106. 中村紘子さん・トーク&コンサート
週末18日夕方中村紘子さんのコンサートへ出かけた。中村さんを聴きにいくのは2年2ヶ月ぶりのこと。前回は練馬区民文化ホールの平成18年5月リニューアルこけらおとし記念リサイタルであった。
第一部は 珍しいトーク中心の演奏でまずモーツアルト5歳時の作曲「メヌエット」および ショパン7歳時の作曲「ポロネーズ」を 編曲前のそれぞれ5歳バージョン 7歳バージョンと断って演奏して聞かせる。 脳生理学の面から言うと 天才は幼時にすでに音楽への脳細胞は出来上がっているのだそうである。
続いてメンデルスゾーン16歳の時の作曲「序奏とロンドカプリチョーソ」と、ショパン18歳ころの曲「バラード第1番」を演奏しこの若さでそこまで完成している点を 分かりやすく解説。 作品発表時の年齢の早熟度と言い 曲の完成度に 観客は納得し唸りそして感心していく。 すっかり彼女のトークに惹き込まれる。
最後に 滝廉太郎21歳の時の作品を紹介する。 結核療養中全て焼かれた楽譜の中で 唯一残されていた「恨み」という名の曲を披露した。 第一部の選曲・構成ともに この女性独特の感性の鋭さと 溢れる知性を漂わせていた。
トークの随所に その才能の多彩さを感じさせ ノンフィクション作家やエッセイストとしての 一面も見せつける。 ここがこの人の真骨頂であり、人間的魅力でもある。 言葉の端々に そこはかとない気品と 育ちのよさを感じさせる。
第二部は ムソルグスキー組曲「展覧会の絵」次の内容どおりであるが、この曲は確かに 前もって彼女の解説を充分に聞いてそれから聴かないと 良く分からない曲であった。 個々のメロディが持つ意味と 展覧会の絵が 結びつくように 丁寧に説明と演奏が続いた。 とても おしゃべりな一面も見せていた。
この日の座席が最前列二列目の右端2つであり、ピアノ越しに演奏者の表情がよく分かった。 類稀な彼女の集中力がその演奏中の表情から伝わってきた。 ピアノの天板に奏者の腕が忙しく動く様子が くっきりと映っているのでなおさら感じたのかもしれない。
万雷の拍手に応え アンコール一曲目は ショパンの「別れのワルツ」 これは さすがにいつもの中村さんの演奏。 それから熱烈なコールに応えて「幻想交響曲」の二曲。 これも 中村さんらしくてとても結構でした。
コンサートが終ったあとは いつも会場で販売されている CD購入者の長蛇の列が彼女のサインを期待して夜遅くまで続いていた。
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中村紘子さん プロフィール : (1944年7月25日生) 本名:福田紘子
銀座で画廊『月光荘』を主催していた美術商中村曜子さんを母に出生。 父親については情報非公開。 月光荘は1989年に経営破綻 母親曜子さんは1992年逝去。
3歳からピアノをはじめ、慶應義塾幼稚舎入学。桐朋学園の「子供のための音楽教室」の第1期生で、井口愛子に師事。ちなみに同期には小澤征爾、堤剛、江戸京子など。慶應義塾中等部3年生のときに日本音楽コンクールで第1位特賞を受賞。
1960年、岩城宏之指揮の東京フィルハーモニー管弦楽団の演奏会にソリストとしてデビュー。
特に第7回ショパン国際コンクールで日本人初の入賞(4位)と併せて最年少者賞を受賞。
ノンフィクション作家・エッセイストとしての顔も持ち、1989年には「チャイコフスキー・コンクール」で大宅壮一ノンフィクション賞を受賞した。(こんな才能には畏敬の念を抱いてしまう。)
1974年9月に芥川賞作家庄司薫と結婚。演奏旅行で家を空けることの多い中村の愛猫を庄司が預かるなどするうちに交際、結婚に至ったとのこと。
ここまでは
出典:フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』より抜粋
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昔、彼女の母校である慶應義塾中等部から招かれてリサイタルを行った際、おしゃべりを止めない生徒たちの態度の悪さに怒り、演奏を中断し、代わりに説教を演説して帰ってしまったというエピソードがある。
生前古今亭志ん生が酒に酔って寄席の舞台で寝てしまった話を思い出すが、これとまさに対照的な彼女の頑固で生真面目な一面にちょっとだけ惹かれるのはなぜ?
もうひとつのブログ
◆丼季報亭の「丼季報亭の四方山話」(2002年9月投稿開始)は
http://kj2k3.at.webry.info/
◆4Travel. 「Donkyさんの旅のブログ」」(2013年6月投稿開始)は
URL:http://4travel.jp/traveler/donky2013/
お時間があるときにでも、またお気軽にお立ち寄りいただければとても嬉しく思います。
いつもブログご愛読有難うございます。
いつ聴いても 彼女のピアノは聴かせます。
暑い中 ご自愛くださいますように。
「丼」
お話とピアノ演奏、とても楽しかった思いが
伝わりました。
筆の表現構成が素晴らしくて、
立体的で映像イメージができ、演奏会で
聴いているような錯覚を持つ程でした。
また略歴を添えて頂きましたので、お人柄も
理解できました。