2021年8月1日、とうとう心配していたことが起きました。
東京五輪ベラルーシ代表チームの1人、クリスツィナ・ツィマノウスカヤ選手が出場前日に強制帰国させられそうになり、羽田空港警察で保護されました。
経緯を順番に整理して書きます。
ツィマノウスカヤ選手は女子陸上選手。ベラルーシのナショナルチームのメンバーに選ばれて、東京に到着。8月2日の女子200メートル走に出場する予定でした。
日本に来てから、ベラルーシの3人の陸上選手が、
出場に必要なドーピング検査の基準を満たしておらず、出場できなくなることが明らかになりました。(他の国の選手でも出場できなくなった選手がいます。)
これは3人とも女子選手だったようです。そしてツィマノウスカヤ選手はこの3人の1人ではありませんでした。
このドーピング検査をちゃんとしてなかった責任は選手ではなく、トレーナーにあると、ツィマノウスカヤ選手は7月30日にSNS上でトレーナーを批判しました。
さらに8月5日に行われる女子1600メートルリレー予選に、上記の3人の選手の代わりに出場するようコーチ陣に言われたともSNSに書き込みました。
ツィマノウスカヤ選手は200メートル走の選手で、1600メートルリレーの選手ではないので、そのための練習をしたことが全くないのです。
「いや、でもあなた足が速いんでしょ。オリンピックに出られるぐらいなんだから。大丈夫! ぶっつけ本番でもいける。」
と思う人もいるかもしれませんが、オリンピックですよ、オリンピック。いきなり練習したことのない距離と種類のレースに出ろと言われたら、困る選手のほうが多いでしょう。
ここで「はい。ベストを尽くします。」と素直にうなずくのが、ベラルーシでは良国民。
文句を言うのは、非国民です。
ツィマノウスカヤ選手は、コーチ陣に、はっきり出場しませんと言ったのか、あるいは選手の意向を聞こうともせず、無断でか、はっきりしませんが、1600メートルリレーの選手として、コーチ陣は登録してしまいました。
ツィマノウスカヤ選手は、文句を動画にして、SNSで公言。
「トレーナーのずさんな管理のせいで、事前の練習もしていないレースに登録させられた。」
とコーチ陣を批判しました。これが7月30日のことです。
すると7月31日、ベラルーシ政府派メディア(国営テレビ局)は、「ツィマノウスカヤ選手は我が国の恥。陸上チームのメンバー精神がない。」と報道。
(注意すべき点は、ツィマノウスカヤ選手は他の選手同様、オリンピックで日本滞在中、政治に関する発言はしません、と一筆書かされていたはずですが、SNS上で、政治批判をツィマノウスカヤ選手はしていないのです。あくまでトレーナー批判をしているのです。)
そして8月1日にコーチ陣が選手村のツィマノウスカヤ選手の部屋を訪れ、
「2日の200メートル走も5日の1600メートルリレーも出場するな。もう登録を取り下げた。つまりもうオリンピックの試合には出ない。」
と告げ、出場しない選手や出場を全て終えた選手は48時間以内に出国(帰国)しないといけないので、今すぐ荷物をまとめろと言いました。
そして強制的にツィマノウスカヤ選手を羽田空港へ連れて行きました。
トルコ経由でベラルーシに帰国させようと、飛行機のチケットもベラルーシ・オリンピック委員会は取ったようですが、ツィマノウスカヤ選手は搭乗を拒否。帰国も同意していないとして、羽田空港警察に助けを求めて保護されました。
メディアの取材に対してツィマノウスカヤ選手は、「ベラルーシに帰国したくない。」「私の意思に反して強制的に帰国させられようとしている。」「コーチ人は、『上』から指示があり、出場選手から私を外した。(コーチ陣も強硬的手段を取らざるを得ない立場にある。)」「五輪参加選手の強制帰国について、IOCに関与してもらいたい。」「帰国するのが恐ろしい。オーストリアに亡命したい。在日オーストリア大使館に連絡を取りたい。」と話しています。
また動画を反政府派アスリートがリトアニアで創立したベラルーシ・スポーツ連帯基金(BSSF)のインスタグラム・チャンネルに投稿して、「自分の意思に反して強制的に帰国させられる。」と訴えています。
さて、1日のベラルーシ国営メディア(テレビ局)の夜9時のニュースを先ほど見ましたが、それによると、
「ツィマノウスカヤ選手は最近になって急に成績を伸ばした選手である。(他の陸上選手への協力精神が薄い?)」
「すでに100メートル走の予選には出たが記録は芳しくなく、予選落ち。」
