さくらんひめ東文章

指折って駄句をひねって夜が明けて

鳳凰祭四月大歌舞伎 夜の部

2014年04月28日 | いざ銀座歌舞伎座



「一条大蔵譚」檜垣・奥殿


今まで何度も大蔵卿を拝見してきたが、前半のつくり阿呆の大蔵卿が楽し過ぎると


奥殿になってから、常盤と吉岡夫婦とのやりとりが退屈なものとなり、


早く大蔵卿が出てこないかなぁ~とそればかりになっていた。


でも今回の吉右衛門丈の大蔵卿を拝見して目から鱗の気分。


力のない公家が争いに巻き込まれず生き残るために仕方なくつくり阿呆を装っている生身の大蔵卿を感じた。


だから源氏に所縁ある血筋を明かす部分が凄く生きていた。さすがである♪♪♪


また、魁春丈の常盤御前も素晴らしく子供たちのために生きてきた悲しさが伝わってくる♪♪♪


梅玉丈の鬼次郎と芝雀丈のお京も源氏を想うひたむきさが感じられ、


歌女之丞丈の成瀬・由次郎丈の勘解由とも深い味わいがあった♪♪♪


大当たり!大播磨!と沢山の声がかかった。






「女伊達」


所作ダテの面白い舞踊♪


女伊達の時蔵丈・男伊達の松江丈・萬太郎丈がスッキリと♪



「梅雨小袖昔八丈」髪結新三


歌六丈の弥太五郎源七が最高♪♪♪


金太郎丈の丁稚長松がお祖父さま相手に堂々とご立派♪


お祖父さまの出より拍手が多かったような。


幸四郎丈・歌六丈の千穐楽の口上でめでたく打ち出し。




お初 千穐楽

2014年04月27日 | いざ銀座歌舞伎座




本当に本当に可愛いお初ともこれでお別れかと思うととても寂しい。


初演は昭和28年だからほぼ私の人生分お初を演じてこられたことになる。


以来、19歳のお初の若さ・瑞々しさ・可愛らしさが全然変わらないことに毎回驚き


その都度藤十郎丈の情熱を分けてもらってきたように思う。


今日、文楽でも人気演目の「曽根崎心中」であるが、


近松の作品を復活したのは歌舞伎の方が先であり、それは当時扇雀でいらした


藤十郎丈の人気によるところが大きく文楽も復活に至ったそうだ。


子供心に母が「すごく可愛らしくて綺麗♪」としきりに言っていたことや


扇雀飴など今でも記憶に残っている。


最愛の人とともに死ぬことが女の喜びと藤十郎丈のお初は、


哀れなお初ではなく恋愛の頂点に上りゆく幸せなお初であった♪♪♪



97回目の春

2014年04月25日 | じいさんがんばれ!



4月も残すところあとわずか。まだ朝晩に少し冷えるが春爛漫の季節♪


今月もおかげさまで体調は安定しているじいさん。









部屋のトイレには歩いていけるが、移動はほとんど車椅子の生活なので


このベット内がじいさんのお気に入りの宇宙。


電動ベットの背を上げるのが嫌いなので、いつも起きている時は壁によりかかっているこの姿勢が楽のようだ。







寒がりなので外に出るのを好まないが、先日はめずらしくお花見に一緒にいってくれた。






最近は将棋をさすのが疲れて面倒になってきたらしい。






でも字を読む速度はまだ衰えていないようで、この日は施設オリジナルの歌集をみながら唄っていた。







昨日はちょうどオバマ大統領のニュースを観ていて、TPPが未だ合意できない内容に


日米が戦争の最中と思っていたようだ(笑)


