皇居の落書き

乱臣賊子の戯言

高森明勅氏の説はもっと注目されるべき

2024-05-13 21:19:27 | 皇室の話(3)
高森明勅氏の説はもっと注目されるべき

皇位継承の在り方をめぐる問題については、高森明勅氏の説が明解であり、また、皇室に対する敬意に基づいた説でもあるので、同氏の説がもっと注目され、支持されることを願いたい。

令和6年5月9日配信のSmartFLASH「「90%が容認」世論調査も進まぬ「女性天皇」実現への道 識者が本誌に語っていた「4つの理由」と「解決策」」と題する記事がある。

この中に、以下の記載がある。
----引用開始----
「それは政治家の問題です。国会内にある『男系男子』への根拠のない思い込みによる固執ですね。

 彼らは『男系男子』が明治になって初めて採用されたルールであることさえ知らない。推古天皇以来、後桜町天皇まで10代・8人の女性天皇が実在したわけです。明治になって排除されただけですから、男子限定というルールはなかったということです。

 古代の大宝令、養老令は『女帝の子』に女系で『親王』の身分を認めており、そういう意味でも、男系に限定したのは明治からということがわかる。『男系男子』が、神武天皇以来の皇室の伝統だという錯覚に基づいて思考停止している。それが、政治家として、いちばん楽だからです」
----引用終了----

これは、高森氏が一貫して主張されてきた内容であるが、筆者としてどのように消化して理解したかということを述べると、以下のようになる。

「彼らは『男系男子』が明治になって初めて採用されたルールである」ということについては、
・明治になるまでは皇位継承順位を法定したものはなかった。
・明治なり皇位継承順位を法定することになった。その際、それまでの継承の在り方から「男系」というルールがあるものとして読み取り、明治の時代状況(男尊女卑)も踏まえて、「男系男子」という規定を作成した。
・これはすなわち、「男系」継承を原理として認めたということである。

しかし、
・「男系」継承が原理として、本当に歴史上に存在していたと言えるのか。
歴代の皇位継承は、本当に「男系」継承を守るべき原理として、執り行われてきたのか
仮にそうでなるならば、何らかの文献で確認できそうなものであるが、それがまったく無いのはどういうわけなのか。

ここで、「古代の大宝令、養老令は『女帝の子』に女系で『親王』の身分を認めており、」という話になるわけであるが、
・これは高森氏が早くから着目している「『養老令』「継嗣令」皇兄弟子条の『女帝子亦同(女帝の子も亦〔また〕同じ)』といふ記述」のことである。
むしろ、「男系」継承の原理があったということとは逆の証拠が古来の法令に存在していたということである。
歴代の「男系」継承ということは、結果としてそうであったということであり、原理として歴史上存在していたわけではないということの決定的な証拠である。

明治時代になり、皇位継承順位を法定しようという場面において、何らかの原理があるはずだと考え、それを条文に盛り込みたいというのは、法制業務を担当する者の自然な発想ではあろう。
また、現在でも、法学部出身の者は、だいたいこういう発想をするものではないだろうか。
筆者にしても、男系継承が影のようなものである考えるに至ったのは数年前であり、それまでは原理として捉えていたのである。
これは、近代的な法制業務的発想の罠であったと言えるだろう。

歴史上の男系継承が影であり原理ではないと分かったとして、後は、それではなぜ男系継承が結果として続いてきたのかについて、解き明かすことができれば、全体像は完成すると思う。

女性天皇の後に女性天皇が続いた場面をとらえて歴史上女系継承が存在したという風に言えなくはないけれども、女性天皇が即位した後に男性と結婚し、生まれてきた子が皇位を継承したという例がないことについてどう説明するか。

このことについては、歴史的な夫婦観というものが、これを言うと怒られそうであるが、妻は夫の従属物、所用物であるような考え方があったということで説明可能であろう。

昭和時代のドラマなどで、今はアウトのようだけれども、結婚をしようという男が相手方の父親に、「娘さんを僕にください」と挨拶するシーンがよく見られたけれども、これなどは、そういった考え方の残滓だったのではないか。

このような考え方を、我が国の皇位の在り方の根本に据えてしまっていいのかは、やはり大きな問題である。

国会・政府で議論されている方策は、男系継承を損なわない範囲での皇族数確保策となっているが、それは要するに、男系継承を最重要の原理として認定するということを意味している。
歴史上の原理でなかったものと原理として認定してよいのか。
将来にわたって、日本の在り方として望ましい原理というのならばともかく、その背後に事実上あったのが妻は夫の従属物、所用物であるような考え方であるとすれば、そんなものを皇位の在り方の根本に据えてしまっていいのか。
それはすごく恥ずかしいことなのではないか。

この問題に関心を有する多くの方々が、高森氏の説に着目し、考えを深めてもらうことを願いたい。


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