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ロシア皇太子斬りつけた「大津事件」、 「西南戦争の心の傷が要因」とする小説発刊

 130年前の1891年(明治24年)、大津を訪れていた国賓のロシア帝国「ニコライ皇太子」を警護中の「津田三蔵巡査」が斬りつけ負傷させた大津事件をテーマにした歴史小説「幻影 大津事件と津田三蔵の手紙」を、随筆家で滋賀文学会会長の岡本光夫さん(滋賀県守山市)が書き下ろし、発刊した。
 サンライズ出版、四六判135ページ。1100円(税込み)



 近年明らかになった巡査が母などにあてた手紙76通を読み解き、小説の形で巡査の人物像と深層心理に迫っている。

 大審院の判決では、巡査には殺意があったとして無期刑を言い渡した。
岡本さんは、巡査が事件当日の供述で皇太子を斬りつけた瞬間を「一時目ガ眩(くら)ミマシテ覚ヘマセン」と不可解な返答しかしていない事実に注目した。巡査は「ニコライが来たから斬りかかったのではなく、何かの幻に斬りかかった」と解釈。なぜ幻に斬りかかったかについては「過去、従軍した西南戦争で受けた心の傷による心的外傷後ストレス障害(PTSD)が要因」とした。

 小説では、巡査の生い立ちや西南戦争で討ち取られた西郷隆盛の「幻」に斬りかかるPTSD発症への道筋をたどる。
岡本さんは「教育も受け、家族思いで勤勉で能力があった津田を凶行に駆り立てた戦争の怖さを伝えられたら」と話す。

サンライズ出版
彦根市鳥居本町655−1

<京都新聞より>

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