そして「戦争ほど馬鹿らしいものはない!」と一言。







じいさんにとっては97回目の春、そして施設に入れて頂いてから丁度丸一年経った。


下の写真は入所した日のもの



鳳凰祭四月大歌舞伎 昼の部

2014年04月24日 | いざ銀座歌舞伎座



今月は何と言っても三津五郎丈が歌舞伎座の舞台に復帰されたことが何より嬉しい♪♪♪


「寿靭猿」は昔、巳之助丈の初舞台で先代と当代の親子三代を拝見していたので、


その時の小猿だった巳之助丈が立派に奴を勤めておられるのと


踊りの名手の三津五郎丈の御元気な御姿とが重なり胸が熱くなった。


狂言の「靭猿」から写したものであるが、女大名としたことが歌舞伎らしくていい。


又五郎丈の女大名も良かった♪


三津五郎丈の猿曳の小猿への想いが所作にも溢れて絶品だった♪♪♪



そして藤十郎丈の一世一代の「曽根崎心中」


とにかく藤十郎丈のお初が可愛い♪♪♪


あんなに可愛い女ならどんな男も溺れるだろうと女の私でも感じるお初だ。


鴈治郎を襲名されることとなった翫雀丈の徳兵衛もお祖父さまのような味わいがあった♪♪♪


徳兵衛の手をひいて花道をゆくお初を観ながら、まだまだ観たいと思った。



「鎌倉三代記」絹川村閑居の場


梅玉丈の三浦助・魁春丈の時姫が格調があって良かった♪


でも私はなぜかいつもこの芝居は眠くなる(笑)



「壽春鳳凰祭」


冠をつけた時蔵丈の女御がオーラがあって美しかった♪


我當丈の帝も神々しくて立派♪


歌舞伎座でもその昔一世風靡した「源氏物語」が観たいと思った。







久しぶりで歌舞伎座ギャラリーによってみた。


海外公演の写真がもっとたくさんあるのかと期待していたのでちょっと残念。






屋上庭園は花車か?ピンクのツツジとシャクナゲが咲いていた。





ムベとアオイの花

2014年04月23日 | 植物



今朝植物園に牡丹を観に行った際に、日本庭園によってみるとムベの花が咲いていた。


アケビ科の常緑つる性の植物 別名トキワアケビ


天智天皇がこの果実を食して「むべなるかな」と言ってその名がついたという不老長寿伝説の植物





アケビは冬に葉が落ちてしまうが、このムベは常緑、アケビの実は熟すと割れるが、ムベは割れない。


雌花・雄花の区別があるらしいがそれは良くわからなかった。


下の写真がムベの実








そして植物園で出会ったおじいさんが「花が咲いているよ!」と教えてくれたカンアオイの花





カンアオイ ウマノスズクサ科


花のように見えるのは花弁ではなく3枚の萼片らしい。







「ではフタバアオイも花咲いてますか?」とたずねると


「ヤブイチゲの隣に今いっぱい咲いているよ!」と。


以前から葵祭に使われるフタバオイの花を観てみたいと思っていたので


おじいさんに御礼を言って早速野の花が沢山さいているその所に行ってみると


咲いてる!いっぱい咲いてる!





こちらも不思議な面白い花。


フタバアオイ  ウマノスズクサ科






ちなみに隣に咲いていたヤブイチゲの可愛い花たち、これも春の妖精の仲間。






素敵なおじいさんとの出合いに感謝♪感謝♪

開山・栄西禅師800年遠忌 特別展 栄西と建仁寺

2014年04月22日 | アート 伊藤若冲♪♪♪



特別展「キトラ古墳壁画」 が始まったので、本館は行列が出来ていた東京国立博物館。


でも本日は「栄西と建仁寺」展へ。






序章 禅院の茶

第1章 栄西の足跡

第2章 建仁寺ゆかりの僧たち

第3章 近世の建仁寺

第4章 建仁寺ゆかりの名宝





第1展示室でまず迎えてくれるのは、鎌倉時代作の明庵栄西坐像


恐れ多いが「さすが茶祖!頭の形がお棗みたい」と思ってしまった(笑)


「四頭茶会」の空間が再現されているのも興味深かった。


ビデオでその様子も流れていたが、客が天目台にのった天目茶碗を捧げ持っているところに


僧が湯を入れて茶筅で茶をたてるのにはちょっと驚き!


