マヨネーズであえたたくあんを挟んだ「サラダパン」で知られる長浜市木之本町の「つるやパン」。
今や滋賀のソールパンともなった木ノ本つるやのサラダパンは今では湖北だけでなく滋賀県内のスーパーでも数量限定だが売られている。


生みの親の西村智恵子さん(92)に思い入れを聞くと、思わぬ答えに驚いた。「私は、ハムサンドの方が好きや」
「ハムサンド」は社内の通称で、円い食パンで魚肉ハムとマヨネーズを挟み、商品名は「サンドウィッチ」。かじると、魚肉ハムの塩っ気とパンのほんのりとした甘み、マヨネーズの絶妙な酸味が広がる。素朴で、懐かしい味だ。
智恵子さんによると、2つは1960年ごろ、ほぼ同時期に売り始めた。きっかけは「甘くないパンを」との客の声。「生で食べられる」と話題だったサラダ油に着目し、酢と卵黄を合わせれば大掛かりな設備なしで作れるマヨネーズでのレシピを考えた。
サラダ油を使うから、サラダパン。今では有名だが、長らく「固定ファンのため」と言われたほどで、製造は1日30個程度と少なかった。人気に火が付いたのは10数年前、テレビなどで取り上げられてから。それまでの主力は、地元で「まるパン」「まるまる」と親しまれるサンドウィッチだった。
「ほんまはこっちの方がよう売れてた」と智恵子さんは少し寂しそう。孫で専務の西村豊弘さんも「『わしは、まるパンや』と言う人は多い」と明かす。
そんな支持に応えようと、豊弘さんらは奔走してきた。魚肉ハムは食生活の変化でメーカーが減り、2015年末に唯一残った仕入れ先が製造を終了。サンドウィッチは3カ月間、棚から消えた。魚肉ソーセージを使うとまったく売れず、廃止を覚悟した。幸い、愛媛県の業者が新たに引き受けてくれた。「ギリギリの綱渡り」。豊弘さんが苦笑いする。
40年ほど前に自家製から仕入れに変えたマヨネーズも、ほかに使う会社がない。両方のパンに必要で、豊弘さんは「近い味を探して選んだメーカー。生産を打ち切られると困る」と話す。食パンは、焼き上げ技術が向上して四角形が普及した後も「耳の柔らかさを出すには、やっぱり円形」と当初の形を貫く。
一方で「伝統を守るための変化も必要」と豊弘さん。2016年にオープンした2号店「まるい食パン専門店」(長浜市朝日町)が代表例だ。「サンドウィッチの円い食パンがほしい」という客からの長年の要望に応え、看板商品に据えた。わずかに塩味を足した専用レシピで焼く。豊弘さんのいとこの西村洋平店長は「元のレシピだと、パンだけで食べると物足りないから」と解説する。
好みの具材を挟み、作りたてを食べられる「昼サンド」は、フルーツサンドなど「これを入れたらおいしかった」という客の声をメニューに反映。みたらし団子風のタレやコールスローサラダなど、メニュー約10種と6種のトッピングは組み合わせも自由だ。
つるやパン
長浜市木ノ本町木之本1105.
<中日新聞より>