冬の琵琶湖畔には、黄金色に染まった高さ約4mの「ヨシ」が一面に広がり、さわさわと風に揺れる。この環境を守ろうと、愛荘町上蚊野の「コクヨ工業滋賀」は2007年、「ReEDENProject(リエデンプロジェクト)」を立ち上げた。


↑写真:中日新聞より
かつては屋根の材料など人々の生活の中で活躍してきた「ヨシ」が、時代とともに需要が減少し、手入れが進まなくなったことでヨシ群落が衰退していた。
ヨシは水鳥や魚の生息地であり、生態系の保全には欠かせない。そんなヨシの保全には人の手入れが欠かせないという。
春に新芽を出し、夏には青々と育ち、冬になると背を伸ばして黄金色に染まる。1年かけて成長したヨシを刈り取ることで、新しい芽の成長を助け、ヨシ原の活性化につながる。
リエデンには「ヨシ(reed)で琵琶湖を楽園(eden)に戻そう(re)」との思いが込められている。プロジェクトでは、ヨシを刈り取り、それを原料にした紙製品を開発、商品を通じて環境意識を広めるサイクルを目指す。
地域の人も巻き込んで「ヨシでびわ湖を守るネットワーク」を設立、同社が事務局を務める。「琵琶湖をきれいにしたい」との思いを持つ企業や学生、地域の住民らが賛同。
毎年ボランティアの力を借りて、12月に東近江市の伊庭(いば)内湖、2月に近江八幡市の西の湖でヨシを刈り取っている。多い年は300人が集まったこともあるという。
コクヨ工業滋賀開発グループの田中沙季さんは滋賀県出身だが、入社前まではヨシの存在を知らなかったという。しかし、毎年ヨシ刈りに参加する中で「ヨシの風景を見ると心が落ち着く。大変だが、毎年の楽しみ」と琵琶湖への愛を深めている。

↑写真:中日新聞より
同社はプロジェクトを発足した2007年、ヨシを活用した紙製品「リエデンシリーズ」の販売も始めた。環境を考えて使ってもらいたいと、ビジネス用や学生向けに主力商品のノートからスタート。しかし、なかなか浸透しなかったという。
「滋賀で愛されるように」と2014年、琵琶湖や滋賀を題材にした「びわこ文具」を開発。ユニークなデザインが好評で、徐々に認知度が広がり、取扱店も拡大した。琵琶湖や湖魚をデザインしたヨシ紙のメッセージカードやふせんなど、老若男女に愛される商品が次々と生み出されている。
新型コロナウイルス禍で、ボランティアを交えたヨシ刈りの活動が1年近くできておらず、今年は社員だけで刈り取ったという。それでも、田中さんは「次世代にヨシの大切さを伝えながら、琵琶湖をきれいな状態で引き継ぎたい」と思いは変わらない。
<中日新聞より>