栄西著の「喫茶養生記」・栄西筆の「誓願寺盂蘭盆一品経縁起」など平安から鎌倉時代のものが

保存状態良く残っているのにも驚いた。





私の大好きなお寺のひとつ、鎌倉の浄妙寺の東大寺大勧進行勇の坐像も

玉眼がきらりと光っていて重源・栄西のあとを継いで東大寺第三大勧進となった僧の風格があった♪


狩野山楽の「連鷺図襖」のまえには織田有楽斎の坐像があって、

特に山楽の「四季耕作図」がのどかな柔らかい雰囲気が漂っていて好きだ♪






でも今回はなんといっても海北友松の多くの作品群が素晴らしい♪♪♪


同時に公開されている等伯の作品がなぜか見劣りする。


5/6までは8幅公開中の「雲龍図」も見ごたえがある。


渦巻く雲の中から現れる龍の顔は意外に怖くないのであるが、


雲の切れ目からのぞく体の鱗や爪の表現が絶妙で今にも動き出しそうな迫力がある!!!






指で描いたという蘆雪の「牧童吹笛図」も面白い♪


若冲さんの擦筆や筋目描きの技法を駆使した「捨得および鶏図」の力の抜き加減が好き♪


それとは対照的に光放つ雪の白さと鶏冠の赤が印象的な「雪梅雄鶏図」♪


17世紀中国清時代の「涅槃図」の鳳凰は若冲さんの描く鳳凰に似ていた。


その他、「法観寺参詣曼陀羅」などと六道珍皇寺からのものも面白かった。


そして第2展示室一番最後に「風神雷神」が光り輝いていた。






時おり小雨がぱらつくあいにくのお天気であったが、上野公園内の


木々の若葉が萌えだしていて特に文化会館横の銀杏並木がことのほか美しかった♪♪♪


羅生門蔓

2014年04月22日 | 植物



長年散歩の途中による植物園でも、初めて出会う花がいくつもある。


先日も林の傾斜地に沢山の紫の花がさいているのをみつけた。


シソ科の多年草でラショウモンカズラというそうだ。





なるほど葉っぱはシソに良く似ている。





羅生門蔓なんてロマンを感じる命名にしらべてみると


花冠はさきが唇形で内側に紫の斑点があり、筒のような部分が太く毛が生えているので


羅生門で渡辺綱が切り落とした鬼女の腕にみたてたそうだ。


そう言われて横から観ると鬼が爪をたてた腕にもみえないこともないし


垂れさがる斑点模様がなんとなく日本人の感性からすると心地よいものではないのかもしれない。


2009年の春に羅城門址をたずねてみたことがあるが、


小さな公園内に羅城門跡という石碑がぽつんとたっているだけだったのを思い出した。



穀雨来て

2014年04月21日 | 日記




2014の暦の上では4月20日が穀雨。


先週はお天気続きで乾燥していたが、穀物を潤す春の雨が今日も降っている。


この季節あちこちの公園や家々の庭で目にするチューリップがいかにも楽しげ。






我が家ではヒメウツギが咲きだした。






今年は少し遅くなってしまったが、昨日ペチニアの苗を植えた。


ペチニアは日本ではツクバネアサガオとして入ってきて、その時は日本の風土になじまなかったのを


お酒の会社が品種改良してサフィニアとして普及したそうだ。





色も形も様々あるので毎年ブルー系を中心に選ぶが、


今年は花屋さんで出会ったブラックチェリーという妖しい魅力の名前に惹かれて3株、


種の会社の開発したドレスアップという八重咲き白・ピンク・ブルーを5株


苗にも当り外れがあるので綺麗に咲いてくれることを祈るばかり。







穀雨来てペチニアの苗植え付ける

花疲れ

2014年04月18日 | 都へ上る

足る知らぬおろかさを知る花疲れ



南座の前後この日はすでにお花見で1.3キロぐらい歩いたことになる(笑)


