~このお話は、ばあさんの夢と妄想によるフィクションです。~
この数日あと、すぐにかの君から、
3月の京都行のスケジュールをもらったが、
歌舞伎座の三月興行は、仁左衛門の「道明寺」
大好きなキース!
ローリングストーンズのア・ビガー・バン・ツアー来日公演
三の丸尚蔵館、若冲の「動植綵絵」公開開始
その他いくつかの演劇や花見と
スケジュール表がすでにいっぱいだった私は
3月に東京を離れることができなかった。
そして、4月はかの君が東京を空けることができず
「京都検定1級攻略!寺社めぐりプロジェクト」は、
立ち上がりからすぐに頓挫した。
「せっかくスケジュールを頂いたのに、
なかなか、プロジェクトに参加できなくて、本当にごめんなさい。
今年から来年にかけては、待ちに待った「若冲YEAR」で、
歌舞伎座の方も、13世片岡仁左衛門13回忌追善狂言があって…」、
と送った私のメールに
「仕方がありませんね。若冲と仁左衛門丈には勝てませんから…
とりあえず、一度今後のプロジェクトの計画をたて直しましょう。」
とメールが返って来た。
三の丸尚蔵館若冲第一期が公開されたので、4月に入ってから
私はかの君を案内しながら、近くのホテルでランチをした。
「私は、5月の中旬と下旬に京都行きの予定がありますが、
あなたのご都合はいかがですか?」
かの君はスケジュールが沢山書き込まれたシステム手帳を開いて、
カレンダーの13~14日と27~28日をペンで指した。
「どちらも前日の金曜日に仕事が入っていますので、
土日なら、終日ご一緒に京都をまわれるでしょう。」
「月に何度も京都へご出張なんですか?」
「ええ、この月は、頻繁に行くことになるかもしれません。
基本的にはコンクリートの建築設計なのですが、
和室とか茶室とかをオーダーされると
建材とか、表具とか…やはり京都が一番なのでね。」
「あぁ…テキストの中に出ていましたね!京指物・京表具って。
伝統工芸も沢山あって未だに覚えられないですが…
むき出しのコンクリートの壁面は、それ自体に表情があって
茶室とかにしたら、きっと素敵でしょうねぇ。」
「和と洋をうまく調和させる事や
構造上の断熱などの問題もあり難しいですが、面白いですよ。
みなさんがご存知のような茶室そのものを写すのではなく、
イメージの中で、「わび」などが表現できれば成功なんです。
利休も織部も光悦もとても前衛的な部分があるでしょ!
コンクリートの打ち放しに、
漆の板一枚を床の代わりにしたり…
でもこういうのをオーダーしてくれるような
遊び心を持ったお客さんは、少ないですけどね。
ああ、すみません。つい仕事の話になっちゃって…。
今日は重要なプロジェクト会議でした。
それで、京都の方はいつにしましょうか?」
仕事の話をしている時のかの君は、
自信に満ち溢れているようでとても輝いていた。
私は、どちらの日程も大丈夫のように思ったが、
13~14日は葵祭の直前でもあるし、
ホテルの予約が難しいような気がしたので、
下旬の方が好ましいとかの君に伝え、
「一応、家のものと相談して、帰ってからお返事いたしますね。」と答えた。
そしてもっとかの君の仕事の話を聞いていたかったが、
食事が終ると、私たちは、持参した京都の地図や本を参考に
プロジェクト第1弾となるコースをあれこれと相談した。
計画が概ね決まると、二人は、ホテルを出て三の丸尚蔵館で若冲を観て、
そのあと皇居東御苑内を散策した。
初夏の花であるはずのトキワマンサクやキレンゲツツジなどがもう咲いてた。
かの君は暑そうにジャケットを脱いで、肩からぶらさげて
私の少し前を歩いた。
再会前、かの君に抱いていたのは、行きずりの人への単純な憧れだった。
今、それが少しずつ変化をしはじめ、二人の京都での道行に
小さな不安が芽生えていることを感じながらも、
私は、それ以上の大きな期待で胸をふくらませていた。
かの君は大きく手を広げて深呼吸してからつぶやいた。
「春もそろそろ終わりだなぁ…」
このあとは京都検定ノススメ-2-に続く
この数日あと、すぐにかの君から、
3月の京都行のスケジュールをもらったが、
歌舞伎座の三月興行は、仁左衛門の「道明寺」
大好きなキース!
