新潟久紀ブログ版retrospective

燕市企画財政課24「次は地方創生のハード整備交付金だ(その2)」編

●次は地方創生のハード整備交付金だ(その2)

 地方創生の取組を支援する国のハード補助金である地方創生「拠点整備交付金」については、従来の地域振興補助におけるハコモノ補助への批判もあり、国もかなり抑制的考えていたようなので、一回の補正予算措置のみで終わると思われた。その千載一遇のチャンスを逃すこと無く活用できて良かったという思いで終わったことと考えていた。
 ところが、半年後に、国はまたも補正予算で拠点整備交付金を確保したと通知してきた。ハード整備には企画立案から設計施工まである程度の期間を要する。ソフト事業のように関係者の合意形成や業者との連携で比較的即座に事業化できるものではない。年度半ばに補正予算を確保したから使ってくれと言われても、しかも制度上半年足らずの年度内に工事完了することが要件となれば、対応は容易ならざる。初回の地方創生のためのハード補助予算はあまりにも突然で準備が間に合わなかったという不平不満が地方側から大いに出されていた。追加の補正予算にはそんな背景もあったようだ。
 「もう活用する事案は無いですよね」と部下からは異口同音に話しが出たが、暫く考えてみた。有利な財源が目の前にあるのにそれを生かせる事案は本当にないのだろうか。もちろん、国がカネをくれると言うからただ使えばいいというものではない。我々は、特に財政担当としては、バブル経済崩壊以来の税収減による財政の緊縮志向の下で、何事も最低限最小限で物事を考えることが常態化していた。それが、単純な縮小均衡に陥り、経済や地域社会の振興のための積極的で新たな取り組みを押さえ込んでしまってはいないだろうか。売り上げ不振の商売において新商品開発やリニューアルなどしなければジリ貧となるのは常識的な話。出来ることやるべき事で無意識に見ないようにしていること、手出しできないものと諦めてしまっているものがあるのではないか。
 何か困り事はなかったか。必要は発明の母という。たとえば"議員が住民から好感度を上げるためのドブ板的な陳情もの"事案であろうがなんだろうが住民から滲み出ているニーズが発意のきっかけにできるかも知れない。私は意識を巡らした。以前、市長を交えた協議の中で、「保育施設の中で諸事情によりエアコンが整備されずに残っている所が数カ所あって、そこをなんとかしてやりたい」ということが話題になったことがふと思い出された。
 「交付金を保育園のエアコン整備につなげる」と言うと関係課員は驚き即座に否定的な意見を返してきた。「地方創生交付金は単なる既存施設の改修には充てられない要件になっています」と。それは百も承知。保育園といえば地方創生の取組において最重要とされる論点である少子化対策に直結する現場だ。そこを地域の少子化対策に関する活動を高める場へと展開するという企ての中で、エアコン整備も織り込もうということを私は考えたのだ。
 施設内運動場の窓から外側にサンルームを増設して近隣の住民が園児を見守れるようにして、場合によっては保育士さん達をサポートできるようにする。もしくは、妊活中の夫婦や妊娠中のママとパパが、子供の成長の先行きを見学してより良い子育てについて考えていけるようにしたり、そこに集う幅広い世代の近隣住民らとの交流を通じて、地域での子育てに安心感を持ったりできるようにする。そんな施策を考えてみた。それにあたり、サンルームの増築で延べ床面積が拡張することと休日夜間等に住民のワークショップなどできるようにすることなどを考えると、エアコンの整備へとつながるのだ。
 こうした私の発意により、課員には事業計画書や交付金申請書づくり、国担当官とのやりとりで相当な苦労を掛けたが、結果して必要と考える交付金は十分に獲得できた。思えば、初回のハード交付金に消極的だった私への市長からの「企画に知恵を出せ」という叱咤が、この2回目の交付金の活用へと奮い立たせてくれた。燕市への出向は、私が若い頃には"たぎって"いたはずの挑戦心をも思い出させてくれたのだ。

(「燕市企画財政課24「次は地方創生のハード整備交付金だ(その2)」編」終わり。県職員としては異例の職場となる燕市役所の企画財政課長への出向の回顧録「燕市企画財政課25「つばめ産学協創スクエア事業(その1)」編」に続きます。)
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