大好きな桜を堪能して気分は上々であったが身体は疲れていた。





岡崎のレストランで遅いおやつ。


南座観劇の日に平安神宮の紅枝垂コンサートがあるのを知って、そのチケットをネットで予約していた。


予定外の桜の通り抜け・半木の道に相当のエネルギーを消費しまったが


18時半からの夜桜にむけミラノ風ホットケーキやフレンチトーストでエネルギーチャージ♪♪♪







枝垂桜の夜桜はソメイヨシノとは違うしっとりとした優雅さがある♪


この日は十三夜ではないがその一歩手前という月夜で、神苑に流れる弦楽四重奏の響きとともにと花見の宴に興を添えていた。











神苑はライトの当て方などもとても考えられているので、闇に浮かぶ桜たちはそれはそれは美しかった♪♪♪










相変わらずの古い携帯で撮る夜桜なので、こういう時だけスマホに替えようかと思う今日この頃(笑)










結構な人混みで疲れ切った足元がおぼつかなかったが、なんとか無事に神苑を一周。


















2日間、世話のやける母親につき添ってきてくれた娘に感謝!感謝!



娘曰く、2年分ぐらいの花見をした気分と(笑)



「われ~ただたることをしる~♪ ち~そくのつくばいのよじ~♪」


都の夜、神苑をめぐりながらふと頭に浮かんだのは中川翔子さんの龍安寺の歌だった(笑)




北北西に進路を取れ

2014年04月17日 | 都へ上る




またまた桜に魅せられて、枝垂桜を求めて鴨川を北上








半木の道へ








ほぼ満開であろうか? 








同じく愛らしい風情の桜でも、大阪の八重桜はこってり、


京都の枝垂桜はまさにはんなり。











桜と紅葉のシーズンの京都は極力さけてきたので、


ゆっくり歩いて京都の桜を愛でるのも本当に久しぶりだった。










ぶらぶら

2014年04月17日 | 都へ上る




娘は京都に来ると必ず寄るお店がある。


なんでもニューヨークと京都にしかないチョコレート屋さんとかで、


いつもお店は大繁盛ですごく混んでいる。





はじめはお店の前で流されていく花筏をみていたが、


思っていたよりまだ桜が残っているので


娘を待っている間に少し川端通をぶらぶらすることにした。





枝垂桜・マンサク・ユキヤナギ・ヤマブキなどが寄せ植えされていてなんともいい感じ♪





やはり都には枝垂桜が良く似合う♪♪♪









THE TALE OF GENJI

2014年04月16日 | 劇♪場♪



源氏物語ファンとしてはやはり見逃せない海老蔵丈の特別公演♪


歌舞伎・能楽・オペラそれぞれの世界では決して観ることができない舞台芸術に


果敢にチャレンジした海老蔵丈は実にあっぱれである!!!


能楽にどっぷり浸っている娘は辛口批評であったが、


カウンターテナーの美しい歌声が光の君の心情を切々とうたいあげ


光の君に係わる人々を能楽師と歌舞伎俳優が演ずることによって


幻想的で熱情的な歌舞伎ではない新境地の舞台を創り上げたと私は思う♪♪♪




個人的な好みを言わせてもらうならば、


黒髪の毛ぶりはいらない!


亀三郎丈に頭中将を演じてもらって、雨夜の品定めの場面を是非入れて欲しかった!


花のパフォーマンスが途中に入るが冒頭の方がいいように思った。






女の霊(六条御息所)が夕顔にとりついて死なせてしまうところの演出は圧巻!!!