「ツィマノウスカヤ選手の前に他の女子選手にも、1600メートルリレーに代わりに出場するよう求めたが、その選手の精神状態が悪くなり、次にツィマノウスカヤ選手に出場するよう求めた。」
「すると、コーチ陣批判をSMS上で公言した。」
「この行動はツィマノウスカヤ選手の精神状態がおかしいから。」
「ナショナルチームのドクターに診てもらったら、ツィマノウスカヤ選手の精神状態が異常であると診断された。そこで、チーム陣は出場は難しいと判断。予定していた全ての競技への出場は取り消しておいた。」
「もう日本ですることはないから、2日以内に出国(帰国)しないといけない規定である。それで羽田空港へ連れて行った。」
「空港についた途端に、帰国したくないと逃げ出した。」
「ツィマノウスカヤ選手はスキャンダラスな人物であり、国の恥。何をしに日本へ行ったのか。醜聞をさらすためか。」
「選手村のツィマノウスカヤ選手のルームメイトも『あの人は言動が前々からおかしかった。』と証言。」
・・・とツィマノウスカヤ選手を激しく非難しています。これではますます帰れないですよ・・・。
強制的に帰国させて、処罰しようと思ってたけど、もう帰って来なくてもいい、だから批判できるだけ批判しておこう・・・という方針なのかもしれません。
野党幹部メンバーのラトゥシコ氏は(この人、立場上いろんな情報が入ってくるのか知りませんが)ツィマノウスカヤ選手を出場させるな帰国させよとコーチ陣に命令を出したのはベラルーシ大統領本人だと発言しています。
真実かどうか分かりません。ベラルーシ・オリンピック委員会長は、大統領の長男ですが。大統領は前会長です。
IOCも調査に乗り出し、ツィマノウスカヤ選手は安全な場所にいるようです。
もし帰国させられたら、ミンスク空港で逮捕、警察へ直行、留置所へ、何らかの罪で起訴、裁判、有罪判決、刑務所ではなく更生施設行きになるのは、目に見えています。選手生命も終了です。
日本に政治亡命したいと希望しているわけではないのでIOCと亡命先として希望しているオーストリアか、ベラルーシ・スポーツ連帯基金があるリトアニアの判断に任せるのが無難でしょう。
ツィマノウスカヤ選手がベラルーシに帰国しなかったら、ベラルーシ政府は必ず誰かに苦情を言ってくるでしょうが、日本にではなく、IOCに言ってください、という方向へ持っていくほうがよいと思います。
ベラルーシにいるツィマノウスカヤ選手の家族は、ここまで非国民扱いされると、安心・安全を求めてベラルーシから出国すると思います。ちゃんと受け入れてくれる団体が隣国にあるので、そこを頼るでしょうし、すぐに受け入れられるでしょう。
こちらの夜10時のニュース(別の国営テレビ局)によると、ますドーピング基準を満たさなかった問題(これはトレーナーに責任があるます。)で、出場できる基準を満たす選手が減ってしまったのが、問題。
しかし、こういった問題を、選手たちの絆でもってフォローするのが、チーム精神である。
だから、陸上競技のコーチ陣はツィマノウスカヤ選手に、出られなくなった選手に代わって、1600メートルリレーに出場するよう指示した。
「みんなが困っているんですから、私でよければお手伝いします!」と即答するだろうと思っていたら、いきなりの拒否。さらにコーチ陣への文句をSNSで世界中にさらす言動が、精神状態のおかしい人のそれ。
(あくまで私の予想ですが、選手が急病になるとかで、出場できなくなったのなら、ツィマノウスカヤ選手も同胞の選手の代わりに出ていたかもしれません。そうではなくて、選手のドーピングの管理もできないトレーナーの尻拭いはしたくない、という心境だったのでは。)
そして「1600メートルリレーにも出なさい! メダルを1個余分にもらえるチャンスが増えるのに。出ないのなら、君は陸上選手として失格だ。2日の200メートル走も出なくてよい。」と言って、「2つの競技に両方とも出るか、どちらも一切出ないか」選ぶよう言い渡しました。
するとツィマノウスカヤ選手は自ら「どちらも一切出ない」ことを選択。選手の希望を尊重し、出場登録を取り消す手続きをした。そうすると48時間以内に帰国しないといけないので、他にも同日出場を全て終えて、帰国する他競技のベラルーシ選手を羽田空港まで送る専用バスに乗るよう指示した。
ところがバスの出発時間になっても、ツィマノウスカヤ選手は集合場所に来なかった。(帰国したくなかったので、わざとバスに乗らなかった?)