ローリングストーンズのア・ビガー・バン・ツアー来日公演
三の丸尚蔵館、若冲の「動植綵絵」公開開始
その他いくつかの演劇や花見と
スケジュール表がすでにいっぱいだった私は
3月に東京を離れることができなかった。
そして、4月はかの君が東京を空けることができず
「京都検定1級攻略!寺社めぐりプロジェクト」は、
立ち上がりからすぐに頓挫した。
「せっかくスケジュールを頂いたのに、
なかなか、プロジェクトに参加できなくて、本当にごめんなさい。
今年から来年にかけては、待ちに待った「若冲YEAR」で、
歌舞伎座の方も、13世片岡仁左衛門13回忌追善狂言があって…」、
と送った私のメールに
「仕方がありませんね。若冲と仁左衛門丈には勝てませんから…
とりあえず、一度今後のプロジェクトの計画をたて直しましょう。」
とメールが返って来た。
三の丸尚蔵館若冲第一期が公開されたので、4月に入ってから
私はかの君を案内しながら、近くのホテルでランチをした。
「私は、5月の中旬と下旬に京都行きの予定がありますが、
あなたのご都合はいかがですか?」
かの君はスケジュールが沢山書き込まれたシステム手帳を開いて、
カレンダーの13~14日と27~28日をペンで指した。
「どちらも前日の金曜日に仕事が入っていますので、
土日なら、終日ご一緒に京都をまわれるでしょう。」
「月に何度も京都へご出張なんですか?」
「ええ、この月は、頻繁に行くことになるかもしれません。
基本的にはコンクリートの建築設計なのですが、
和室とか茶室とかをオーダーされると
建材とか、表具とか…やはり京都が一番なのでね。」
「あぁ…テキストの中に出ていましたね!京指物・京表具って。
伝統工芸も沢山あって未だに覚えられないですが…
むき出しのコンクリートの壁面は、それ自体に表情があって
茶室とかにしたら、きっと素敵でしょうねぇ。」
「和と洋をうまく調和させる事や
構造上の断熱などの問題もあり難しいですが、面白いですよ。
みなさんがご存知のような茶室そのものを写すのではなく、
イメージの中で、「わび」などが表現できれば成功なんです。
利休も織部も光悦もとても前衛的な部分があるでしょ!
コンクリートの打ち放しに、
漆の板一枚を床の代わりにしたり…
でもこういうのをオーダーしてくれるような
遊び心を持ったお客さんは、少ないですけどね。
ああ、すみません。つい仕事の話になっちゃって…。
今日は重要なプロジェクト会議でした。
それで、京都の方はいつにしましょうか?」
仕事の話をしている時のかの君は、
自信に満ち溢れているようでとても輝いていた。
私は、どちらの日程も大丈夫のように思ったが、
13~14日は葵祭の直前でもあるし、
ホテルの予約が難しいような気がしたので、
下旬の方が好ましいとかの君に伝え、
「一応、家のものと相談して、帰ってからお返事いたしますね。」と答えた。
そしてもっとかの君の仕事の話を聞いていたかったが、
食事が終ると、私たちは、持参した京都の地図や本を参考に
プロジェクト第1弾となるコースをあれこれと相談した。
計画が概ね決まると、二人は、ホテルを出て三の丸尚蔵館で若冲を観て、
そのあと皇居東御苑内を散策した。
初夏の花であるはずのトキワマンサクやキレンゲツツジなどがもう咲いてた。
かの君は暑そうにジャケットを脱いで、肩からぶらさげて
私の少し前を歩いた。
再会前、かの君に抱いていたのは、行きずりの人への単純な憧れだった。
今、それが少しずつ変化をしはじめ、二人の京都での道行に
小さな不安が芽生えていることを感じながらも、
私は、それ以上の大きな期待で胸をふくらませていた。
かの君は大きく手を広げて深呼吸してからつぶやいた。
「春もそろそろ終わりだなぁ…」
このあとは京都検定ノススメ-2-に続く