プライド高い六条御息所の嫉妬心や悲しみばかりでなく、どうしても抑えられない光の君への情念を


シテお二人がが同時に舞うのが素晴らしかった♪♪♪



おそらく海外公演を意識した上での演出だろうが、「源氏物語」の中に流れる


不変のテーマはしっかりと表現されていた。






孝太郎丈がまさに紫式部という風情があった♪♪♪


成田屋さんには代々光源氏のDNAが受け継がれているので


海老蔵丈も立っているだけで光の君のオーラを発していた♪♪♪



練り直すところもあるように思うが久しぶりで「お~♪」と驚きのある面白い舞台が嬉しかった。



海老蔵丈今後益々の挑戦を楽しみに期待しております。






桜の通り抜け

2014年04月15日 | 都へ上る



大阪について御堂筋線に乗っている時に「大阪造幣局・桜の通り抜け」の車内アナウンスがあった。


桜の名所であることは知っていたが、まだ一度も拝見したことがなかったので


12日の朝行ってみることにした。






開園時間前から天満橋駅の周辺から造幣局へむかう人々で行列が出来ていて


相当な混雑が予想されたが、造幣局内は思ったほどでなく


この日は自由に好きなところで写真を撮れる余裕があった。





ほとんどが八重桜で、全てが覚えられない百を超える種類。







記憶に残っている名は


松月・小手毬・雨宿・雨情枝垂・鬱金・関山・蘭蘭・祇王寺祇女桜・御衣黄・麒麟・須磨浦普賢象・静香・数珠掛桜


なるほどとうなづける名と佇まいがマッチしていた。





























毎年「今年の桜」というのが選ばれて紹介されているようでこちらがその桜





松前琴糸桜というそうだ。


桜の枝には俳句の短冊が掛けられていた。





造幣局内でも苗木を育てているらしい






娘道成寺に桜の花を集めて毬をつく所作があるがまさにこれ!と言う感じ♪








こんな八重桜を観たのは初めて!





たっぷり1時間余り楽しませてもらった♪♪♪










幼き日夢見してまり桜花




開場30周年記念特別展示「文楽の魅力」 -文楽劇場の収蔵品を中心に-

2014年04月14日 | アート♪




夜の部の開演前に、特別展示を拝見した。


近代の名手ゆかりの貴重な資料や、人形のかしら・衣裳


文楽を描いた錦絵などもあり面白かった♪


ボランティアガイドさんが勧めてくださって


文ちゃんという名であったか?一人遣いの人形の扱い方を教えて頂いた。


帯の後ろ側から手を入れて左手でかしらを動かし、


袖から右手を入れてかしらと手で表情をつくるのであるが、


かしらを頭の上ぐらいに掲げなければいけないそうで、


実際遣ってみるととても難しい。


大阪にとってかけがいのない財産である文楽なのにもかかわらず、補助金削減などの環境下で


文楽の魅力を出来る限り多くの人々に知ってもらい、劇場に足を運んでもらおうと


ガイドの方々が一生懸命されておられるのが心に残った。




国立文楽劇場開場三十周年記念 七世竹本住大夫引退公演 四月公演

2014年04月14日 | 劇♪場♪



大阪へ娘が一緒に行ってくれることとなり、住大夫さんの4月の引退公演を拝見することができた♪



国立文楽劇場が開場三十周年記念で、


開場一周年に住大夫を襲名され文楽発祥の地、大坂での公演は今月が最後となる住大夫さん


様々な御苦労を乗り越えてこられた今の思いはいかばかりであろうか。





桜丸切腹の段


盆がまわると盛大な拍手と「待ってました!」と声がかかる。


そして静かに

「呑み込んで~奥へ行く~」と住大夫さんの語りはじめに


一言も聴きもらすまいという観客の集中度が伝わってくる。


住大夫さんはインタビューなどで


「私は声が悪かったので・・・」とたびたび仰っておられるが、


永年の修業の成果ももちろんのことであろうが、


住大夫さんの声はある時は優しくある時は厳しくそして切なく情感に溢れ、聴く者の魂にじかに響いてくる。


そのお声ももうじき聴くことができなくなる寂しさがつのる。







「子に死ねといふ腹切刀・・・・・・定業と諦めて腹切刀渡す親、

思ひ切っておりや泣かぬ。そなたも泣きやんな、ヤア」


「ア、アイ」 

「泣くない」

「ア、アイ」

「泣きやんない」・・・


三味線は錦糸さん、白太夫は玉也さん


そして八重は文雀さん・桜丸は蓑助さんのお二人


大夫・三味線・人形が一体となった至芸の極み


「泣きやんない」と、でも泣けてきた。


「三つ子の親が住み所、末世にそれと白太夫、佐太の社の旧跡も神の恵みと知られける~」


住大夫さんが床本を掲げ盆が廻ってもいつまでも拍手が鳴りやまなかった。