55. 好物「めじか」
今日の話題は好物「めじか」である。
幼い頃 私は地方の漁港で育った。口にする魚は その日の朝水揚げされたものしか知らなかった。漁港は四国の佐田岬根元にあり水産業で栄えていた。全盛期は人口5万を超えていた。平地の少ない小さな町であったが 豊後水道の海の恵を享受しトロール漁業が全盛期でもあった。
42年前に単身上京したころ、学食で初めて焼き魚定食を注文した。口に入れる前に驚いた。どこかしら臭うのだ。「美味くない」のである。少なくとも朝水揚げされたものではない。
学食や大衆食堂で何度か魚を食べて東京の魚は鮮度が足りないと感じていた。もちろん相応の対価を支払えば築地へ揚がったばかりの新鮮な魚はいくらでも手に入ったのであろうが...。
後に家庭を持って、妻に好きな魚を訊ねられた時、迷わず「めじか」と答えた。
「えっ? 鮭が好きなの」
「鮭じゃないよ」
「だってめじかなんでしょ?」
「めじかは西の魚で東京では売っていないよ」
「???」
東日本では「めじか」は カツオでもサバでもない。北の漁師が追い求める最高の秋鮭。それがメジカと呼ばれる秋鮭であった。何故メジカと言うのか?目が口の近くにある事からそう呼ばれるようになったという。
鮭は、河口に近づくと鼻が前に伸びたようになって全体として頭が大きくなってくる。 河口に近づくと鮭は、餌を食べなくなりお腹に卵を抱えるため脂肪含有率が小さくなって魚としては美味しく無くなってくる。 めじかは、回遊している内に漁獲された鮭である。ゆえに体内に十分な栄養を蓄えた脂がのっている美味しい鮭である。
あれ 今日は秋鮭の話をするんじゃなかったね。
話を元に戻すことにしたい。
スズキ目、サバ科 に属するソウダカツオこそが 私の言っている好物の「めじか」である。ソウダカツオはソウダ節の原料となる魚であり、ヒラソウダ、マルソウダを総称してソウダカツオと呼んでいる。ソウダ節は関西ではめじか節(目近節)と呼ばれている。
ソウダカツオは北海道以南、東シナ海諸島に分布。近海を遊泳する。体の横断面が円形に近く、胸甲が徐々に細くなり、側線の終わりのほうまでのびている。体長35cm。血合肉が多く、刺身には不適である。カツオ節の代用品として使われ、そば屋のダシ等に広く利用されている。
そしてその 地方名を メジカと言う。 四国の南西端にある土佐清水市ではソウダカツオ「めじか」は、土佐清水の魚として指定されている。
かつおライブラリーによると
ソウダカツオは血合肉が多く、特有の臭気があり、鮮魚や加工用としては、あまり利用されていない。しかし、節に加工された、そうだ節はかつお節やまぐろ節に比べて、味が濃厚で色の濃いだしが得られる。このため、醤油、味噌などと合わせて使用することが多い様である。http://www.yamaki.co.jp/dashiken/lib4.html
お気に入りの味も 高知や足摺岬など旅先の宿の食事で ついぞお目にかかれたことはなかった。旅館などでは焼き物や煮物に ほとんど使われることはない。土佐ではカツオ節の代用品として使われ出荷されている。
秋が旬であると言われており、油の乗った大きい物の味が良いのである。それでも 私は茹で上がった「めじか」をそのまま焼いて醤油をかけて味わうのが好きだ。 この魚にはそれが一番あっている気がする。
鯛や秋鮭の派手さは無いが新鮮で素朴な味である。 そして何よりも過ぎ去った幼い頃の記憶が ほろ苦くもある。
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