それでコーチ陣は、ベラルーシ代表団付きの車にツィマノウスカヤ選手を乗せて、急いで羽田空港へ連れて行った。車中で動画撮影をしていた。空港についたら、空港警察へ走って行って、「特殊工作員に無理やり空港へ連れてこられた。トルコ行きの飛行機に乗せようとしている。助けて。」と保護を求めた。
・・・だそうです。これが本当だとしたら、羽田空港警察官はびっくりしたでしょうね。「国際的な誘拐か?」と疑って、若い女性を保護しようとするでしょうね。ちなみにツィマノウスカヤ選手を空港へ送ったのは、ラトゥシコ氏情報によると屈強な男性3人だったそうです。(それにしても、ラトゥシコ氏発の情報は、日本へ行って見てきたんですか?と不思議に思うようなのが多いです。)
パラリンピック出場経験のあるS夫に聞きました。
「予定していた専門の200メートル走の練習しかしてなかった選手に、練習したことがない1600メートルリレーにほとんどぶっつけ本番で出場するようコーチから指示されることは、よくあることなのか。」
S夫の回答「ある。陸上選手なら、どんな距離でも走ることができるよう、普段から練習しているのがベラルーシでは普通。ぶっつけ本番なんて楽々クリアーできるのが当たり前。アーチェリー選手の自分の場合、予算不足で選手が二人しか選ばれなかったのに、団体戦に出させられて、一人で数人分の矢を打った。」
私の質問「それはパラリンピックのできごと?」
S夫の回答「いいや、国内試合。」
私の質問「ツィマノウスカヤ選手は1600メートルリレーの練習は一度もしたことがないと話している。だから出場したくないと拒否した。」
S夫の回答「どんな距離でもオールマイティーにいつでも走れるようにしておくのが真のスポーツ選手。その準備をしてこなかったツィマノウスカヤ選手は、だめな選手。」
私の意見 「練習メニューは、トレーナーが決めるのでは・・・」
S夫の意見「ともかく、コーチ陣はツィマノウスカヤ選手のことを、陸上選手としてダメ、人格的にもチーム精神がない選手だと思った。だから全ての陸上競技、専門の200メートル走も、出場しなくていいと判断した。1600メートルリレーも走れないという選手は200メートル走も走れないだろう、という判断。そうしたら、東京ですることがなくなったから、帰国するのが当たり前。」
・・・だそうです。そんなにオリンピック選手ってオールマイティーに練習しているものなのですね。
さらに私は「ツィマノウスカヤ選手は自分の専門の200メートル走には出場したかったのでは。拒否したのは1600メートルリレーのほうだけだと思う。」とS夫に言ったのですが、
「1600メートルリレーを断ったら、200メートル走も出させてもらえないと分かっていたのに、1600メートルリレーに出ませんと答えたのは、200メートル走も出たくないと言ってるのと同じ。」
という回答でした。
オリンピックに向けてもう何年も200メートル走を練習し続けてきた選手が、それに出場できなくなってもいいやと思うほど、1600メートルリレーに出るのがいやでいやでたまらなかったのでしょうか・・・。
日本人の中には、かわいそうだから保護してあげてという意見もありますが、私が思うには、この騒ぎには隠されている部分があります。でももう気づいている人も多いでしょうね。ツィマノウスカヤ選手はベラルーシ国営テレビが今せっせとネガティブ・キャンペーンをしているような精神状態がおかしい人ではないです。
チェコ政府が、ツィマノウスカヤ選手に対して、チェコのビザを発給するので、入国しなさいと声を上げました。
オーストリアに亡命したいと希望しているのはツィマノウスカヤ選手ですが、オーストリア側はまだ何も発言していません。
オーストリアがだめでも、チェコには行けることになりました。
そうなるとベラルーシとチェコの関係が一段と悪化しそうですね。
ツィマノウスカヤ選手はチェコに恩義を感じて、練習に力を入れ、次回はチェコの選手として国際試合に登場するかもしれません。