あれま!もう20話ですね。
予定では終わってるはずでしたが・・・
まぁ妄想なんで膨らむのはいつものことです
では嵐の『Snowflake』を聴きながらどうぞ
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
妄想ドラマ 『Snowflake』 (20)
悟が最初にその男に気がついたのは一ヶ月ほど前だった。
いつもジーンズにカーキ色のミリタリージャケットを着て、ショルダーバッグを肩にかけていた。
アトリエの近くのパン屋に行ったとき、窓の外から中をのぞいていた男と目が合った。
その時は気にも留めなかったが、二度目に見かけた時はマンションの向かいのビルの陰で
タバコを吸っていた。
いやな感じがしたのを覚えている。
美冬からの電話でその男が自分をつけているのではないかと思った。
夜、マンションへ戻ってシャワーを浴びると着替えて外へ出た。
駅へ向かう途中で人気の無い路地へ入り、物陰に隠れてしばらく待ってみる。
足音が近づいてきた。
やはり気のせいではない。
「何か用ですか?」
男は突然目の前に現れた悟に驚いたが、無視して通り過ぎようとした。
「待てよ。何のために、こそこそ人の周りをうろついてるんだ」
逃げようとした男の肩に手をかけて引きとめようとしたら、振り向きざまに殴りかかってきた。
悟から電話がかかってきた時、美冬はベッドで本を読んでいた。
時計は11時を回っていた。
「美冬さんに会いたい。今すぐ会いたい。これから行ってもいい?」
「だめ。この前話したでしょ。こんな時間には・・・」
「大丈夫。もう今夜はいないよ」
「いないって誰が?」
悟は答えない。
「個展までもう時間もないけど、絵は完成したの?」
「どうせ描けない。手を傷めた」
「どういうこと?わかるように説明して」
「アトリエで待ってる。来てくれるまで何時間でも何日でも待ってる」
そう言って電話は切れた。
かけ直しても悟は出ない。
美冬は部屋着の上にコートをはおると、車でアトリエに向かった。
普段はとても穏やかで優しい悟だが、時々とても厳しい目をしている時がある。
きのう、ギャラリーのスタッフたちと一緒に、個展の最終打ち合わせをした。
帰り際に見せた表情は、いつもの悟とは違っていた。
個展に出すつもりの絵が、ほぼ完成しているのに悟はそこで行き詰っている。
美冬の目には素晴らしいと映るのに、悟には納得いかない何かがあるらしい。
厳しい表情はそのせいだと思っていた。
でもさっきの電話の様子では原因はほかにもありそうだ。
アトリエは灯りが消えていた。
ドアは開いていたので中に入ると、ブラインドの隙間から差し込む街灯で、
悟が部屋の隅に座り込んでいるのがわかった。
「悟君」
声をかける。
悟はゆっくり立ち上がると、静かに歩いてきて美冬を抱きしめ言った。
「キスして」
間近で悟の顔を見ると、左側が少し腫れて唇も切れ、血がこびりついていた。
「どうしたの?何があったの?」
「キスしてくれたら話す」
美冬は悟の頬に手を添えて唇の右側にそっとキスした。
「さぁ、話して」
「俺をつけてきた男が逃げようとしたから、引き止めたら殴りかかってきた。それでこの顔。
でもそいつも、もっとひどい顔になってると思うけどね」
「ひどい・・・誰がそんなこと」
「なんで俺たちが人目を気にしないといけないの?おかしいだろ。美冬さんに会えないなら、
もう個展なんてどうでもいい。俺は有名になりたいわけじゃないんだ」
「お願い聞いて。私もこれでいいとは思ってないけど、もう来週なのよ。
月刊アートの取材も今更断れないし、ローカル局だけどテレビの取材も入るの。
もう途中で投げ出すわけにはいかないのよ」
悟は苛立った気持ちをもてあまして拳で壁を叩いた。
沈黙の時が流れた。
「わかった。美冬さんが困るなら個展はやる。だから今夜は一緒にいて」
「手を傷めたって言ってたよね?見せて」
「たぶん捻挫かな。左手でだって描くよ。絵を完成させればいいんだろ。美冬さんが心配なのは絵のことだけだ」
「違う。違うからそんな風に言わないで」
悟は美冬に背中を向けたままつぶやいた。
「なんでこんなことになるんだ」
「悟君・・・」
美冬は後ろから悟を抱きしめ、肩に頬をつけてもたれかかった。
「大丈夫。私達は何も変わってない。私は誰よりもあなたが好き。これからもずっと」
「こんな俺でも?」
「そう、どんなあなたでも」
それから二人は寄り添ってひとつの寝袋と毛布にくるまり、朝になるのを待った。
世界中の誰よりも幸せだと思いながら。
--------つづく------
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
もう明日のドームが楽しみで、続きが考えられない
そろそろ最終回に向けて妄想しなくちゃいけないんですけど!?
