丼季報亭「8万時間の休息」

旅の記録や季節の便りそれに日々の思いを軽いトーンで綴ってみました。

60. 儒教的道徳観

2008-05-15 10:38:09 | 閑話

            60. その2. 儒教的道徳観 

  江戸時代後期に曲亭馬琴(滝沢馬琴)によって著された読本「南総里見八犬伝」は室町時代後期を舞台に、安房国里見家の姫・伏姫と神犬八房の因縁によって結ばれた八人の若者(八犬士)を主人公とする長編伝奇小説である。

 八犬士は、それぞれに仁・義・礼・智・忠・信・孝・悌の文字のある数珠の玉(仁義八行の玉)を持っている。 仁・義・礼・智・忠・信・孝 は比較的良く知られているが 「悌」すなわち年長者に従順で兄弟仲睦まじいことはあまり知られていない。

              

 前回述べたように われわれ団塊世代の両親は 生まれたときから儒教的道徳観を植えつけられてきた。  その倫理観は 儒教的道徳にもとづいた勧善懲悪の世界であった。我々世代の周囲を見渡してみると男性の名前には 仁・義・礼・智・忠・信・孝 から一文字使われているケースが非常に多い。

 あるいは「質・実・剛・健」も同様であるが 概して儒教の世界からは脱しきれていない。 そんな親たちが戦後 何でもありの自由の下で 我々を育ててくれた。 子供たちに授けた倫理観・価値観も儒教の影響は避けて通れないものであった。少なくとも親たちはそうであった。

              

 私の通った中学・高校では、公立であったが その頃教師による鉄拳制裁は当たり前であった。長幼の序・規律は戦前とさほど変わらないものではなかったのか。家庭でも父親の拳骨による愛の鞭はごく普通に見られた。

 団塊世代の共通の倫理観は両親の潜在心理に深く根ざした儒教の影響は受けたのは確かである。しかし 本人たちにとってはそれほど強いものでもない。

 60年代末の学園闘争に嫌気が差したのか その後の生活でもノンポリ すなわち支持政党なしが多くなっていく。選挙もその時々の気分で参加、無党派層ゆえ 政策より人物で選ぶ傾向にある。

 早い話が家庭・学校は そこそこ厳格に育てたが 効果は薄いといわざるを得ない。いつしか親の世代に比べれば 異なった自由な発想を持って育ってきたのである。国の危機管理意識においては 他国から「平和ボケ」と揶揄されるほどになっていた。

「戦後、無規律な解放の下、自由放漫を謳歌し、個性尊重の美名に隠され、したい放題の無責任な世俗を作ってきた「大人」の責任が問われている。」あの塩川正十郎氏の言葉の意味がここにある。

              

 そこへ 90年代初頭にバブルは弾け 経済成長がみるみる停滞し、長いデフレの時期が訪れたのである。大企業の終身雇用制度ですら有名無実となり、なにやら先の読めない不透明な時代となった。少し自信を失いかけていると いつのまにか 団塊世代に物申すコミュニティまで登場していた。

 ここまで色々述べてきたが 私も含めて 後進の育成が充分でなかった。 特に「この国をどうする」「この社会をどう変える」といった青雲の志を持った若者を育成しきれなかった。これは大きな問題であると私は思っている。

 いまさらじたばたしてもどうなるものでもないが…。

              

  まあ そうは言っても 悪いことばかりではない。団塊世代の大半が定年を迎え社会から完全に退いてしまうと、技術者不足など 先が思いやられる事態も生じる。そのいっぽうで、急減した人数分を各企業は採用枠を広げるため雇用は進む。

 派遣や契約社員などの正社員化の機会も増えるので 雇用の面では悪くない。 それでも不足していくので ハードワークの大半は海外から流入した労働力に大きく依存するようになるだろう。海外からの労働力に対する法改正も急務であろう。

              

 ぼやいてばかり いても仕様が無い。 

 年寄りの繰言と言われる前に 功罪半ばで 完全に隠居せねばならない。

            続きは次回に…


              


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2 コメント

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書き込み有難うございます。 (「丼」)
2008-05-16 23:49:16
あこさん

毎々 コメント書き込み有難うございます。

軽妙洒脱な文章目指して寄稿しているのですが
なぜか 毎日 硬い正論になっているのも
もって産まれた 性格でしょうか?

ますます精進せねばなりません。

「丼」
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道徳・倫理観とは (あこ)
2008-05-15 23:18:07
時代考察は大変良く構想された執筆だと思いました。
ありがとうございます。

儒教の教えが戦前の道徳・倫理観を作り上げていた事、それが戦後崩壊した結果、道徳・倫理となる基準的価値観を喪失したまま、高度経済成長を遂げて、物質的に豊かになってしまった。
そして、格差社会と言われる経済社会になり、復興と反映を担った親や団塊の世代は現役を引退している。

今問われるのは、新しい道徳・倫理観を提起して
社会を担うのこれからの世代には、老後を向かえ、死に向かう老人を、姥捨て山のような法律で拘束するような非情・無慈悲な精神に追いやらない事だと思いました。
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