虫
〇(藤三彩)画像からセンブリの花を想定されました。茱萸(グミ)じゃないのという句もありましたが営林所から千振をいただいたこともあり選句しました。
○(アダー女)言われてみれば植物は伸びて行く時、土を持ち上げんばかりの力で持ち上がってくるのかもね。そんな浮力を草原は支えているんですね。
○(あちゃこ)やや説明的ですが、花を咲かす浮力という捉え方に共感しました。
〇(めたもん)千振が浮力で咲いているという見方、感じ方が発見だと思います。
(選外)(道人)句跨りの「浮力を生む」の措辞がいい。「を」の繰り返しがいいかどうかは評価が分かれそう。
天病むや泣きなが原の花芒 道人
〇(カンナ)今の時勢を詠んでいるのでしょう。
〇(楊子)石牟礼道子リスペクト。うまくまとめました。
〇(珠子)あの世で石牟礼道子さんが泣いておられます。
〇 (あき子)石牟礼道子さんが降臨されたような、悲哀と力強さを感じます。
星月夜羊と眠る遊牧民 泉
〇(瞳人)うまのしとと、ともにした人もいます
◯ (アゼリア) 確かに最初の写真モンゴルっぽいですね。
(選外)(卯平)中七下五の景とこの季語では当たり前で報告に過ぎないのでは。
花野原生死は同じ風のなか 楊子
◎(泉)生死はコインの裏表。明日のことは誰にも分からない。
○(アダー女)花野を吹く風の中で人を初め生きとし生けるもの全ての生死が営まれているんですね。しんみりします。自然の摂理です。
◎(あちゃこ)共感の一句。省略の効いた深みのある作品と思います。
〇(めたもん)中七・下五により季語・花野原の感じがよく出ていると思います。
〇(あき子)花野原を背景につぶやいて、自分に言い聞かせているよう。
○(ちせい)「生死」に比喩的な意味が有るのかもしれません。
◎ (アゼリア) 広々とした自然の中にいるとそういう気持ちになりそうです。
草の実の一つ一つに朝の色 仙翁
〇(まきえっと)本当にそうですね。
○(あちゃこ)下五がいいですね。作者の視点が爽やか。
燃え尽きた瓦礫の街や秋の蝶 カンナ
◯(道人)写真から瓦礫の街には中々辿り着かないが、現代を詠もうという志と「秋の蝶」の斡旋に一票。
○(卯平)さては、この句、旦過市場の事を詠んでいるのか。秋の蝶が上五中七の凡を詩に高めている。
睥睨し猛るは鵙の気宇なれば 瞳人
◎(アダー女)「鵙の速贄」など残酷な鳥というイメージ、「睥睨して猛る」姿は獰猛な感じもするけど、それは鵙の気宇、気構え、心の広さなんだという鵙をよく理解した作者の優しい眼差しを感じます。「百舌が枯れ木で鳴いている・・・」の歌が思い浮かびました。
青空や赤き実ともす秋野行く あき子
秋草に触れ少女へと戻りゆく 餡子
◎(楊子)この感覚は鋭いです。男はずっと少年ですが、女はなかなか少女には戻れないのです。でも「秋草に触れ」というフレーズで一気に戻れます。
〇(藤三彩)箸が転んでも笑えた時代の少女もいつか”老い”を感じる時を迎える。うーむ!
◯(道人)甘いけれど惹かれる句。
○(敏)秋の七草を取り揃えようと夢中になっていた少女の頃の私が思い出されます。
◯(ルカ)ドラマがあります。
(選外)(アダー女)春草だろうが夏草だろうが花に触れると女は優しくおとなしくなるのです。ましてしんみりした秋草は乙女心も婆心も楽しかった少女期へとタイムスリップするのですよね。
草ひばり食うて小昼の塩むすび アネモネ
○(仙翁)草ひばり食うて、面白い展開ですね。
◯(ルカ)美味しそう。
草の絮子供が遊ぶ風の道 幹夫
〇(まきえっと)子供が遊ぶ風の道がいいですね。
草陰におんぶばったの恋かしら アダー女
〇(瞳人)秋の恋です
◎(アネモネ)おんぶばったの恋には笑いました。
〇(珠子)秋は速足で過ぎますから、のんきそうに見えて彼らはかなり必死なのです。
芒原声のとどかぬところまで ルカ
◯(アネモネ)いい具合の広さの芒原です。
◯(道人)芒原には魔界の入口のような雰囲気が漂っている。つい魅入られて誰もいない遠い世界に
○(敏)芒原に入り込んで、かくれんぼ鬼をかわしきった思い出の1頁かも知れません。
○(卯平)予定調和の範囲であるかも知れない。しかし詠み手の位置と寂寥感が伺える。最後の選。
〇(あき子)芒原の拡がりがダイレクトに伝わってくると同時に、諦念のようなものも感じられました。
今月の写真
大分県九重町(ここのえまち)長者原の風景
https://www.env.go.jp/nature/nationalparks/list/aso-kuju/course/01/
阿蘇くじゅう国立公園内
一枚目 長者原に広がるタデ原湿原(ラムサール条約登録湿地
二枚目 湿原内に咲いた千振の花
三枚目 秋茱萸の実
今朝、起きた時は寒くて驚きました。たった一日で冬になった様な感じでした。季節の変化は早いですね。思えば今年も、あと三ヶ月になりました。一年が経つのは本当に早い。これからは、冬の準備です。