今、この「シェリー・マン・アット・マンホール」ってアルバムを聴いてます。いいんだな、これが。更に良いアルバムとして@ブラック・ホークってのも有ります。これはVol.5まで有るから集めるの大変!でも、集めます!ほんとグルーヴしてます。
「マン・ホール」ってのは、かつてハリウッドに有った、シェリーのお店。要はラストネームと道端のマンホールをかけた洒落です。
このアルバムを聴いてて思うのは、シェリーが常に檄や指示を飛ばしてるって事。ドラマーがバンマスなんだから当たり前と思うかもですが、割とこれが出来ない人は多いです。イニシアチブの取り方をご存知ない方は割といます。自分がバンマスでない場合はこれによってかなり迷走します。
バンドのタイムの要は当たり前ですが、ドラムとベースです。で、いつも彼等は俯瞰でバンドを見つめ、煽ったりバンドをコントロールしたりします。役割に関係なく、ジャズの掟として自分が熱くなり過ぎてはいけない…ってのが共通認識として有ります(マイルスがこれを強く唱えてます)が、一番冷静なのは彼等リズムセクションだと思います。勿論、皆んな熱いフリはしますが、熱くなり過ぎて演奏が崩壊するのを一番嫌うのもジャズミュージシャンのアルアルです(笑)。
タイムに関しては、NY時代にエド・ルイスというチャーリー・パーカーとも共演したというお爺ちゃんトランペッターとずっと一緒にバンドでやってて、ず〜っと説教されてたのが忘れられません。
「お前はラッシュしている(リズムが突っ込んでいる)」ってのが僕に対しての口癖でした。生活指導(笑)まで受けました。「歩くのが速すぎる」って。「今の(当時90年代)ニューヨーカーは歩く速度が速すぎる。アレではジャズなんて出来ない。お前はアイツらを追い越して家に帰るじゃないか。それじゃスイングしない。」なんて言われました。
つまり、バンドを俯瞰で観てるリズムセクションがパンクチュアルとしたら、必ずそれよりゆったりすべし!ってのが彼の教えでした。「お前は家に帰って、デクスターを聴け!」ってのがエドのお説教の締め言葉。それはいつまでも心に刻まれてます。そのラッシュする悪癖を取り去るのに何年掛かった事やら。
でも、日本に帰って来て全く別の価値観にかなり翻弄されました。全ての音楽が忙(せわ)しなく聴こえるのです。もうだいぶ慣れましたが、一時期はその価値観に流され…というか元々そうなので戻したってのが正しいかな…自分をアジャストし直した事も有ります。日本人はパンクチュアル過ぎて逆にラッシュする傾向にあります。勿論、個人差は有りますが。
でも、いつもそうなると、あのエドの言葉を思い出して反省して来ました。そして、辿り着いたのは「適当」って言葉です。「ちゃんとしよう」としたらエラーを起こすんだったら、いっそテキトーにした方が上手く行くんじゃないかって。少なくとも僕は、それでだいぶ救われましたし、そこそこ上手く行ってると思います。タイトには憧れるけど。
シェリー・マンのバンドはアメリカ国内でもかなりタイトなバンドだと思いますが、酒飲んで気持ち良くなって聴くと、フロントを始めソリストはかなりゆったりと演奏してます。これが古き良きアメリカで、これがジャズの伝統なんだと思います。そして、俯瞰で観ながら、フロントにドラム以外に声で檄を飛ばすシェリーにバンド愛を感じます。そう言えばアート・ブレイキーもそうですよね。
そういう檄を聞くと、冷静を装ってる僕達フロントもついつい心が熱くなっちゃうもんなんです。それが良い意味での「熱い演奏」なんじゃないかな…って思います。
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