ではまた
予定では終わってるはずでしたが・・・
まぁ妄想なんで膨らむのはいつものことです
では嵐の『Snowflake』を聴きながらどうぞ
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妄想ドラマ 『Snowflake』 (20)
悟が最初にその男に気がついたのは一ヶ月ほど前だった。
いつもジーンズにカーキ色のミリタリージャケットを着て、ショルダーバッグを肩にかけていた。
アトリエの近くのパン屋に行ったとき、窓の外から中をのぞいていた男と目が合った。
その時は気にも留めなかったが、二度目に見かけた時はマンションの向かいのビルの陰で
タバコを吸っていた。
いやな感じがしたのを覚えている。
美冬からの電話でその男が自分をつけているのではないかと思った。
夜、マンションへ戻ってシャワーを浴びると着替えて外へ出た。
駅へ向かう途中で人気の無い路地へ入り、物陰に隠れてしばらく待ってみる。
足音が近づいてきた。
やはり気のせいではない。
「何か用ですか?」
男は突然目の前に現れた悟に驚いたが、無視して通り過ぎようとした。
「待てよ。何のために、こそこそ人の周りをうろついてるんだ」
逃げようとした男の肩に手をかけて引きとめようとしたら、振り向きざまに殴りかかってきた。
悟から電話がかかってきた時、美冬はベッドで本を読んでいた。
時計は11時を回っていた。
「美冬さんに会いたい。今すぐ会いたい。これから行ってもいい?」
「だめ。この前話したでしょ。こんな時間には・・・」
「大丈夫。もう今夜はいないよ」
「いないって誰が?」
悟は答えない。
「個展までもう時間もないけど、絵は完成したの?」
「どうせ描けない。手を傷めた」
「どういうこと?わかるように説明して」
「アトリエで待ってる。来てくれるまで何時間でも何日でも待ってる」
そう言って電話は切れた。
かけ直しても悟は出ない。
美冬は部屋着の上にコートをはおると、車でアトリエに向かった。
普段はとても穏やかで優しい悟だが、時々とても厳しい目をしている時がある。
きのう、ギャラリーのスタッフたちと一緒に、個展の最終打ち合わせをした。
帰り際に見せた表情は、いつもの悟とは違っていた。
個展に出すつもりの絵が、ほぼ完成しているのに悟はそこで行き詰っている。
美冬の目には素晴らしいと映るのに、悟には納得いかない何かがあるらしい。
厳しい表情はそのせいだと思っていた。
でもさっきの電話の様子では原因はほかにもありそうだ。
アトリエは灯りが消えていた。
ドアは開いていたので中に入ると、ブラインドの隙間から差し込む街灯で、
悟が部屋の隅に座り込んでいるのがわかった。
「悟君」
声をかける。
悟はゆっくり立ち上がると、静かに歩いてきて美冬を抱きしめ言った。
「キスして」
間近で悟の顔を見ると、左側が少し腫れて唇も切れ、血がこびりついていた。
「どうしたの?何があったの?」
「キスしてくれたら話す」
美冬は悟の頬に手を添えて唇の右側にそっとキスした。
「さぁ、話して」
「俺をつけてきた男が逃げようとしたから、引き止めたら殴りかかってきた。それでこの顔。
でもそいつも、もっとひどい顔になってると思うけどね」
「ひどい・・・誰がそんなこと」
「なんで俺たちが人目を気にしないといけないの?おかしいだろ。美冬さんに会えないなら、
もう個展なんてどうでもいい。俺は有名になりたいわけじゃないんだ」
「お願い聞いて。私もこれでいいとは思ってないけど、もう来週なのよ。
月刊アートの取材も今更断れないし、ローカル局だけどテレビの取材も入るの。
もう途中で投げ出すわけにはいかないのよ」
悟は苛立った気持ちをもてあまして拳で壁を叩いた。
沈黙の時が流れた。
「わかった。美冬さんが困るなら個展はやる。だから今夜は一緒にいて」
「手を傷めたって言ってたよね?見せて」
「たぶん捻挫かな。左手でだって描くよ。絵を完成させればいいんだろ。美冬さんが心配なのは絵のことだけだ」
「違う。違うからそんな風に言わないで」
悟は美冬に背中を向けたままつぶやいた。
「なんでこんなことになるんだ」
「悟君・・・」
美冬は後ろから悟を抱きしめ、肩に頬をつけてもたれかかった。
「大丈夫。私達は何も変わってない。私は誰よりもあなたが好き。これからもずっと」
「こんな俺でも?」
「そう、どんなあなたでも」
それから二人は寄り添ってひとつの寝袋と毛布にくるまり、朝になるのを待った。
世界中の誰よりも幸せだと思いながら。
--------つづく------
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もう明日のドームが楽しみで、続きが考えられない
そろそろ最終回に向けて妄想しなくちゃいけないんですけど!?
ではまた