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YOSHIの果てしない旅(人々との出会い、そして別れ)

ソ連、西欧列車の旅、英国滞在、欧州横断ヒッチ、イスラエルのキブツ生活、シルクロード、インド、豪州大陸横断ヒッチの旅の話。

ウェールズの旅~ウェールズのビールは不味い?

2021-09-12 09:11:40 | 「YOSHIの果てしない旅」 第5章 イギリス
     △コロブレンの牧歌的な風景(Painted by M.Yoshida)

・昭和43年9月12日(木)晴れ(ウェールズのビールは不味い?)
 ユースを出て、コロブレン方面の山道(舗装道路)をとぼとぼ歩いていたら、ユースのペアレントが私をコロブレン近くまで乗せてくれた。
 今日は良く晴れた。モーガン家方面への田舎道を歩くのも気持が良かった。この辺りから歩いて行くには、家までまだ遠かった。車の通っていない田舎道をトボトボと歩いた。
 昼頃になって道路脇の芝生の上で1時間ばかり、昼寝をした。その後、再び「小樽の人よ」の歌など歌いながら、コロブレンへ向けて歩いた。そして今日最後の車の2台目で、コロブレンまで乗せて貰った。所で、私はウェールズの旅でよく鶴岡雅義と東京ロマンチカの「小樽の人よ」を歌っていた。
歩いていたら、あのクラブが目に入った。ウェールズの旅が無事に終った事でもあるので、自分にビールで乾杯したくなり、入って行った。中ジョッキのビール(1s7d=約78円)を注文した。1口グィッと飲んだ。喉から胃に伝わり、旅の疲れも一度に吹っ飛んで行った。
既に数人の村民も一杯やっていた。彼等は私の傍に近寄って来た。
その内の1人が、「ウェールズのビールは旨いだろう」と自慢げに言った。
「ソ連を始めヨーロッパ中のビールを飲んで来たが、ここのビールは一番不味いです」と、つい自分の思っている事を正直に言ってしまった。彼は自分の所のビールにケチを付けられたと思ったのか、彼の顔色が変わったのを感じ取った。内心、『まずかったかな』と私は思った。
「そうであったら、どうして不味いビールを飲んでいるのだ」と彼に言い返された。
「でも、私はビールが好きだから飲んでいるのです」と言った。
「サウス ウェールズのビールは、イギリスでも最高に旨いビールなのだ」と彼は自分の国のビールを再度自慢して言うのであった。これ以上彼等の心情を害してはまずいので、私はその件について、もう何も言わなかった。
にほんじん誰でも、何処の国の人でも誇りに思っている物、お国自慢したい物があるものだ。旅人(よそ者)は、それに反論してはいけないのだ。反論しても良い結果が生まれない。寧ろ、「ここのビールは旨いですね」と言って、彼等と和やかな雰囲気の中で飲んだ方がビールも余計旨くなるのだ。
まして私はモーガン家にお世話になっているのだ。彼等の心情を考えると、『言うべきではなかった』と反省したのであったが、それは後の祭りであった。案の定この件について夜、ダディの耳に入っていて、「Yoshi、クラブで皆にウェールズのビールは不味い、と言ったのだって」と言われてしまいました。
 クラブでビールの話の後、彼等の一人が、「日本刀を持っている」と言った。私が「見せて」と言うと、彼は直ぐ家へ行って、刀を持って来た。私は刀を抜いて見た。半分、錆びかかっていた。剣鍔(けんつば)を外して見ると、作者の名前が判明したが、家に帰ったら忘れてしまった。
私が、「如何して日本刀を持っているの」と聞いたら、彼は、「先の大戦中、シンガポールで捕虜の日本人将校から分捕った」と誇らしげに言った。
戦争中の出来事としてダディからも、「日本人捕虜2人がこのコロブレンで働かせられていた。彼等は勤勉で紳士的であった。そしてその内の1人は『田中』と言う人だった」と聞かされた。戦後既に22年経っても、ウェールズの田舎で旧敵国の兵士に出会ったり、軍人の魂である日本刀を見たり、そしてコロブレンに日本兵の捕虜が居たと聞かされたりして、こちらに来て戦争を身近に聞かされるとは、思ってもいなかった。
 クラブから家に帰る途中、教会の裏手に図書館があり、そこで柔道場がある事を聞いていた。そこで、今日は練習をしているかチョット覗いて見たら、大柄の先生が子供達に教えていた。
 家に帰って間もなく、4~5人の子供達が、「是非見に来て下さい」と私を迎えに来たので又、その子供達と柔道場へ行った。しかし、私はクラブでビールを飲み、少し酔って顔を赤くしていた。私としては、『神聖な道場を乱してはいけない』と思い早々、失礼させて貰った。高校の時、多少柔道をやった事があるので、本来ならば先生と一つ『乱取り』でもしてみたかったのであるが、残念であった。
 家に帰って暫らくしてから、ダディ、ケネフと共にブラックベリー(黒い野イチゴ)を取りに、山へ行った。野イチゴは山の急斜面に実っていた。この場所は、「ダディだけしか知らない秘密の場所」と言っていた。これで作ったマミのケーキは最高であった。


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