つづき
冬山の岩端に立ち遠く呼ぶ 仙翁
落葉をざくざく日本残酷史 宙虫
◎(珠子)びっくりする取り合わせですが納得できるからすごい。日本の津々浦々に、埋もれた残酷な歴史があります。上五を5文字にすることはできると思いますが「あえて」なのでしょうか。
◎(幹夫)中句・下句の語彙にインパクトがあります。
〇(あき子)「ざくざく」でしばし立ち止まってみると、残酷史を生きた声が聞こえるよう。
◯(道人)音読しているだけで「残酷史」が勝手に浮かんで来る。
◎(めたもん)句全体から「Z」の音のリズムが。落葉を歩いていて浮かんだのが「日本残酷史」ではなく「世界」なら「Z」は…。
熊鈴のカウベル鳴らして獣道 藤三彩
(選外)(卯平)「熊鈴」は「熊が付けている鈴」なのか、それとも「熊除けの鈴」なのか。「鈴」「カウベル」「鳴らす」は饒舌だろう。「熊鈴」の位置が詠み手の中で明確になれば句に昇華するのではないか。下五「獣道」も安直では。
聖夜のデート涙色したパフェ 餡子
○(敏)涙色にこの句に触れた一人一人に物語を呼び起こしそうです。
山道に初冬の日が差し鞄開け ちせい
〇(瞳人)さて、出て来るのは焼酎それとも、ワンカップかな
人生は賭け秋天へダイビング 楊子
○(敏)「人生は賭け」と「秋天へダイビング」が付きすぎのように思えましたが、人生の格言として忘れられなくなりそうです
〇(カンナ)言いたいことを言い切った思い切りのよい句。
〇(珠子)私の人生にもいくつかの「賭け」があったハズですが、過ぎてしまえば必然だった気がします。ダイビングのようなコワイ賭けもあったのかもしれませんが。
○(仙翁)人生は賭けですか。そうかも知れない。
真つ直ぐに飛車切り聡太星冴ゆる 瞳人
〇(カンナ)断崖の写真からの発想でしょうか。語順が絶妙。
〇(藤三彩)12月の「竜王戦」。藤井聡太竜王が広瀬章人八段の挑戦退け史上最年少で初防衛。
着ぶくれてカメラ目線で山に立つ 幹夫
〇(アネモネ)なかなか映像的です。
〇(まきえっと)へっぴり腰になっていないところが素晴らしいです。
○(ちせい)精悍な顔立ちが思い浮かびます。ジャンパーを重ね着して居たのかもしれません。
早く来いと呼ばれ空飛ぶ雪女郎 アダー女
○(泉)ユーモラスな俳句だと思います。
〇(瞳人)うーん、こんなの初めて。さ、一緒に熱燗でもやりましょう
〇(めたもん)雪女郎がウーバーみたいになっていて愉快。今どきは雪女郎も大変ですね。
◯ (アゼリア) そのせいか今日は冠雪した白根山がとても綺麗でした。
団栗を三つ拾ってパフェの店 めたもん
○(アダー女)冬の散歩の後、入ったパフェの店。パフェ食べながらテーブルの上に並べた団栗三つが良いですね。
◎(仙翁)団栗とパフェ、対照が面白いですね。
明日への温もり拾う落葉路 あちゃこ
〇(珠子)明日への熱いエネルギーではなく「温もり」。それが心身にやさしい。
○(アダー女)かさかさと落葉の道を歩く感覚は良いものですね。自分のいろいろな思いにまるで落葉達が答えてくれているような「温もり」を感じてきますよね。
◎(まきえっと)明日への温もり拾うがいいですね。
◯ (アゼリア) 癒されそうですね。
○(ちせい)ホッカイロが落ちていた場面とかではないでしょう。上5中7の象徴的な意味を思いました。
高きに登るそれで満足しましたか カンナ
〇(瞳人)まったくねえ、さ、無事に下山してね
○(アダー女)読んだ方は大きな悩みをお持ちなのでしょうか?鳥も人間も高いところは好きなのです。一時的でも気分がスカッとするのでしょう。高所恐怖症の方は別ですが。でもこういう疑問符の句も面白いですね。
○(卯平)「それで」は上五の説明か。この季語の本意本情を理の世界で消化している。この季語そのものが理の世界で成り立つ季語であるのでそれはそれで許されるだろう。
お揃いのハートの模様冬帽子 泉
〇(アネモネ)ハート模様が微笑ましいです。
空っ風等間隔に杭打たれ まきえっと
○(泉)良く観察している、と思います。
極月の混んで西口パフェテラス アネモネ
〇(楊子)極月の人混みのなか、なぜか西口は空いている気がします。そういう気がするだけです。
○極月だから「混んで」いるのは当たり前だが景は明確である。この西口だけで放り出されると直感的に新宿西口と読んでしまう。だから景が明確になる。「混んで西口」のリズム感が下五の「パフェテラス」へ導かれている。
山頂の先は天頂冬青空 敏
〇(楊子)「天頂」にハッとさせられました。季語は空関係ではないほうがいいと思いましたが。
○(餡子)もっと高くもっと高くと人は高みを目指します。「人は昔、鳥だったのかもしれない・・・」と言う加藤登紀子の歌がありましたね。イカロスもそうでした。
〇(珠子)「天頂」は改めて調べました。言葉がシンプル。山頂と天頂をうまく使ってします。
○(アダー女)ハアハア言って登り詰めた山の頂。でも更にその上には天の頂が。天に頂があるかどうかわかりませんが、とにかく見上げる空はどこまでも真っ青!清々しい句だと思います。
○(幹夫)天頂には空気が引き締って晴れた青空が拡がる。
〇(あき子)どこまでも広がっていく冬の青空を堪能する気分。
○(ちせい)山頂天頂の小気味良いリズムがいいと思いました。
神の岩仏の小石笹子鳴く 珠子
〇(アネモネ)笹子鳴くが措辞をいい具合に受け止めています。
◎(あちゃこ)三枚の写真を見事に歩んでいます。神仏を巧みに詠み込んで、深みのある一句。
〇(あき子)神と仏の対比、そこに笹子の舌打ちが聞こえてくる、時空を超えた世界に誘われます。
〇(宙虫)日本のいたるところにこういった岩石がごろごろ。忘れ去られたものもたくさんありそう。
枯野人電波届かぬところまで あき子
〇(藤三彩)枯野人はあまり見ない言葉です。山では電波の届かない槍ヶ岳と蝶ヶ岳の谷間をF35が日本海方面へ飛び去りました・・・。
〇(まきえっと)時には電波が届かないということも必要ですね。
◯(道人)偶にはあらゆる束縛から逃れたい現代人の流離のこころが下十二によく出ている。
切岸へ返す谺や落葉谷 道人
◎(カンナ)落葉谷の切岸に立って叫ぶと、谺が返ってくる。落葉谷、切岸の映像、空気感が鮮明に浮かびます。
〇(楊子)深い谷が想像できます。ふっとよぎる人生の終焉。
○(あちゃこ)景が見えます。返す?返る?対比が効いています。
◯ (アゼリア) しじまに谺が響いています。
〇(宙虫)紅葉の世界にこれは大定番。
今月の写真
1枚目 熊本港のカフェの「白玉抹茶パフェ」
2枚目3枚目 熊本県山鹿市の「不動岩」。山歩きした際の写真。立っているのは「後不動」と言われる岩。
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広島はやっと冬らしくなって来ました。北国は既に大雪の所もありますね。サッカー観戦で寝不足になりましたが、今回の日本チームは良く戦ったと思います。それでも文句を言われるのが、監督。つくづく大変な仕事だと思いました。