双極Ⅱ型障害というのは新しい診断名であって、かつてならば季節性うつ病とか難治性うつ病とかに分類されていたと思う。ほとんどの症状が鬱症状であって、波としての躁は軽躁と呼ばれ、普通の人から見ると「ちょっと明るすぎる、熱心すぎる」と感じるくらいで、躁の状態とは思えない。だって本人だって思っていないのだから。
この状態の時に、仕事を失敗してしまう場合もあるが、逆に有能さを発揮する場合もある。ゴッホとかピカソとか双極性障害であったと病跡学では言われたりする。
ボクの場合はずっとうつ病として診断を受けて抗うつ剤を飲んでいた。けれどそれは未だ判っていなかった双極Ⅱ型障害だったので、うつ病が寛解したときにはたぶん軽躁状態に陥っていたことが多かったのではないかと、いまでは想像している。双極性障害の人にむやみやたらに抗うつ剤を投与すると、当たり前だが針が逆に振れて躁転する。
もちろん、軽躁の場合、どこまでが正常で、どこからが軽躁か判断することは難しい。
結局、医者を替わって、うつ状態のときに抗うつ剤を投与されて、はじめてボクは軽躁ではなく、はっきりした躁転を経験する。担当医は「ミスった」とぼやいていたが半分はわざとだろうと思う。彼は躁転することは予定にあったが、彼の予定ではボクは双極Ⅰ型障害のつもりで、躁転しても他人に迷惑がかかるような状態は少ないと考えていた。
ところが双極Ⅱ型障害でしかも躁とうつの混合状態が出てしまい、自殺騒動を再び繰り返した。これは担当医の予定にはない行動であったのだろう。
まだまったく双極Ⅱ型障害と判断されていないとき、やはりオーバードーズの自殺騒動をおこしたが、あのときは双極性障害の軽躁状態にはまずいと言われる抗うつ剤のパキシルを飲んでいた。いま考えると双極Ⅱ型障害の軽躁状態で抗うつ剤を投与するという火に油をそそいだ状態で起こった躁とうつの混合状態だと思う。
以上のことから、ボクの担当医は基本うつ状態でも、抗うつ剤は使わずに、抗うつ効果のある抗精神病薬で対応している。
いろんな見方はあると思うが、新型抗うつ剤のSSRIにしても、その効果が確かにあるから、軽躁をはっきりとした躁に変えてしまう力がある。一方で、ボク同様に誤診状態で誤った抗うつ剤を投与されてきた双極Ⅱ型障害の人たちもたくさんいる。
医学の進歩というのはいいんだかわるいんだかよく判らない。