ブッシュクラフトは山中での神事と祀り
■チェーンソーは使っちゃダメですか?
先日お話したように山林の維持,管理にはパワーツールが必須です。
チェーンソーもそのひとつですが、パワーツールはエンジン、電動
を問わず情け容赦なく動きますので、ちょっと気を抜くと殺人マシーン
に変貌します。
ブッシュクラフト(以下BC)では、なるべく原始的なツールを使うことが命題
のようですが、ほどほどにしておかないと時間がいくらあっても足りません。
たとえば10インチ(25センチ)くらいの木を玉切りにする場合、チェーンソー
なら1分もかかりません。森林組合でも使っているシルキーのゴムボーイなら
10分くらい。
よくBCで使う台形の組み立てノコギリ(なんて言う名前かわかんない)だと
組立て、分解、収納が入るので20~30分以上はかかるでしょう。
ですからBC活動は木を切るのが楽しみでなく、そのあとのBBQっぽい食事に
重心をおくならば、ゴムボーイを買っておいて、現地でパカッっと広げて切るのが
正解でしょう。ようするにちょうどいいツール使用が「ほどほどプラン」。
よくなんでも原始的にするのが価値があるように言う方がいます。
世の中のツールはすべて「時間を圧縮」するために投資するもので、
たとえば摩擦で火を起こそう、などチャレンジするなら焚火をするまでに
日が暮れてしまいます。
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神宮=JINGU公式サイトより
■伊勢神宮での「忌火(斎火)」熾(おこ)し
ところで、神道では手で熾す火だけが神聖な炎で、伊勢神宮などは全域で
マッチやライターは不可です。これらは「忌火、いみび」と呼ばれていて、
神事としての調理の際は縄文時代のように回転摩擦で火をおこします。
伊勢神宮の内宮、外宮には忌火屋殿(いみびやでん)があり、
そこで木と木をすり合わせる「舞錐式発火法」(まいきりしきはっかほう)
で「御火鑽具」(みひきりぐ)を用いて火を切り出します。
つまり火を熾すこと自体が神事というわけで、
これぞブッシュクラフトの原点と言えるかもしれません。
自分も伊勢神宮での研修の際は、仲間がその担当になり必死に火を起こそうと
しましたがまったくダメでした。神宮の神職はこのような神事を絶対に変えない
ことがお仕事ですので火が得られるまでやりますが、ブッシュクラフトでは
「火が付かなければライター」でまったくOKかと思います。
そのライターの火で焚火して、ロストルの動物の肉を焼くんですから「焼肉神事」
ということでの潔斎や祝詞奏上も必要かもしれません。
火を使う山中での野外活動はある意味でのお祭り(祀り)とも言えます。
アイヌのイヨマンテがその儀式の類型ということでしょう。
そう考えると皆さんがソロキャンプで火を焚くのは、古代日本の神事に無意識に
近寄ることなのかもしれません。
自分も自然の山中で過ごすことは神道、すなわち「惟神の道」であって、広義
での修行の毎日を過ごしています。